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誓いの花 STAGE18

「ハル、しばらく下がっていろ!」



細腕で支える剣は、お世辞にも万全とは言えなかった。
だがそれでも退かないわけは、目の前の男にあった。



「少し前までは、あんたに向かうことすらもできなかった。だが、迷いは失せた!」



彼の怒りの矛先が自分であること、そして理由も知っている上でリアトリスは口を開く。




「見た所、随分と手負いのようだけど…、それで僕に勝てるとでも思っているのか?」



明らかな挑発的な言葉だった。
気付かないふりをしてタフトは睨みつけていた。



「こっちは1戦やりあった直後なんでな。それでも場をかき乱すぐらいなら、まだできる。」



先程は万全ではないとは言ったが、諦めるということはタフトにはない。
その想いを込めるかのように、リアトリスの剣を受け止めている。



「同じく。けど、まだいける。ロゼも一旦下がってな」


「おい、クロス!」



そんな必死のタフトに呼応するかのように、クロスも槍を絡め取っていた刃を巻き取る。
思わずロゼが声を荒げるが、油断のないように正面を見たままに口を開いていた。



「安心しな。1人ぐらいだったら、なんとかするからさ」



「そういう問題じゃ…!」


「とりあえず、自慢の頭脳で突破口、考えてな。入隊試験の学力試験、トップは伊達じゃねえだろ?」


言うが速いか、周囲に纏うように刃を舞わせ、槍先にかすらせる。
その素早さは、ロゼでも真似はできないだろう。



「いや、学力トップはお前もだろ……」


それはともかくとして、ひとまず、側にいても邪魔だと判断したロゼは、やや後ろに下がる。
その時ハルも同じ判断をしたのだろう。
自然とスズランの前に揃っていた。



「あーもう、まだ若干痛っ」



軽く左腕を振りながらハルがぼやけば、ロゼも呟く。



「リアトリスはひとまず置いておくにしても、だ。リジアをなんとかできれば見込みはあるとは思うんだが……」


「そうだよね。それが一番…」



そのロゼの呟きに同意しかけたハルだったが、目の前で、炎と氷が横切った。

瞬間、2つの静かな声が聞こえてきた。





「マジカルリーフか、悪くはない。だが、その前に燃やしてしまえば当たらない。だからそうしたまで………。驚いたか?俺が炎ポケモンを持っていることに」




「冷気をため込んだ大顎を当てたのさ。そして、その冷気は本来の形を取ることも可能なわけだ」




1人はギャロップを従え、もう1人はクチートを従えている。
タフトと、スターチスだ。




「ギャロップ………見た所、進化したてって所かな。それで、ロズレイドを一撃とは……」



「ボールには戻してなかったからな、もらいびの効果が少し残っていたんだろう。ああ、移動中に白いハーブを与えていたな、クロスが」



どうやら不意打ちを仕掛けようとしたリアトリスだったが、気付いたタフトが攻撃をも焼き払ってロズレイドにオーバーヒートを喰らわせたのだろう。
体力は落ちているとはいえ、白いハーブによって下がった分のとくこうを補い、残っていたもらいびの力を借りたギャロップの大技の前には草タイプであるロズレイドは敵わない。

