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SLMメモリー5

Scout of Lost Memories
メモリー5
歴史の町 カンナギタウン






 ゼバルと名乗った謎の男に襲撃を受けてから、およそ1週間。
 タクロウ達は、当初の目的地であるカンナギタウンにやってきていた。

「タクロウ、ここまで来たのはいいけどこれからどうすんだ?」

 最初に口を開いたのは、コバルトブルー色の髪の毛をした少年。
 自分より若干背の低いもう1人の少年・タクロウに対して声を掛けた。

「このカンナギタウンには、確かシンオウ時空神話に纏わる遺跡があることで有名な町だよ。だから、多分ユクシーに関する記述とかもあるかもしれない」

「だけどよ、余所者の俺達にすんなりと見せてくれるか?そんな貴重な物」

「ナナカマド博士にお願いして、先に連絡をつけて貰っておいたよ。だから、問題ないよ」

「お前、本当に準備がいいよな」

 タクロウの準備のよさに半ば呆れつつ、2人はカンナギタウンの遺跡にやってきた。
 そこで彼らを待っていたのは…。

「待ってたよ。君が、ナナカマド博士から連絡のあったタクロウ君だね?」

「あ、はい。そうです」

「俺は、このカンナギタウンの遺跡の管理を任されている、トウジって言うんだ」

「あ、それからこっちは僕の友達のカズキ君」

「どうも」

「ああ、君のことも聞いてるよ。じゃあ、遺跡に案内するよ」

 町の中心付近が、周りより凹んだ形となっているカンナギタウン。
 その場所に、彼らは案内された。

 その場所にある、洞窟の入り口の前に…。

「ここが、シンオウ時空神話に纏わる言い伝えが残されている遺跡だよ。君たちは確か、ユクシーの事について知りたいんだったね」

「はい。僕達には、ユクシーの情報がどうしても必要で…」

「なら、もうちょっと遺跡の奥の方に行こうか」

 タクロウの話を聞いて、トウジは2人を更に奥の方へと案内する。

「ユクシー・アグノム・エムリット。この3匹は、シンオウ時空神話の中心となっているディアルガ・パルキアと非常に密接な関わり合いを持っている。だからなのか、それに関する記述などは結構深い場所に残されているんだ」

「へぇ、こりゃ凄いな」

 無造作に周囲を見回すカズキ。
 多分、トウジの言っている事なんて、殆ど理解できて無いと思う(爆)。

「ここだよ。この辺りに、3匹のポケモンに関する記述が残されているんだ」

 案内された場所は、比較的広い部屋だった。
 一面の壁に見たことも無いような文字で埋め尽くされており、2人には全く意味が解らなかった。

「そう。シンオウ時空神話に伝えられる伝説のポケモン、ディアルガとパルキア。彼らは時間と空間という概念をこの世界に誕生させ、彼らが生み出したとされる3体のポケモンが心を生み出したとされているのよ」

