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誓いの花 STAGE11

今でも、迷いは少なからずある。

それでも…私は…僕は、決めたから。


彼を止めると!





Flower of an oath〜誓いの花〜 STAGE11





10年と少し前のこと。
レイア地方唯一の雪原地帯にある町、フィーロ。

そこには4人の少年少女、そして彼らが慕っていた青年がいた。
………アルメリア。




「スターチス、遅い…」


「まあまあ、リジア。あいつは遅れても来るからいいじゃないの」


不満げな様子のおとなしそうな少女と、彼女をなだめる少女。
どうやら2人は人を待っているようだった。


しばらくすると、2人の少年が姿を見せた。



「ごめん、遅れて」



「というかだな…リジア、オレガノ………僕に探させに行くなら自分が行こうとは思わなかったのか?」


素直に謝る少年と呆れている少年。
どちらがスターチスかは明確だろう。



「「リックが最初に探しに行くって言い出したもの」」


「はいはい。ところで、あまりスターチスを責めないでやってくれないか?」


ハモる女子2人から僅かに顔を逸らしながら、彼は友人を擁護する。


「ありがとう、リック。えっと、実はポケモン助けしてたんだ。…ね、セラヴィー?」

「ちぃ♪」


スターチスがそばを飛んでいたチルットに呼び掛けるのを見て、オレガノが言った。


「相変わらず、かわいいわね。」

「それはそうと…誰を助けたの?」

「ああ、そういえば聞いてなかったな」


「クチートと色違いのポッチャマだよ。怪我してて、とりあえず手当てしようと近付いたんだけど…」


何故か左手をポケットに隠したまま話すスターチス。
それが気になったのだが…



ぱしっ



不意に誰かに左腕を掴まれ、引っ張り出される。


「そういう時には不用意に近付かないの。気が立っていて攻撃してくること、多いんだから」


「そこまで言うなら手を離して下さい、アルメリアさん。………痛いんで」


少し赤くなっている包帯をスターチスが示すと、アルメリアと呼ばれた人物はすぐに力を緩める。


「ま、ポケモンでも人でも助けるのが悪いとは言わないけどさ…。」


苦笑しながらアルメリアが言えば、3人は口を揃えて言った。


「「「…スターチスらしい…」」」


「Σえ、そこは揃って言われるとこ!?」


困惑するスターチスと、笑う3人。
それを眺めていたアルメリアは言った。


「ははは、相変わらず仲がいいね。スターチス、リアトリス、オレガノ、リジア」



彼らは、とにかく一緒にいることが多かった。
アルメリアは少し彼らより年上だからか、忙しそうにしていることも多々あった。
それでも、しょっちゅう彼らの様子を見に来ていた。

何をするでもなく、集まるのが、日常だった。

最も………


ふとした喧嘩が発端により、日常は壊れるのだが。




「何だろう……、最近、リックは何かが違う」


スターチスは僅かな違和感を感じつつも、その日もいつものように4人でいた。

珍しく、スターチスとリアトリスが口論となり、周囲が困惑していたのも彼らの記憶には深い。

そして、今も2人は互いに謝れていなかった。



「スターチス!大変!」


「オレガノ?」


リアトリスとの件を引きずっていたスターチスは、オレガノが慌てた様子で駆け寄ってきたのにも反応が一瞬遅れた。
が、彼女はそんなことはどうでもいいといったようにまくし立てる。