それを知ってか知らずか、タフトは口元に笑みを刻んでいた。


「あんた、確かまだポケモン持っていたよな?今みたいなことされるのは正直面倒だから、来いよ」


先程の意趣返しといったところだろうか。
あえて挑発的な言葉を投げかけることで、誘いかける。


「………いいだろう。ただ、ゲンガーは動けないからな。最後の1匹で相手しよう……!」



そうして、現れたのはスターミー…。






「スターチス、あんた変えなくてもいいのをわざわざ変えてるでしょう?」



たった今冷気で落とされたヨルノズクを戻しながら、オレガノはあえてそう問いかけていた。



「それもないとは言わない。けど、試してみたかったのもあるよ。ハーシュの技でね。」



「信じられない、あれで初めてやった威力!?」



「さて、後2匹、だね。せっかくだから、こっちの残り2匹も出すよ」



不敵な笑みを浮かべるスターチスの口調は、余裕たっぷりに見えた。








「………完全に出ていくタイミング逃したな………」



ポケモンバトルと武術で戦うその部屋の、前。
扉に寄りかかっている状態のまま、ライは呟いていた。

いや、出て行こうとはしていたのだが、その瞬間猛スピードで駆けてくるギャロップが目に入り、慌てて避けて今に至っていた。



「どーしよ……ん?」



かんかんか………



そんな中、ふとライの耳に聞き慣れない足音が聞こえてくる。
だが、どこか不規則にも聞こえる、そんな足音だった。

どうするべきかと思案したが、目の前のバトルよりその足音を気にすることにしたライは、その方向を見つめていた。


このフロア………最上階に来るには、階段が1つしかないため、自然とその方向を見ることになるともいえるが。



そして、彼の視界に入るのは黄緑の髪。
聡明さを醸し出すその女性は、随分と息を切らしているようであったが…。



「あの、貴女は………?」



「コスモスよ。あんたこそ、誰よ………くっ」



コスモスは、不意に足元をふらつかせると、その場に倒れそうになる。
咄嗟に受け止めてから、ライは口を開く。



「えっと、ハル君達の知り合いですか?」


「そうよ。………自分で引き受けたとはいえ、思った以上に下っ端共の数が多くていらない傷もらったわよ!まったく…」



『ハル』という呼称に反応したのか、コスモスはぽつりと悪態をつく。

そのことで、一瞬だけライが困惑することになるのだが、すぐに彼女の足元に気が付く。



「右足……大丈夫ですか?」



「大丈夫、とは言えないわね。だけど、弟達が頑張っているのに私が退くわけにはいかないわ」



コスモスはあくまでも気丈に振舞っているのだが、ライだけではなく他の人間が見てもはっきりとわかるほど苦しげな表情を浮かべていた。
彼女にしては珍しいことなのだが、勿論今会ったばかりのライにはわかるはずもない。

だが、彼の胸の中にはある想いがよぎっていた。



「行きましょう。この先で、戦っています」



力になれるなら、なりたいと。







「アームハンマーよ!」



「レウィン!そのまま突っ込め、ドリルくちばし!」



ずががががが!!!



ユキノオーの強烈なアームハンマーに負けじと回転しながら突っ込むエンペルト…ただし、その身は他とは色が違うが。
完全に回転が止まった時、その場に立っていたのはエンペルトだった。


気高き女王は倒れているユキノオーをしばらく眺めた後、自分からボールに戻って行った。



「今のは結構消耗したって感じか……さて、とりあえず、最後の1匹、行こうか。デュオン!」


「行って、グレイシア!」



最後の1匹であるグレイシアを繰り出すオレガノと、消耗しているとはいえ戦えるポケモンを5匹残しているスターチス。
どちらが勝つかはもう明白であろう。




そんな中、ある男は不意に踏み込む力を強めた。



「よせ!クロス!!」



そして、その瞬間に気付いたロゼが叫ぶも………





ぱきいいいいいいいいん!!





嫌な音は、響いていた。






「クロッカス!!」





そして、彼女も目撃していた。

槍先にわき腹を裂かれ、左手から幾つも下がる刃のほとんどが折れるその光景を…。






「…………どうしよう、こんな時に、突破口を思いつくなんて…!」




ぼそりとハルが呟いた直後、彼の身はその目の前に飛んでいた。



「はあ、はあ……言ったろ、1人はどうにかするって。」



「アホ!確かに、リジアは倒せたかもしれないが、お前!」



ロゼの視界には、足を痛めたのか、立ちあがれないリジアの様子は見えていた。

それはともかくとしても、だ。
この友人の傷が、それ以上なことに思わず怒鳴っていた。



「俺の悪運の強さ、しらねーわけじゃ…ねーだろ。だから、平気だっ…て…」


本人は笑っているが、起き上がるのも辛いようだった。
体を起こそうとして呻くクロスを片手で制して、ロゼは冷静になってきた頭で傷口を見て、一瞬顔をしかめた。


「(折れた槍先が刺さっているな……深さが、わからないが………まずい、かもしれない)………ん?」


ふと、抜こうとして力を込めた時、違和感を覚えた。


「(何か、ある?)」


深く刺さっていることを傷口から予測したが、何かが遮っていて致命傷にはなっていないようだ。
それが何かを考えようとしたが、その前に聞き覚えのある声が耳に入る。



「ほんっと、馬鹿弟だわ………」


「コスモス…さん。」


まるで今気がついたかのような、呟きだった。
彼女に付き添っていたライは、どうするべきか迷った挙句、ひとまずハルの元へ歩み寄った。




「ライ………来たんだね」


彼に気付いたハルだが、心なしか声が険しい。
ロゼほど取り乱してはいないが、友人の傷ついた姿に動揺もしているのだろう。


「…うん。たった今来たばかりの彼女と一緒に…けど、彼女は戦えないよ」


「知ってる。右足、引きずってるもん。」


言ってから、数秒考えたが、不意にハルがライに向き直る。
その表情は、どうにかして様々な感情を堪えているようなものだった。



「あーえっと、何か、できること、ない?」


「だったら………1つ、頼んでいいかな」




「ちっ……だが、舐めるな!」



ぐっ!



