「春よ来い」をお題にした筥迫、黒谷和紙を使った四作目は藍色にとりどりの花が咲く紅型染めです。素朴な少女の雰囲気なので、着せ替え人形のように愉しみました。お襦袢(内布)は桃色の鹿の子模様で、赤い玉縁(半衿)に赤い房(帯)。赤いかがり糸を締めたら(鼻緒)、簪差し口に総絞りの赤い帯揚げはいかが。そうそう髪には赤い玉かんざし(緒締玉)でおめかしを。
表布:黒谷和紙 紅型染、刺繍装飾 、 内布:木綿 挟み玉縁:ポリ化繊 / 緒締め玉:ガラスビーズ8mmめのう色 メモ:0.7ミリ厚紙標準+鏡周りと被せ裏に懐紙二枚養生、綿入(キルト芯+フェルト) 打ち紐: 紅 ; 切り房:<紅02>
型染めの花芯に金の刺繍糸を挿すととても華やぎました。型紙に入るすべてのお花に刺繍しようと江戸職人きどりでおりましたが、ついに簪差しの裏側にまできてなぜかこの小さな贅沢が引き起こす、奇妙な背徳感でだんだん落ち着かない気分になってゆく。 …だって絶対に隠れるところ…でも手に取れば見える所。「筥迫はハイクラスな美術装飾品」ですから思い切って心の壁も破らないといけないでしょうか。うーん…やっぱり落ち着きませんね、庶民ですね、数十センチの糸がもったいない。江戸時代の「贅沢禁止令」がDNAにまで受け継がれたか。
こんな怪しげでものくるおしい気持ちになるとは、きっと鬼の仕業に違いない…筥迫の魔除け鏡が効かないのはどうしてか?魅惑的な赤い房を見つめていると、あれ?菊結びがひとつ裏返っている。さてはこれが鬼門に?それとも心優しいみいちゃんが、節分の鬼が逃げられるよう一つ門をあけておいたに違いない… そんな幻想を振り切り、心を鬼にして全部の花芯に刺繍をいれました。やっぱり全方位、きらきら、きれい。エレガントなお嬢様気分。 素朴な「みいちゃんの筥迫」にするはずでしたが……あぁ、節分お化けか! みいちゃん鬼の春待ち筥迫のできあがり! 旧暦の節分にも間に合ってお後がよろしいようで…。
PS: 先日、江戸時代の古今雛を見て、豪華な女雛の襟元に垂れた飾り結びが筥迫教本と同じでした!お雛様についてはRom筥さまのブログでもかなり詳しい記述がありましたね。今回の菊結び3連も古今雛の中の真似っこです。
ちゅん@和紙の人 [653] 02/28/(木) 17:13:31
コメント
ちゅんさんの相変わらずの妄想が楽しい。 絵に描いたような筥迫ビルダーの楽しみ方ですね(笑)。
それから、ちゅんさんのDNAは戦時中に質素倹約に成らざるを得なかった「贅沢は敵だ!」に影響されたものです。
江戸時代の奢侈禁止令は、豊かになっていく商人たちを抑えつけるための「身分制度の維持」が目的のようなものですから、庶民たちは従順なふりをしても内心は相当反発があったわけです。 贅沢できるお金があるのに贅沢しちゃダメ!と押さえつけられていたわけですから。
ですから「一見して目立たないように凝りまくる(金を掛けまくる)」、もしくは「見えない所を思いっきり派手にする」という反骨精神が懐中物、提げ物に込められていたのです。
そのような時代の中で、本来の筥迫は奢侈禁止令も及ばない世界で綺羅を張るための道具として使われていたので、その地位を見せつけるためにとことん派手であったのです。
ではこれを現代に生きる私たちに置き換えると、お金というよりは「年齢的な縛り」の中で生きているということ。 社交的なパーティー文化もないですし。
ということで、奢侈禁止令も及ばない大奥に匹敵するのが未婚女性(笑)。 ハレの日であれば超絶見栄張りに励んでください。
そしてある程度の年齢に差しかかったところから、奢侈禁止令に縛られた商人と見立て、お金はあっても年齢のために派手なものを身につけるのははばかられる。 ならば見えるところは年相応な素材にして、隠れているところを思いっきり派手にする。 または一見して目立たないけれど思いっきり凝りまくる。
これが現代の懐中物の真髄と考えます。
そしてこれができるのが自作出来る人ならではの楽しみということで、優越感をしっかり感じてください(笑)。
rom筥 [654] 03/13/(水) 11:21:18
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