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誓いの花 STAGE10

不意打ち、とはこの間のようなことなのだろうか。



「まさか、あいつが……。タフトさん、あれから部屋にこもりっきりだけど…大丈夫かなぁ?」



もう1週間近く前になるだろうか。
タフトの妹であるガーベラによって結ばれた不思議な絆。
それもあってか、ハルはタフトの部屋を訪ねていた。最も、一緒にオレガノもいたのだが。

その時、オレガノの口から語られたある事実は、2人に、特にタフトには大きすぎる衝撃を与えた。
ハルは落ち込むタフトにどう声をかけていいかわからず、その時はそのまま部屋を後にした。

後にも、心配になって何度かタフトの部屋を訪れたりもしたのだが、彼が出てくる様子はなかったのだった。


「でも……、僕も取り戻せそうなんだよね…」


タフトのことも確かに気になってはいたが、それ以上に彼には気になることがあった。
失ったと思っていた記憶が戻りかけているような兆しを僅かにだが感じ取っていたのだ。


「そう、だよ。思い出せ、思い出せるんだ…!」


ぎゅっ…


焦り、だろう。
思わず握りしめた掌が、痛い。



「………ハル」



だから、気付かなかった。
自分を呼ぶ声も、これから何があるのかすら…。







Flower of an oath〜誓いの花〜 STAGE10






「それじゃあ、こっちがロゼさん、コスモスさん。それと…」


フィニは、美しく整備されたそれらを3人に手渡す。

3本の剣と、手袋のようなものの先端に細いものがいくつも下がっている不思議な形状をした武器だった。



「ふーん。かなりのものだな…」


預けた自らの剣を眺めていたロゼは、思わずそんな声を漏らしていた。


「当然だと思うけどな、こいつの整備の腕に惚れこんで遠方から仕事頼みに来る人達もいるぐらいだぜ?」


「確かに、この仕上がりだとリピーターがいてもおかしくないわね」


フィニの仕事ぶりをよく知っているクロスが賞賛を口にすれば、じっと自らの剣を見ていたコスモスも同じような感想を呟く。

三者三様、だがほぼ同じ評価をする。

しかし、フィニは慌てて言った。


「ぼ、僕なんてまだまだ他の整備士の方々よりも技術は劣りますし…!」


「アホか、お前。」


が、それをすぐに遮ったのはロゼだった。



「俺達はお前を信頼してるし、劣ってるとも思ってない。……そうだろ?」



最後の言葉は、フィニというよりも2人に向けられた言葉だった。
クロスもコスモスも、微かに笑みを見せていた。



「自信を持てよ、フィニ。少しの間でも、シヴァス騎士隊に所属していたのは伊達じゃないだろう?」



ロゼにしては珍しく、率直な褒め言葉だった。
フィニは一瞬意外そうな表情をしていたが、すぐに笑うとこう言った。



「僕の整備を、無駄になんかしないでよね!」



「ふっ…、誰に向かって言ってると思ってるんだ?」

「同感ね」

「そうそう。特に俺は、『こいつ』の整備で大分苦労かけてるしな」



強気でありながらも、温かな雰囲気がそこにはあった。
シヴァス王国が結びつけた絆、とでもいうべきか。


「でも、そろそろ…」


数言話した後、ロゼが出発しようと言おうとした。
しかし、ある人物を見つけて止める。


「……クロス、彼女だ」





「クロ君っ!!!!」



「サザンカ、どうして…」


駆け寄ってきたサザンカを片手で受け止めながら、クロスはそう呟いていた。
彼女には、今朝出発するとは告げていないはずだった。

サザンカはというと、息を切らしながらも言った。


「だって…、クロ君は、いつも何も言ってくれないから…そんな雰囲気の気がして…だから」


「それは…(余計な心配かけたくないから、言えないだけだ)」


サザンカは少し困っているクロスを見ながら、突然呼びかける。


「………クロ君!」


「ん?………っ!!」



かと思うと、柔らかい感触が、不意にクロスの唇に触れていた。

その行為が何なのかとクロスが自覚する前に楽しげな笑みを浮かべるのが2人いた。


「あらあら」

「わあー、大胆だねえ」


「……あんたら(汗)」


コスモスと、フィニである。
ロゼはというとそんな2人に呆れつつ、ちらりとクロスを見やる。



「サザっ」


クロスは顔を赤らめながら、突然の行動の真意をサザンカに問おうとしたが彼女の笑顔に遮られた。



「必ず勝てる、おまじない。………なんて、ね」



そこで彼女も赤くなっていることを視認し、気付く。


「そっか…心配してくれてるんだよな?」

「……うん」


クロスは優しく彼女の髪に触れたかと思うと、はっきりと迷いのない声で言った。


「帰ってきたら、俺からも、な。絶対、約束は守るから」


「絶対、だよ?」


その言葉は、サザンカの不安を少しでも和らげられたようだった。
ふわり微笑むと自分からクロスから離れる。



「………いってらっしゃい」


「ああ。行ってくる」



その様子を何も言わずに眺めていたロゼだったが、キルリアを呼び出す。

そして、言った。


「チェスカ、テレポート。エリルに頼む」


こくん、とキルリアが頷いたかと思うと、主人であるロゼ、そしてクロスとコスモスを光が包み、消えていく。



やがて完全に3人の姿が見えなくなった時、サザンカが呟いていた。


「そうだよ。クロ君達なら大丈夫…なんだから」


やるべきこともなくなり、帰ろうとしていたフィニの耳にその言葉が入ると、そっと告げる。


「クロスさんに心配かけたくなくて、泣かなかったんだったら、今なら泣いてもいいんじゃないかな?」


「デルフィニさん…?けど…」


まだ何か言いたげなサザンカを遮り、フィニは続ける。


「大丈夫だよ、彼には言わないから。見なかったことにしておくから」


「ううん。大丈夫だからありがとう。戻りましょう?」


不安を隠し、サザンカは笑っていた。
だが、この不安が本当に的中することになるとは、まだ彼らは知らない。



そう。
動き出した運命は止まらない。

そして、交錯する想いは、すべては1人の男に集まる。

リアトリス・クルード、その男に。


恐れずに、立ち上がれ。どんなに辛くても、動くべき時なのだから…。





■後書き■
絶対15話も超えるよな……(汗)
まあ、作者の進行についてはともかく2ケタに話数が突入。
決戦に向かって着実に進行していく物語をお楽しみに。

No.51 日乃 水葉 2009年11月21日 (土) 17時45分


RE: 誓いの花 STAGE10

引きこもるタフトと過去の記憶を遡るハル。オレガノからもたらされた事実とは一体……?
何より良かったのは、クロスとサザンカのやり取りですね。見てて新婚夫婦かと思ってしまいました。……それとも、戦地へ赴く兵士?(ェ)

そして、いよいよ次回から激しい展開になるのでしょうか?注目ですね。

No.52 HIRO´´ 2009年11月22日 (日) 14時46分




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