「……どうだ?」
「今のところ、世界の創星分子は安定していますわ」
「前回のようなカタストロフの前兆も見られません。星成波形にも乱れなしです」
「そうか。今回は順調のようだな」
「でも、そろそろ順調に行ってもらわなきゃ困るんじゃないの〜? 前回、その前と失敗して、今までにもこれといって目覚ましい結果も残してないし、今回辺り成功してもらわないと、各種機関からの援助、打ち切られちゃうんじゃない?」
「もっともだ。いい加減、成果の一つも出さねばなるまい。いくら理論上可能とはいえ、そこでとどまっていれば、所詮はただの卓上の空論というやつだ」
「ねぇねぇ、前々から聞きたかったんだけどさ、各種機関からの援助金ってどれくらいもらってるの?」
「何、大した額ではない。この実験維持で精一杯程度のものだ」
「でも、これだけの環境、維持するだけでも相当なもんでしょ。あたしの読みだと、国家予算十年分くらいは軽いんじゃないかな〜」
「いっ!!?」
「こらこら。からかうんじゃない。せいぜい数年分といったところだろう」
「なっ!!?」
「……どちらにせよ、相当な額であることに違いありませんわ……それより!」 ――ビシッ!
「ほぇ? あたしがどうかした?」
「その馴れ馴れしい話し方、お止めになったらいかがですか? いくら博士が貴女の祖父とはいえ、今は実験の最中です。公私混同も甚だしくありませんこと?」
「え〜、でも、おじいちゃんのことは、昔っからずっとおじいちゃんなんだもん。今更変えられないよ」
「変えなさい!聞いてるだけで、鬱陶しいことこの上ありませんわ!博士からも、一度きつく言ってやって下さい!」
「しかしなぁ……こいつは、本当に昔っからそうとしか呼ばなかったらな……今更変えろと言ったところで、変わるとは到底思えんが……」
「さっすがおじいちゃん。よく分かってる〜♪」
「……はぁ。貴女ねぇ……少しは世間の常識ってものを……」
「……あの〜、お取り込み中失礼しますが……」
「ん?どうかしたのか?」
「……悪い報告かしら?」
「いえ、そういう訳ではないのですが……」
「? どうしたってのよ?」
「確かに、創世分子そのものには異常はないんですが、それと共に世界を構成する因子の一つに、イレギュラーが混じっているようなんです」
「イレギュラーだと? どの因子だ」
「改変因子です」
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