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誓いの花 STAGE13

『シヴァス王国』


レイア地方に現存する、唯一の王政都市である。
王家の血筋の者は、皆穏やかで真面目な気質があったので、都市内のみならず地方全体でも支持する者は多い。

2年前の事件で生き残ったのは当時の国王と妃の娘・スズランだけ。
そのスズランは現在は行方不明。事件の首謀者グループに誘拐されたとも言われている。

が、王家の忘れ形見がもう1人いるかもしれないのだ。

第一皇子・ハルジオン。
幼い頃に行方不明になったといい、現在でも生死ははっきりとしていない。
だが、今でも彼を想う者は多く、相当な影響力は続いていた…。








Flower of an oath〜誓いの花〜 STAGE13







「お兄様!」


「スズラン……どうか、した?」



或る日の王宮。
兄妹はその日もいつものように一緒に過ごしていた。

そんな時、ふとスズランが言ったことがあった。



「お兄様は、どこにも、行かないよね?」



理由はわからないが、不安になったのだろうか。
そんな妹を落ち着かせるように微笑みながら、兄は言った。


「大丈夫だよ。どこにも行かない、側で守るから」


「本当?」


「本当だって、約束するよ」



まだ2人は子供で、不確かな約束だった。

それでも、大切な約束で……。




それから何年が経ったのだろうか、幼き姫君は成長してここにいる。
だが、スズランがいるのは居心地のいい場所ではなかった。



「嫌な、感じ……あの時と同じ……」


スズランは、胸騒ぎを覚えていた。
ここに来てから、不安は数えきれないほど増えたが、それとは違う気がしていた。



「大丈夫、だよね…?」



スズラン自身、今でも、兄は生きていると思っているし、思いたい。

しかし、兄が行方不明になったという報せを聞いた時と同じような何かを今、確かに感じている。
不安にならない方が、おかしかった。


「(それに、これだって……あの時お兄様がくれたんだもの…!)」


スズランがいつも身につけている蒼い石。
それは約束の日に兄から手渡された、大切なものだった。

支えであり、約束の証。

握りしめると、兄の優しさが伝わってくるようだった。
それ故に、自然と涙が零れていく。



待ち人近し、されど、待ち人来たらず…。







「くっ、流石に、この数をセラヴィーだけで相手にするのは、少し厳しいか…」


スターチスは、旋回しながら、タイミングを図っていた。
大勢、といっても峰の仕事の時を比べたら彼にとっては少ないとも思える。
だがやはり、ポケモントレーナーだけを相手にするのと武器を持った人間を相手にするのでは勝手が違い、僅かに焦っていた。


「こういう武器相手だと、どうすれば…、……!セラヴィーっ左!」


空中にいることで、大半の武器の射程外にはいたが、やはり弓矢だけはどうにもならない。
たった今も、回避するため飛ぶ方向を微調整しつつ飛んでいた。



「だが、恐らく今、ここで暴れているのは……私だけじゃない。例えば……」



周囲の状況を知ることの方が優先だと思い、遠くの方の音はそれほど注意深く拾っていない。
だが、なんとなくスターチスにはタフトが何かしているような気がしていた。
理由はよくわからないが。



「……!あれは」



ふと視線を下げた瞬間。
見つけた存在を見て、回避中心だったスターチスが一転、様子を変えた。





「おーおー、大量のお出迎えだぜ?」



手袋型装備を左手に装着しつつ、クロスが軽く言った。
警戒こそしているものの、余裕は十分だった。

かと思うと、一気に飛びだそうとコスモスが剣を抜いていた。

ロゼも弓矢を構えようとして、気付いた。



「2人とも、下がれ!!」



何かが近づき、攻撃を放とうとしていることに。



「ロゼ?」

「何なの…!」


不思議に思いつつ、あるいは少し不満を口にしながら2人が数歩下がった次の瞬間、『それ』は到達した。




どおおおおおおおおおおおん!!!




それは、周囲を巻き込む大規模なエネルギー。
『破壊光線』と一般的に呼ばれる技だった。


だがロゼ達にはかすり傷もついていない。
咄嗟に下がったのもあるが、それ以上に……



「なんとか、君達には当てずに済んだか…」



攻撃主のコントロールもあったのだろう。


チルタリスの首に片手を回し、もう片方の手にはミノマダムを抱えている、スターチス。
その顔を見てすぐに気がついたクロスが真っ先に口を開く。



「スターチスさん!?どうして……!」


「君達と目的は同じだと思うんだが、クロッカス君」



見知らぬ顔に困惑するロゼは置いておいて、コスモスはその言葉に食ってかかる。


「あんた、確かリアトリスの知り合いよね?目的が同じってどういうことか説明してくれないと私は信用しないわよ!}


「………ああ、貴女もあの時いたか」


その声には覚えがあったので、スターチスは軽く納得。
と同時に、ふとロゼが口を開く。


「あんた、チルタリス制御しながらそこのミノマダムで破壊光線撃ったんだよな?」


「あ、ああ。それが…?」


スターチスには1人だけ見覚えがなかったが、ハルの話を踏まえれば、彼がロゼだと思い、答えるのだが、その問いが不思議だった。
ハルやクロスの言動で考えれば、ここまで来て冷静な方がおかしいのではないのか?