「リジアが…っ!!」





スターチスがオレガノに連れられてその場所へ来た時、誰かがそこへ走っていくのが見えた。




「!?……アルメリアさん!?」


すぐに、彼はその人物がアルメリアであると認識した。
思わず止めようとしたが、それはかなわなかった。


「駄目っ、完全に崩れちゃう…!」


直後、目の前の煉瓦の山が崩れていくのが見えた…。



「リジア、無事かい?」


「はい…あの…でも…」


アルメリアの咄嗟の判断が間に合ったのだろうか、崩れた煉瓦のほとんど真下にいたリジアには傷1つない。
だが……



「大丈夫、気にしないで。助けるから」



リジアを守る体勢を取ったためか、あちこちに傷ができていた。
それは、医療関係の人間でなくてもはっきりとわかるほどまずい状態でもあった。


「…………あった。」

「…え?」


彼は、突然リジアを近くに見えていた小さな穴に向かって投げた。
リジアは何があったのかわからず、反論しようとしたが、それは敵わなかった。

そして、彼女が煉瓦の隙間から飛び出たのを見とどけた後、アルメリアの意識は途絶えた。

……………これが、最期だった。





「私のせいで……アルメリアさん……が…」


助けられたリジアも、その現場にいたスターチスとオレガノ、そして後からそのことを知ったリアトリス。
彼らの雰囲気はとにかく重かった。
アルメリアという青年がそんな空気を望んでいないことはわかっていたけど。


だからこそ、スターチスはリアトリスに謝罪する余裕も何もなかった。



そんな状況でしばらくの時が流れ、彼は違和感の正体を知ることになる。


「大丈夫か?不安なら、近くに僕がいてあげるよ」

「……リック」


今までも同じように、4人は一緒にいることが多かった。
だが、必要以上にリアトリスがリジアの近くにいることが多くもなった。



「………あ………(そうだ、確かリックはリジアのことが…)」


スターチスは知っていた。
幼馴染の少年がリジアを好きなことや、リジアが密かにアルメリアを思慕していたことも。

だが、すっかりとそのことを忘れていた。
そして思いだした途端、気付いてしまった。


リアトリスはアルメリアの死を悲しんでもいたが、同時にその分までリジアの心に入ろうと考えていたのだ。



「なんでっ、こんな一方通行の連鎖がっ…」



そして、彼自身も、恋までとはいかなかったとしても、オレガノにリジアよりも高い好意を持っていた。
彼女を見ていてなんとなく思った程度だったが、どうもリアトリスのことが好きらしい。

