誓いの花 STAGE8
出会いというのは、時に複雑だ。 1つの出会いが、新たな繋がりを生み、別の出会いを作りだすこともある。
最も、出会いのすべてが良い方向になるとは限らない、が。
Flower of an oath〜誓いの花〜 STAGE8
「…なあ、フィニ」
「何です?」
ロゼは、ふとフィニを呼んた。 ちょうどフィニも手が空いていたので、すぐに応じた。
が、自分から呼びかけておいて迷うような素振りをロゼは見せる。
「……ロゼさん?」
「いや、まぁ、独り言だから聞き流してくれてもいい」
やがてそんな前置きをしたかと思うと、フィニから僅かに顔を逸らしつつ切り出した。
「大切な人といたいと思うのに、出身や身分は関係あると思うか?理由は、いると思うか?俺にはそれがわからない。わからないから、気になる。」
独り言、という割には真剣な声音で紡がれたその言葉に気付かないふりをして、フィニは呟く。
「立場も理由も、いらないと思うけどな。恋愛ってのはそれぐらいパワーがあるよ、きっと」
「独り言だと言ったはずだ。……迷う意味なんてないよ、な?」
口ではフィニに悪態をついているが、その反面自分に言い聞かせているような様子もあった。 フィニは思わず笑みをこぼしながら指摘した。
「大きすぎる独り言ですけどね。」
「………そう思いたければ思え。ところで、今暇なんだよな?ちょっと付き合え」
唐突な話題変更だった。 だが、察しはついたようでフィニも相槌をうつ。
「ああ、あの姉弟に負けてられませんか?」
「そういうことだ」
立ち上がると、ロゼはふと森の方向に目を向けた。
同じ時、同じように森を見つめている少女がいた。 雑貨屋の軒先で掃除をしていた黒髪の少女は、ぽつりと呟いていた。
「クロ君……コスモスさんも、もっと構ってくれたっていのに……」
少女、サザンカは泣きそうな顔になっていた。 そんな時…ふと、足元に何かが当たる感じがした。
こつんっ
「…え?」
驚いて足元を見ると、そこにいたのは彼女がよく知っているポケモンだった。
「メイ?どうした……の」
不思議に思って首をかしげようとした時、ヒコザルの首元に何か筒のようなものがついているのが目に入った。 慌ててそれを取ると、その中身を見る。
「『今日の夜、話したいことがあるから、港に来てくれるか?』…?」
「……ねえクロッカス。」
「何っ、姉さん!?」
クロスは急に声をかけられたせいか、狙いをつけていた木とはまったく見当違いの方向に風の固まりがぶつかっていた。 むしろ、狙いのところに当たっていないのはその前からだが。
だから、コスモスもそれには触れずに唐突に言った。
「さっきのメイの『お使い』、面白そうな内容だったわね」
「……………もしかして、見て、た?」
小さな、声だった。 それが余計にコスモスの好奇心に火を付けた。
「もしかして、あんたやっとその気になったの?」
「あー……あの、あれだ。姉さんには関係ないっ!!」
顔を赤らめながらそんなことを言われてももはや無駄なあがきである。 にっこりと微笑んだコスモスは一言。
「あら。弟の恋路が気になるのは姉だからよ?」
「………わかってんなら何も言わんとって下さい。俺も精一杯なんだよ…。」
そんな、ある意味では平和な話題をそれぞれする中、深刻そうな表情を浮かべている男もいた。
「…………冗談、だろう」
彼が聞いたことは、立ち上がることもできないほどの衝撃を与えた。 実際、立つことを忘れその場にへたり込んでいる。
少し前。
彼の自室であるこの場所には、2人の人間が訪れていた。
その時に聞かされたことは信じ難かった。信じたくはない。 だが、信じざるを得ない状況だった。 『彼女』が言ったことには、信憑性はあったのだ。
「それでも俺は………恩を捨てれはしない……」
消えそうな声で呟く彼の手は、自然とある場所に伸びていた。 それを見つめて、ただ一言しか続かなかった。
「ガーベラ………兄ちゃんはどうするべきだ……?」
一体、タフトは何を聞かされたのだろうか……?
