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誓いの花 STAGE15

「あーもう!うっとうしい!!」



すぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!



小回りを利かせつつ、かつスピーディに、まるで踊るようにしてクロスの手が動く。
同時に、無数の糸のような刃が周囲を舞う。

攻防一体、そして距離をも問わない、そんな武器。
タフトはこれと同じようなものを見たことがあった。



「(そうだ………確か、他の地方に行っていた時に、見たんだ)」



タフトは、各地を旅していた経歴がある。
特にこれといった目的はなかったのだが、世界を見て回りたいと思ったのがきっかけだったのは確か。
その途中に立ち寄った、レイア地方に近しい別地方で、似たようなものを見たことはあった。

だが、使いこなすことはできなかった。
微妙な力加減が難しい、そう解釈している。


「……それを扱えるなら、他の武器でも容易に扱えそうだな」


タフトの正直な、呟きだった。
聞こえていたクロスはぼそりと言った。



「……………えーと、弓矢だけは無理なんだけど。後、飛び道具は苦手…」


「ふーん。!?」



雑談混じりに暴れていた2人だったが、不意にタフトが新たな気配に気付いた。
集団の隙間を縫って、数歩前に踏み出したところで、表情が凍る。




「こんなところで、何をやっているんだ?………いや、聞くまでもないか。故郷のための、復讐か?」



「黙れ!」


鋭い声で、タフトが叫ぶ。

微妙な変化に気付いたクロスだったが、近づけなかった。
阻む者が多すぎたのだ。


「………っ!(雰囲気がさっきまでと違う!?)」


そんなクロスの思考を遮るようにタフトの前の………研究者風の男が、口を開く。



「信用していたリアトリスが実際は故郷を焼き払った張本人なんて、気の毒だったなあ!」



「黙れっ、貴様!!」


激情を抑えることもせず、再びタフトが叫ぶ。
が、それすらも嘲笑うかのように男は言った。



「ああ、そういえばそのことでお前は炎が苦手だったんだったな」



言うと同時に、いくつかのモンスターボールを取り出し投げる。
そこから現れたのは、バクーダ、ギャロップ、ブーバー、マグマッグ………といった、炎ポケモンの軍勢だった。



かしゃんっ!!



その瞬間、タフトが握っていた剣を落とす。
それどころか、怯えきった様子で戦意も喪失してしまっている。



「炎…ポケ、モ、ン………来る、な……」




「タフトさんっ!!!!(まずい、あれじゃあ!)」



慌ててクロスはタフトのところへ行こうとしたのだが、すでに4匹は炎を放出していた。
技は判別できなかったのだが、間に合わない。



「…………あ、れ?」



だが、クロスよりも先に行動を起こしたものがいた。


1匹のポニータがタフトの前に、立っていた。



全ての炎を受け切ったが、外傷などは見当たらない。
それが特性のもらい火の効果だと、すぐにクロスは思い当たった。


しかし、誰のポケモンなのだろうか?


そう思っていると、タフトが震える声のまま呟いていた。



「ポニー…タ………おま、え……俺を……?」



「くうぅ……ん!」


その通り、といった様子で力強く鳴くと、同調するかのように、ノクタスとジュぺッタが飛び出してくる。

いつの間にか、タフトの手持ちが全てその場に姿を見せていた。
元から出ていたクロバットを含め、司令塔を守るようにしていた。



「お前ら……どうして……?」



一番驚いていたのは、タフト本人だった。
まさか勝手に出てくるとは思っていなかったのだろう。



「優秀な相棒達がいるんなら、俺が手を出すまでもない……かな?」



その様子を、クロスはどこか楽しげに見ていた…。









正面には、ハルがいる。
俺は、取り戻す!!必ず!!