そのような状況でも、今まで関係が保たれていたのは、結局アルメリアのおかげだった。


「僕はただ、4人でいれるだけでよかったのに…」


戻せないのかもしれない。
そう思い始めたスターチスは、数日後、フィーロを去った。







通路の壁に背を預け、記憶を反芻していたスターチスは、ふと呟いていた。



「……今思えば、最初のうちは峰を逃げの口実にしていたのか……?」



だが、それも最初のうちだけだ。

今では鋼峰であることは誇りに思ってるし、やりがいもあると知っている。
しかし、それでも、心のどこかで割り切れずにいたのかもしれない。



「キヨミさんの好意を無駄にするわけにはいかない…か。だったら、やるしかない……!」



そして今は、峰の仕事を置いてまで、この世界、そしてレイア地方に戻ってきている。
自分の私情で役目を中断してきたことに罪悪感があったのも事実だった。




そんな時、彼は姿を見せた。




「スターチス」


「ある意味……ちょうどいいタイミングかな、これは」


その呼びかけには答えず、ぼそりと小さな声でスターチスは呟いていた。
リアトリスにはそれは聞こえていなかったらしく、口を開いていた。



「計画を、最終段階に移す。だからスターチス、君には…」


「…………リック」


不意に、彼の言葉を遮るように、スターチスがほんの少し怒気を含んだ声音で名前を呼んだ。

そして、言った。


「わt…僕は、君に2つ嘘をついた。その1つは……ここに来た理由。」


「どういう、ことだ?」


驚きの表情を浮かべたリアトリスが、珍しいと思いながら、スターチスは平静を装って言いきった。


「僕は、君を止めたい。できることなら説得したいところだけど、そういうのが通用しないのはよく知ってる。だから!そろそろ動かせてもらうよ!」


言うや否や、スターチスは1つのボールを窓の外に向かって放り投げる。
そして同時に、窓枠に片足をかけていた。


意識は窓の外に集中させたまま、スターチスはリアトリスをちらりと見た。
きっとこの時、スターチスの表情はとても悲しげで泣きそうな感じだったろう。

突然の事態にリアトリスが少し動揺しているのを気にしないフリをしながらも、スターチスは窓枠を超えた。

直後、彼を乗せたチルタリスが飛翔していく。


しばし、呆然とした様子でリアトリスが立ちつくしていたが、気を取り直すと、彼は言った。



「リジア。スターチスがいてもいなくても、僕達のすべきことは変わらないだろう?」


「………アルメリアさんの理想を、形にする…の…」


恐らくは、リアトリスの後ろにでもいたのだろう、リジアが言うのを聞いて一瞬だけ彼は笑みを見せた。


「そう。だから……オレガノ、君ももう少し付き合ってくれないか?」


「え、ええ…」


同じく、近くにいたであろうオレガノは、やや困惑しながらも彼の誘いに応える。
だが彼女は…………


「(スターチスみたいに言えるなら、私は……もっと早くに止めれてるのに…)」


内心、そんな想いを抱いていた。








周囲が騒がしい。
そう気付いたのは、偶然だった。

彼が、ようやく立ち直りかけていたからだった。


「………何か、あったのか?」


考えるのもいい加減疲れていたので、中断していたタフトだからこそ気付いたともいう。
咄嗟に、注意深く周囲の話声を捕らえようと耳を澄ませた。

すると、聞こえてきたのは意外な内容だった。



『なんか、スターチスが裏切ったらしいぞ』


『最初に会った時はそんな大胆な奴には見えなかったのに…』


『でも、まだ敷地内にはいるって話だぜ?』


『あのチルタリスが無駄に機動力高くて捕まえられないとか俺は聞いたけど』




「何を、やったんだあの人は……」


そこまでの話を拾うと、タフトは思わず苦笑めいた様子で呟いていた。
だが、数秒後に、裏切りとは違うのではないかという確信めいたものがあった。



「(彼はあいつと幼馴染だと言っていた…。だとしたら、止めようとしてるんじゃないか?)」



そして、もう1つタフトの頭によぎったことがあった。
気付けばそれが口に出ていた。


「考えていてもどうにもならないなら……直接、問い詰めればいい、のか?」


そして、もう1つ気付いたことがあった。


「今なら、スターチスさんの騒ぎに他のことはかき消されるんじゃ…、あ。」


その瞬間、タフトの表情に明るさが戻った。




「ふっ…、はは、どうせやるなら、形振りなんて構うまでもないか…!」




数十分後。

タフトの部屋には、いくつか散らばったままのアクセサリー類を除けば、何もなかった。




彼らは、不安を抱えつつも、動き出した。

そしてもうすぐ、そこに来るべき者ら…。
騎士たる人は、何を思う?





■後書き■
ささやかで、おだやかな時間。かつての4人にはそれがあった。
アルメリアがいたから、微妙な関係でも保っていれた。
そんな慕われていた彼の理想とは何だったのか?これは、後ほどもう少し詳しく。
僅かにずれた歯車を、修正できないままに今まできてしまった。
でも、スターチスも完全に嫌いになっているわけではないんです。むしろ、今でもリアトリスのことは好きです。
たとえ昔のようにはなれなくても、止まってほしいというのが彼の本音といったところ。
あ、それと「私」と言いだしたのは峰に入ってしばらくしてからです、今まで言わなかったけど(何)

そして、スターチス達の過去と現在。
その裏で、タフトも新たな行動を開始です。
でもタフトはまだ完全に復活はしてません。不安定な心情です。

複雑すぎる状況を打破するのは、一体誰からだろう?
そういうところも今後見ていただければ。
では、あまり長く語って余計なことを言う前に終わらせていただきます。

No.53 日乃 水葉 2009年11月25日 (水) 18時01分


RE: 誓いの花 STAGE11

過去にあったスターチス達のお話でしたね。今までの原因というのは、アルメリアの死がキッカケだったということなのでしょうか。
そして、動きを見せるスターチス。さらにそれに乗じるタフト。
展開は、大きく動き出しました。騎士達の未来はどうなるのか……?

No.54 HIRO´´ 2009年11月25日 (水) 18時29分




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