先程から、随分と善戦してりうタフトだったが、疲労が重なって来ているのか、やや力負けし始めた。
彼一人ではもう長くは持たないだろう。

それと共に、傍にいるギャロップも少しずつスターミーに押されていた。



「ライ。タフトさんの手助けお願い。こっちは、手当の邪魔させるわけにもいかないし…それに…」


「それに?」


「一発逆転の大技、思い出したんだよね。……だけど、時間がかかる。詳しいことはともかく、とりあえず、行って!」


「わかった。チェリンボ…マジカル、リーフ!」



ずぱっ!



言うや否や、ギャロップとの戦いを続けていたスターミーに光り輝く無数の葉っぱが向かっていく。
倒すまではいかなかったようだが、スターミーに隙を作らせるのには十分だった。

即座にタフトが指示するよりも速く、捨て身タックルを使うギャロップ。
その突撃が当たる寸前、チェリンボが投げた光がギャロップを包み威力を高めていた。


どんっ!




「…………これで、あんたに集中できる。助かった、ライ」


ふう、と軽く息をつくタフトのその言葉に、ライは真っ直ぐな確信を持った目でタフトに囁く。


「ハル君が、何か強力な攻撃持ってる。けど…」


「………そうだな。まずは彼の処置が優先だな。時間稼ぎ、すればいいんだな?」


「そういうことです」


言っている間に抜いたのだろう。
ライの手元には、短剣が2本あった。



「ライラック…君も彼らに加勢するのか?」



じっとそれを見つめていたリアトリスがぽつりと漏らす。

一瞬だけ迷う素振りを見せたが、ライは呟く。



「俺は、選んだよ。少なくとも、貴方よりハル君に従うほうがいいと思ったから…」



「(それに関しては同感だ。)さて、続きといこうか?」



ライの加勢で精神的に楽になったのだろうか。
どこか余裕を含んだタフトの口ぶりがそこにはあった。



「…………何をする気か知らないが。2人ぐらい、すぐに……!」



「それは、どうだかな…!……!」




ずどんっ!!



その音は、唐突に響いた。



「これで、終わりだな。………レウィン、疲れていたのにすまない」



そこに聞こえるスターチスの声。
彼の前には、横倒しになっているドータクンと、美しく煌めくエンペルトの姿があった。

それと共に、オレガノの腕の中でぐったりとしているグレイシアの姿もあった。



「2匹しか倒せなかったわね…結局…」



本当に小さなオレガノの声だったが、それがやけにはっきり聞こえた。

リアトリスやタフト、ハルは驚いているようだった。
それが聞こえたことに?それとも…

そんなことは知ってか知らずか、スターチスは微かに笑みを浮かべて言っていた。



「いいや、2匹も倒したんだ。これでも峰の任務でかなり鍛えられていたのに………本当、驚いたよ。」



必ずしも峰の在籍年数=強さ、というわけではないだろうが………。
スターチスからはそれに見合うと言ってもいい風格が滲んでいた。
今のバトルにおいては、手を抜いていなかったし、真剣そのものだった。

だが、オレガノはその本気のスターチスのポケモンを2匹倒していた。

思いもよらない人物が実力者、というのはポケモンバトルに限らず様々なことに言えるだろう。
勿論、スターチスもそのことを考えていなかったわけではない。
それでも、すぐ近くにいた幼馴染がそうであったことに驚きを覚えてしまっている。