「え…?」

 突然、二人の後ろから声が聞こえた。
 いつの間にか、全身真っ黒な服と金色のロングヘアーの神秘的な雰囲気を漂わす女性が立っていた。

「あの、貴女は?」

「私はシロナ。このカンナギタウンの遺跡を管理している者よ」

「この遺跡を…?」

「ナナカマド博士から話は聞いているわ。彼には、ここまでの案内を頼んでおいたのよ。後は、私が詳しい事を伺いましょう」

「それじゃあ、後はお願いしますね」

 後のことをシロナと名乗った女性に任せ、トウジはこの場から立ち去っていった。

「ここでは何だから、少し場所を移しましょう」

「あ、はい」

 シロナに案内されて、2人は今来たのとは別のルートを進み始める。
 途中、簡単な設備が設けられた広い空間に案内された。

「まだまだこの遺跡は解析が済んでいない箇所が沢山あるから、中に拠点を設けて徹夜で調査をしているのよ。ここは、その拠点の一つよ」

「それにしちゃ、随分本格的だな…」

 カズキがその光景を見て、率直な意見を述べた。
 何しろ其処には普通の一般家庭と遜色無い程の設備が備わっていたのだ。

「さて、そろそろ貴方達の話を聞かせて貰えるかしら?どうして、この遺跡を訪れたのか…」

「あ、はい。そうですね」

 シロナに促されて、近くの椅子に座った2人。
 2人は、これまでの経緯を簡単に話し始めた。

「成る程…。昔の記憶が無い上に、不思議な能力を持っている。その事が気がかりで、記憶探しの旅に出た、という所かしら?」

「はい。それに…」

「?」

 タクロウが言葉を詰まらせた為、シロナは不思議そうな表情を見せた。
 自分から話そうとしないため、代わりにカズキが口を開いた。

「実は俺達、旅を始めて間もない頃に、妙な奴にいきなり攻撃された事があるんだ。時期的に、丁度ユクシーの事を調べようと決めた矢先の事だった」

「シンオウ時空神話について調べられたら困ると言う事かしら? だとすると、彼らの残党がまだ…」

「彼ら…?」

「貴方達も知っているでしょう? 数年前、突如としてテンガン山を中心に空に異様な光景が広がっていった事件の事」

「うん、それ知ってる!その事で、確かシンオウ地方全体が大パニックに陥ったんだよね」

「ええ、そうよ。その事件は、当時暗躍していた『ギンガ団』という秘密結社の起こした事だった。貴方達を襲った人物も、あの事件と何か関係があるのかもしれないわね」

「…それは、違うと思います」

「え?」

 シロナの仮説を、口頭で否定したタクロウ。
 彼は、続けて喋り始める。

「あの時襲ってきた人は…。『破壊の遣い』ゼバルと名乗っていました。彼はどちらかというと、ユクシーより僕の記憶の方に関心があった言動をしていました」

「貴方の記憶に…?」

「そうだ。あいつに襲われた理由をはっきりさせたり、タクロウの能力についてはっきりさせる為にも、ユクシーに会う必要があるんだ!」

 カズキが力強く発言する。
 そんな2人の眼差しを見たシロナは、軽く一笑した。
 そして…。

「解ったわ。私の知っている事を話します」

「本当ですか!?」

「ただし、この事は絶対に他言無用。時空神話に登場するポケモンの所在を知られた暁には、悪用しようとする人間が現れないとも限らないから」

「…ああ、解った」

 珍しく真剣な表情で、カズキが受け答えをした。
 反応を見たシロナは、シンオウ地方全体の地図を取り出し、テーブルの上に広げた。

「実はあの事件で、ギンガ団ボスの野望を食い止めるのにその3匹が一役買っていたのよ。直接ギンガ団のボスを斃したのは1人のトレーナーだけど、そのサポートをしたといっても過言ではないわね」

「本当ですか!? あの、時空神話に登場するポケモンが現実に!!?」

「凄ぇぞタクロウ! やっぱり、3匹のポケモンは実在したんだ!これは凄い進展だぜ!!」

「うん!!」

「3匹のポケモンは、このシンオウに存在する3つの湖にそれぞれ生息しているわ。ただし、余程の事が無い限り人前に姿を見せる事はないわ」

「…それでも、僕達は行きますよ。折角見つけた、重要な手掛かりだから」

「覚悟は出来ているようね。貴方達が探しているポケモン、ユクシーはリッシ湖に居るらしいわ。私も実際に見たわけじゃないから、確証は無いのだけれど」

「行ってみようぜ、タクロウ。善は急げだ!」

「…カズキ君、その言葉使うのに驚いたよ」

「狽ィ前の頭の中じゃ、俺はどんだけ馬鹿な扱いになってるんだよ!!?(涙)」

 カズキが途中涙目になったものの、3人は遺跡の外に戻ってきた。
 そして。

 カンナギタウンの、遺跡入り口の前にある広場。
 3人はそこに移動していた。

「リッシ湖は、ここから東に行った先にあるトバリシティを、更に南下した場所にあるわ。ユクシーと出会えることを、祈っているわ」

「色々と有難うございました。お陰さまで、随分と進展がありました」

「それじゃあ、気を付けてね」

「「はい!」」

 二人揃って元気な声で答え、2人はカンナギタウンを東から抜けていく。
 次の目的地も定まり、2人の足取りは自然と速くなっていった。





「…彼を襲った謎の人物。彼らの話が本当だとすると、まさかその正体って…」

 何かに気付いたのか、シロナは町にある古い書物を調べ始める。
 まるで、何か心当たりがあるかの態度で。

「…! まさか、そんな事って…」

 調べ事をしていたシロナの手から、その書物が滑り落ちた。
 何か、途轍もない事を探し当ててしまったかのようだ。

「(そんな事、ある筈が…。だけど、もしそうだとすると…。あの二人の前に現れたゼバルと言う男は、とても私たち人間の手に負えるような次元の存在じゃない…)」







 カンナギタウンをタクロウ達が出発したのと、ほぼ同時刻。
 トバリシティを南に下った先に広がる湖、リッシ湖。
 そのリッシ湖に水面に、1人の女性が立っていた。

 それは、数日前タクロウとゼバルの戦いに割り込んできた、リノアと名乗る女性だった。
 何やら独り言のように呟き、その後水面に掌を当てた。
 その瞬間、湖全体が光に包まれた。

「…これでいいわね。 …さあ、早くここまで来なさい。微かな記憶の手掛かりは、ここにあるのだから…」

 空を見ながら、独り言を呟くリノア。
 まるで、タクロウの到着を待ち侘びているかのような台詞だった。



続く



後書き
えー、本編を見れば解ると思いますが…。このSLMは、基本的にゲームのDPの世界から数年後の世界という設定になっています。
なので、所々でゲーム内の設定などが出てくると思います。

さて、今回はカンナギタウンを舞台にした話ということで、シロナを登場させてみました。
あ、口調やら性格やらは完全に私のオリジナルで作ったのでご了承下さい(ぁ)。
基本的に、原作などに登場するキャラをあんまり使わないのが私なのですが、今回は彼女がいなければここまでスムーズに話は進まなかったですね(苦笑)。

次回は、リッシ湖を舞台に話を展開します。
そこでどんな事が起こるのか、まだ殆ど決まってないんですけど…(オイ)

では、次回をお楽しみに。

No.36 クロム 2009年07月10日 (金) 17時09分


感想してみた

タクロウじゃないけど、確かにカズキ=馬鹿というイメージが私にもあります(蹴殴)

とりあえず、相手は結構やばい奴らのようなので、今後どうなるかに注目です。

No.37 日乃 水葉 2009年07月10日 (金) 23時14分

忘れ去られそうな頃に感想を書いてみました

やはり、タクロウの記憶の鍵を握るのはユクシーのようですね。リッシ湖に向かって足を運ぶタクロウとカズキの二人ですが、前話にも出てきたリノアが待ち構えている模様。
接触は避けられなさそうですね。

No.41 HIRO´´ 2009年09月29日 (火) 15時37分




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