「さてと、その前に………トレースの効果は、知ってますよね?」



くるくるとモンスターボールを指先で回しながら、不意にロゼが問うた。
何故トレースなのだろうか、と思いつつライは呟く。



「ほとんどの特性を写せる……でも、それが……?」



「そう。だから………こうする。………スターチスさん。さっき説明した通り、出てきたら攻撃してください。」


「ああ。わかった。」



言うや否や、スターチスは1つのボールを空中に放り投げる。


ロゼは、回転を止めて手元でボールを開く。

ゆっくりと回転しながら現れたそのポケモンはキルリアといった。





「さあ、チェスカ。お前の力、見せてやりな。」




くるくると回りながら、徐々にその身の性質を変化させていくキルリア♀。

不思議な光を取り込みながら、踊るようにしてハルに近づく。



「行け。チェスカ!」



途端、小さな白いポケモンは姿を消した。


その刹那。
ライは、金髪に映る目が赤か深い青に変わったのに気がついた。



「あ、れ?」



疑問を含んだライの声に、ロゼはくすりと笑った。



「トレースは相手の性質の一部を写し取る。だったら、固有の性質全てを写し取ることも可能だろう?そして………!」



「ゲンガーの内側に入り込む性質によって、コントロールを逆に支配した…!デュオン!」



ロゼの言葉を引き継ぎながら、スターチスは自らのポケモンの名を呼ぶ。

姿を現したそのポケモン………ドータクンは、黒い影からハルを守るように浮かび上がる。


瞬間、影は再び入り込もうとせんと、ハルに向かって真っすぐに衝撃波を放つ。

だが、その攻撃を遮るようにドータクンが立ちはだかり、勢いを反射する。



「しっぺがえし。」



ぽつりとスターチスがその攻撃を口にする。

この間、1分にも満たないだろうが、ライには何故か長く感じられた。



「(これが………スターチスさんの本当の実力!?……すごいっ…!)……!スターチスさん!来ます!」



影………ゲンガーは、しっぺがえしというゴーストタイプにとっては大ダメージを与える悪タイプの技を貰っても、まだ動けるようであった。

ライが叫んだ直後、大の字を形成した炎の塊が、ドータクンに向かっていた。



「デュオン!」



だが、届くことはなかった。

鋭い声は、炎を引き裂く。





どさっ…………




2つのものが、倒れる音がした…。







一方は、受け止められ。もう一方は………赤い光に包まれて、消えていく。




「………戦えなくなったから強制的にボールに戻って行ったってところかな?っと」



スターチスがあっさりとそう言うと、ドータクンを戻す。



「(危なかった……デュオンの特性は浮遊。神通力で大文字を掻き消せなかったら……)」











「ハルっ、おい、ハル!」




ゲンガーが倒された瞬間、ハルもまた倒れた。
内側に入っていたチェスカが出てきたのもあるのだろうが、連続で支配されていたのだ、体が耐えれなくなってもおかしくはなかった。

そんなハルを受け止めたロゼは、必死に呼びかけていた。




そして、どれぐらい呼びかけたのだろうか。



「………う…」



ぴくりと手が動いたかと思うと、声が漏れる。


「っ!ハル!!」


「…………ロ…ゼ………?」


気がついたのか、だが少し焦点が定まらない目をしていたが、ハルは側にいるのはロゼだと確信を持っていた。

そして、名前を呼んだ途端、あるイメージが脳裏によぎる。


段々と鮮明になっていき、そして…………!





--------------思いだした、何もかも。





感覚が戻ってきたのか、ゆっくりと起き上がるハル。
その目には、泣きそうになっているロゼの顔がはっきりと見えた。



「……………ごめん。心配、かけたよね?」



「当たり前だ!この2年、俺がどれだけ………!」



変わらない、声だった。
いつの間にか彼の目から涙が零れているのには触れず、応える。



「ありがとう。………ただいま?」


「…待ってたんだからな」



ハルにとっては、その声は安心できる声だった。
今も、以前も。
出会ってから変わらない強くて優しい声。







「………あんたら、すごすぎるだろ……」



一部始終、見ているだけだったライは気づけばそう口に出していた。
本当に、すごいと思ったのだった。



「いや…、ゲンガーは正直危なかった。これでも、焦っていた」


「スターチスさん」


ハルが目覚めたのを視認したからだろうか。
スターチスは自然をライの近くに来ていたのだった。


「だが、あのキルリア…チェスカだったか。あのトレースには驚いた。」


「まさか、トレースをあんな使い方してくるなんて誰も思いませんよ」


「ああ………」



ふと、スターチスの口が止まった。
何事かと思ってライが顔を覗き込むと、嘲笑めいた笑みが見えた。



「これだけやられても、まだ信じてるなんて……やっぱり、僕はまだ……リックのことが好きなんだ」



「(なんか、複雑そうだな…)………ん?」



どうするべきか反応に困ったライがちらりとロゼとハルの方を見た。
よくわからないが、ハルが言った何かでロゼが驚いているような…?