「油断、していたわけじゃない。だけど、オレガノ。最近戦った中だと一番強かったよ」



いつの間にか、彼の目にあった冷たさ、あるいは鋭さは消えていた。
警戒はまだしているものの、少なくともオレガノに対しては戦意は感じられなかった。



「………変わったように見えるけど、全然変わってないんだから」



そして、そんなオレガノの呟きが聞こえたのか聞こえてないのか…。
スターチスは苦笑ともとれない複雑そうな表情にいつの間にかなっていた。









少なからず、刺さっている分には余計な血は流れない。
だが、放っておくわけにもいかず、それを抜いた時、先程の違和感に気付いた。

傷口の隙間に、槍先とはまた違う銀色の光沢を持つ金属が目に入ったからだ。



かしゃん………



詳しく傷を見ようと、ロゼがクロスの上着を少し捲くった拍子にそれが滑り落ちたようだった。
慌てて拾おうとしたが、その前に細い手がそれを拾う。

いつの間にか座りこんでいたコスモスの手だった。



「これ………まだ、力、残ってる……」


「………コスモスさん、それってもしかして…」


クロスが持っているもので、力を溜め込むようなものは1つしかなかった。
確信を持ったロゼがコスモスに確認しようとするが、その前に弱弱しい声が耳に入る。



「それな…、さっき、ちょっとだけ溜め………1発ぐらいだったら、撃てるはず……」



「わかった、けどな………とりあえず、黙れ。それのおかげで深い傷にならずに済んだが、傷口が開くと厄介だ」


ビスカ譲りの医療知識を総動員させながら、ロゼは焦りを感じていた。
手早く処置しなければ、助かるものも助からない。

数秒考え込んだ後、一番近くにいたコスモスに彼は言っていた。


「コスモスさん。今から俺が言うことを、写してくれますか?」


「わ、わかったわ」


血の気が引くような想いで弟の様子を見ていたコスモスも、できることなら、と素直にロゼに従う。

以前にも似たようなことがあったために、余計に彼女の心がざわめいていた。



「………俺にできるのは、これぐらいだな。…………ハル」



一通り応急処置を終えたロゼは、不意にハルを呼んだ。
振り向いたハルにロゼは目線だけで考えを伝えた。


「…………構わないよ。」


なんとかハルがその意図に気付いたようで、迷いながらもそう口にしていた。
ロゼは軽く頷くと、キルリアを呼び出していた。



「(チェスカの体力的に、一方通行…戻ってこさせるのは、無理だな。)……チェスカ、ビスカ兄さんに宜しくな」



軽くキルリアの頭をなでてから、ロゼはコスモスに向き直る。


「………コスモスさん。クロスとスズをお願いします。」


「ちょ、待って!私は…!」


「その足じゃあ、無理でしょう」


困惑するコスモスをばっさりと切り捨ててから、ロゼは視線をスズランに移す。



「………スズ。必ず2人で戻るから。だから、もう少しだけルジィ借りるぞ」



「約束、なんだから」



「ああ、守るさ………!」



ロゼのその言葉が合図だったかのように、キルリアはテレポートを実行する。
クロス、コスモス、そして…スズランが消えていく中、ロゼは弓矢を構えなおす。


そして、いつの間にか再びロゼの隣に来ていたハルが、呟く。



「勝てる見込みができた。いいや、勝つよ」


「当然だな」



自信ありげに笑うロゼのズボンのポケットには強引に入れたと思われるものがあった。
淡く緑色に発光する『それ』に触れながら、口には出さずに言った。




「(ここには、クロスの想いがある。あいつの奮闘、無駄にしてたまるかよ!)」




静かだが激しく燃える炎を視線に宿し、真っ直ぐにリアトリスを睨みつける。

その射抜くような視線に気付いたのだろうか、彼が不敵な笑みを口元に浮かべるのがはっきりと見えた…。









■後書き■
戦いの女神はどちらに微笑む?
さて、そんなわけで次回決着の時!………多分(おい)
一足先に戦闘を終了したのはスターチス。
油断はなかったスターチスでも、2匹倒されてしまってます。オレガノって何気に強いなぁ(他人事?)
一方でロゼの制止を振り切って突っ込んで行ったクロスが戦線離脱。
彼の身を案じて取った行動は、ビスカの元へ送ること。
タフト、ライ、そしてロゼはハルを信じてリアトリスと対峙しますが、その結末は?

ちなみにロゼは、口には出さないだけでクロスもハルには劣るものの、すっげえ大事に思ってます(笑)

No.68 日乃 水葉 2009年12月26日 (土) 17時08分


RE: 誓いの花 STAGE18

様々なキャラが集結し、いよいよ戦いは決着の時を迎える。
この物語の結末に終止符を打つのは一体誰なのか?最後に期待しましょう。

No.69 HIRO´´ 2009年12月31日 (木) 22時03分




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