「いや、そんな真似、そう簡単にできるもんじゃないだろう?破壊光線は、反動も大きいからな」




「………彼の周りには、君達のような鋭い人間が多いのか……?」


ぼそりと呟いたかと思うと、スターチスは抱えていたミノマダム(鋼タイプの専門だと聞いていたクロスは「鋼ミノかな」などと思っていた)を戻すと同時に、言った。



「私はスターチス。幼馴染を、止めたくて来たっ」



目には微かな迷いがあったものの、口調はもう迷っていなかった。
彼なりに、覚悟は決まったようだ。

ロゼはしばらく眺めていたかと思うと、手を出した。


「スターチスさん。貴方は、ここのことに詳しいか?できれば、道案内してほしいんだが」



「大体なら把握している!だから……」


そこまで言って、空いた手を差し出すと、ロゼは手を重ねる。
ロゼにしては珍しい、即決だった。


「待てよっ、俺も!」


慌てて、クロスもシン(ムクホーク♂)を呼び出し、その背に飛び乗る。

だが、コスモスはその場にそのまま立っていた。


「姉さん?姉さんも……」


「あんたたちだけで行きなさい。私はここで足止めしてあげるから」


毅然とした態度で、コスモスが言う。
だが、当然弟のクロスが反論する。


「で、でも!そんな、1人で……いくら姉さんでも!」


「行けって言ってんでしょ、馬鹿弟!あんたは、ロゼを助けたいんでしょ!」


強く言い切ったコスモスは、そのまま集団の中心に向かって駆け出していく。
途中、放り投げたモンスターボールからはモルフォンが現れ、彼女の死角を守る。

このようなモルフォンとのコンビネーションは、コスモスの騎士団時代からの得意技であった。


「(姉さん……!)……行くぜ、ロゼ。スターチスさん!姉さんの気遣い、無駄にしたくねーんでな!」


「あ、ああ」


一瞬だけ戸惑ったロゼだったが、すぐに頷く。
それを見てスターチスも言う。


「………ともかく、行くぞ。リック……リアトリスに、言いたいことがあるんだろう?」


「……ああ。山ほどな」


「ロゼに同じく」


その答えに一瞬だけ笑うと、スターチスはちらり、ムクホークを見て言った。


「この間の、シンだったか?セラヴィーについてこれるか?」


「ピュゥイーーーー!」


やや不機嫌そうな鳴き声でムクホークが鳴くと、クロスが苦笑した。


「……普段おとなしいくせに、負けず嫌いなんだから……。えっとあれだ、行けますよ!」


「それは、悪かった…。っと、行くんだったな」


気を取り直したスターチスが、自らのチルタリス、セラヴィーを軽くつつくと、ゆっくりと上昇を始める。
それを追うようにして、ムクホークもまた、飛び上がる。

その時、微かにスターチスは、嫌な予感を感じた。
ふと思い浮かべたのは、このところ顔を合わせていない青年だった。



そして、その青年はというと……









「ちょっ、ハル君!?」



「…………」



苦しげに、だが迷いなく顔見知りの青年に切っ先を向けていた。

その青年、ライラックはそれが不自然だと思った。



「ちっ…!あ、ぶね……!」



とりあえず、避けるには間に合わなかったので、ライラックは身に着けていた剣で受け止める。
だが、元々の斬撃の威力の差なのか、受け切れずに仰け反る。



「………っ…あ、れ?」


なんとか倒れまいと正面に向きなおした時に、彼は気付いた。

違和感があったのは、雰囲気だった。
それだけではない、目の色。



「あ、か……?(水色、だったよな確か……)」





「………ラ、…イ………僕………の…に…れて……」



僅かに見慣れた水色に戻ったかと思うと、途切れ途切れでハルは言った。

だが、そこまでが限界だったらしく、再びライに刃を向ける。

一撃前よりも力が強かったらしく、彼は危うく壁にぶつけられるところだった。
なんとか壁に手をついて踏ん張りながら、ライは冷や汗を流し、呟く。



「まさか、何かに操られて…る?それも、多分内側から働きかけるような何かで……っ……けどっ、完全にってわけでもないよな、俺のことはわかってるし……」



何にせよ、彼にとっては事態がわかったところで、良い状況とは言えないのだが。








■後書き■
シヴァス王家の兄妹の小さくて大きな約束。
その想いは、薄れることなくスズランの胸にあった。
一方ではスターチスが暴れてます。何気にタフトが動いてそうって気付いてます。
ロゼ達とも合流した彼ですが、その一方で1人陽動を引き受けたコスモス。
大丈夫だと知りつつも心配するクロスは弟だからです。
なんだかんだで信頼しあってる姉弟だったりもして。

さり気に再登場のライラックと、まさかのハル。
大丈夫です、想定内です……とだけ言っておきましょうか。
クロスが前回感じていた嫌な予感はこのことだった、とも。










No.56 日乃 水葉 2009年11月28日 (土) 23時23分


RE: 誓いの花 STAGE13

スターチスと合流のロゼたち。リアトリスに到達するまで、もう少しでしょうか。
妹と約束したハルは、ただならぬ状況に苛まれている様子。
さてさて、この状況を打破するのは一体……?

No.58 HIRO´´ 2009年12月02日 (水) 12時14分




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