それはそれで気になるところなのだが………
葛藤があれば、決意もある。
ここにも昼間、ある決意をした1人の青年がいた。
彼は今、その相手を待つために、港に来ていた。
時刻は午後9時少し前。
「………来てくれたんだな、サザンカ」
いつもよりも、緊張の色が強い表情で、彼は待ち人の名前を呼ぶ。
彼女、サザンカも彼ほどではないが、そんな様子を浮かべていた。
「く、来るよ。だ、だってクロ君のお願いだもの」
「それはありがとうな。」
クロスは呼び出したことに関してのお礼を口にはしたが、その後が続かない。
しばらくの間、波の音だけが聞こえていた。
ざあん………
ぱしゃあん……
ざぁあ……
同じような音がしばらく続いたかと思うと、不意に意を決したようにクロスの口が開く。
「あの、な。サザンカ………俺………」
そこまで言って、言葉に詰まる。
軽く額に手を当てながら、落ち着けと自分に言い聞かす。
「(昼間、言うって決めたんだ。言わないと……・!)」
「クロ、君……・?」
そんなクロスの顔を下から覗き込むようにして(身長的にそうならざるを得ないともいう)、サザンカは彼の名前を呼ぶ。
それでもしばらく何も言えずにいたが、ようやく手を放す。 そして、言う。
「……俺、サザンカが好きなん……だ。」
口にしてすぐに恥ずかしくなったのか、クロスは顔を横に背ける。
サザンカも理解するのに時間がかかっているようだったが、やがてぽつりと呟く。
「……ほ、本当……?」
「あのな、サザンカ。………俺が、こんなこと冗談で言えると思うか!?」
その言葉にクロスが軽くため息をつくと、真っ赤な顔のまま、叫んでいた、
「………思わないけど……けど…」
「えっと。あー、サザンカ。それはともかくだな……お前は、ど、どうなんだよ!?」
居心地が悪くなってきたのか、軽く肩をすぼめつつもクロスは言う。 言われる原因については彼女はよくわかっていたので、慌てながら口走る。
「あ、あたしもっ…す、好きだったよ!!ま、前から!!」
自分と同じく真っ赤になっているのを見て、クロスは笑った。
「ははっ、機会は何度もあったのに今まで言えなかった俺が悪いとかいわねーよな?」
「そ、そんなことっ…!あ、あたしだって…その…!……」
きゅう………
「え、あの、く、クロ君…?」
突然抱きしめられ、慌てふためくサザンカにとても穏やかな声音でクロスは言う。
「あの、さ。今回のことの決着ついて、シヴァスが落ち着いた頃に、一緒に来てほしいんだけど……駄目か?」
「うんっ!も、勿論・・・だよ」
サザンカは、その言葉に明るい笑顔で応えた。 クロスはしばらくそんな彼女の様子を楽しげな様子で見つめていたが、ふと別の方向を睨むようにして、言った。
「さっきからそこに姉さんがいるのはわかってんだよ!」
「あら、お邪魔だったかしら?」
物陰から現れたのは、クロスの姉のコスモスだった。 クロスの言い方から察するに、結構前からいたらしい。
「俺は気づいてたけどな……なんか、もう追求しなくてもここにいる理由は察しがついてたからな、言わなかったんだよ」
「ふーん。ま、もう邪魔はしないから、後は2人で仲良くしてなさい♪」
「ちょ…っ!姉さん!まさかロゼに言う気じゃねーだろーな!?」
立ち去ろうとする姉にクロスは慌てて言うと、悪びれずにコスモスは言った。
「あったりまえじゃない♪こんな楽しいこと、黙ってられないわよ♪」
「止めろ姉さん!」
「こ、コスモスさん!?」
こうして、港町の夜は騒がしくも更けていくのだった…。
■あとがき!■ おーめーでーとー♪(ギアスのロイド風に) …ってことで、クロッカス君ががんばりました。 最初はここでくっつける気はなかったんですが…気が変わった← …………ところで、駄目だ。 他にもここで書くべきことあるはずなのに、忘れた(待て) じ、次回もお楽しみに!(逃
No.46 日乃 水葉 2009年11月09日 (月) 00時05分
RE: 誓いの花 STAGE8
今回はクロッカスとサザンカのターンでしたね。言いふらしたがる、コスモスさんが楽しそうで面白かったです。
一方で、ロゼとタフト……この二人が描く明日は一体どうなるのでしょうか……?
No.47 HIRO´´ 2009年11月10日 (火) 20時53分
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