「…すまん。もう1回、言ってくれ」



ライの感じたのは間違いではなく、困惑気味な様子でロゼはそう口にしていた。

一方で、ハルはにっこりと笑いながら口を開く。



「全部、思い出したんだ。僕は、シヴァスの第一皇子だったんだよ」



「………………納得はいった。だが、」



「そりゃあねー。いきなりこんなこと言われて信じろっていう方が無理なのかもしれないけど……」


ハルがどこか附に落ちないという表情を浮かべたままのロゼに軽く言うと、言葉が途切れる。

何と声をかければいいのか迷った挙句に、やがてロゼから口を開いた。



「あのな。俺はお前が王家の人間でも関係ない。お前はお前だからな。」



そう、関係ない。

ロゼが思うようになったのも、スズランへの想いを自覚してからだろうか?



ハルにしては、少し意外な言葉だったが、嬉しかった。


「やっぱり、優しいよ。信じて、くれるんだね。突拍子もないことなのに」


「アホか。それよりも、やるべきことがあるだろう!今は!」






「うん。僕は、今度こそ約束を守らなきゃ。そのためにも、助けないとね!」




迷いのない表情で、ハルが言う。

続けるように、ロゼも言う。



「お互い、大事な人は同じだろう?だから、一緒に」



「当然っ!取り戻すよ!大事な妹で、ロゼが大好きな子だから」



「それでこそ、だ」



いつの間にか、2人の気持ちは完全にシンクロしていた。
2年間離れていたことが、嘘かのように……。



それは強く信じる心の力によるものだったのか。




------人は人を信じることで何度でも舞い上がれる





いや、人でなくとも何かを信じることが力を生み出すことはあるだろう。

例えば、ポケモンだったり…。




「クロバット、ノクタス、ジュペッタ、………ポニータ。おかげで立ち上がれるかも…、しれない。だから、ありがとう。」



小さくそう呟くタフトは、怯えこそまだ残っているがもう迷いはなかった。
弱々しくも4匹に微笑んで見せると、隠しきれない激情を言葉に乗せてしっかりとした口調で言った。



「貴様は俺が倒す。前から気に入らなかったが、それだけじゃ足りなくなった。俺にとっては確かに厳しい状況に違いないが………それでも!」




「あれだけ怯えていたのがポケモンが出てきた途端無くなるとは…驚いたな。そこまで言うなら倒して見せろ………できるのならな!」



そんな、小馬鹿にするような口調にも臆することなく、タフトは口を開く。




「やってやるさ。それに…もう後悔はしたくない。だから…今は!」




タフトは、落とした剣を拾い上げながら、真っ直ぐに見据える。



これは強固な覚悟。戦う、覚悟。


それほど強く思うのも、退く訳にはいかない理由があったから。


タフトの言葉の端々にそれを感じ取ったクロスは、選んだ。




「タフトさんの邪魔はさせない。来るなら来いよ、雑魚ども。全員俺が相手してやるからさ!!」




タフトの覚悟に水を差さないように立ち回ることを。






進むも立ち止まるも自分次第。
そして、どんな形ででも想いは伝わる。
抱くのは善か悪か。それによっては解釈が変わってくるのかもしれないが…。







■後書き■
ロゼとスターチスの連携でゲンガーを攻略!
スターチスの真価を見たライはどうするのか…?

ともあれ、すべてを思い出したハルとそれを受け入れるロゼ。
2人の変わらぬ絆はリアトリスに対抗できるのか!?


一方ではタフトの心情の移り変わりを見せます。
彼の戦いにも注目してください。
にしても、クロスは損な役回りを進んで引き受けている気がする(汗)

No.62 日乃 水葉 2009年12月08日 (火) 19時06分


RE: 誓いの花 STAGE15

ついにハルが記憶を取り戻し、ロゼと突き進むことになりました。この2人なら、きっとスズランを助けることができるはず……?一方、タフトも弱点を押さえて、クロスと共に突き進む。さて、残る敵は……?

今回は、特性『トレース』の使い方がとくに面白かったです。

No.63 HIRO´´ 2009年12月09日 (水) 11時40分




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