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新世界作品置き場

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タイトル:新世界5 SF

――またしても新しく二人の人物が中途参加! 主人に付き従う清楚なメイドは、果たしてこの世界の何を知っているのか!? ずっとシリアスな展開だけど、それでも尚コメディ的要素を挟まずにはいられないシリーズ第五作目!

月夜 2010年07月09日 (金) 13時21分(52)
 
題名:新世界5(第一章)

「今回の覚醒者は?」

「M.D.ですね。他はまだ目覚めの予兆が微かに伺える程度です」

「そうか。そういえば、あの後S.I.保持者の様子はどうだ?」

「特にこれといった異常もなく、常態のまま経過していますわ」

「ふむ……わかった。以後も、彼女の状態にはより一層気を配ってくれ。何かあったら、どんな些細なことでも逐一報告をするように」

「けどさ〜、おじいちゃん。何であの力をそんなに気にかけてるの?」

「……」

「……まぁ、別に教えてくれなくても良いけどね。私たち皆、おじいちゃんのこと信じてるし」

「……すまないな」

「いいえ、博士が謝ることはございませんわ。彼女の言った通り、私たちは全員、博士のことを信頼していますもの」

「そうですよ。博士に例えどんな隠し事があったとしても、僕たちはどこまでも博士について行きます」

「……ありがとう。時が満ちれば、いずれ話そう」

「にしても、前々から思ってたんだけどさぁ」

「何です?」

「このS.I.とかM.D.とかって、どういう意味なの?」

「……貴女、そんなことも知らずに今までやってきたの?」

「……あれ? まさかとは思うけど、これって俗に言うJkってやつ?」

「まさに常識そのものですわ! 全く……呆れて物も言えません」

「バ、バカにしやがって〜……でさ、あれってホント何なの?」

「あれはですね、彼らに目覚めた能力の種類を表しているそうですよ。多分、二つの単語の組み合わせで表される能力の、イニシャル2つを取ったものだとは思うのですが……」

「へぇ〜、そ〜なんだ」

「とは言え、それも所詮はただの予想。確率はどこまでいっても確定には達し得ないものだ。そもそも、彼らの能力はそのほとんどが未知のものだからな。分かるのはその波形とイニシャルくらいのもので、どのような能力かまで正確に把握することは、具体的に発現するまで分からない」

「ふむふむ……ってことは、あそこの人たちの覚醒する能力全部に、あの波形とイニシャルがついてるってこと?」

「そういうことになるな」

「ふ〜ん……でも、それっておかしくない?」

「何がです?」

「だって、私たちがまだ出逢ってない未知の能力にも、それぞれに対応する名称が付いてるってことでしょ? なら、私たちよりも前にこの研究をしていた“誰か”がいるってことにならない?」

「……言われてみれば、確かに……。しかし、もしそうだとすれば、僕たち以前の研究チームは相当優秀だったということになりますよね。なんと言ったって、ほぼ全ての能力を発現させ、その名称をデータベースに記録しているんですから」

「いえ、それはないと思いますわ。この研究の責任者の欄には、今も昔も博士の名しか載っていませんもの。私たちの前に、他の研究機関の手に触れたとは思えませんわ」

「あれ? でも、それってこのシステムを作ったのもおじいちゃんってこと?」

「確かに博士は研究責任者だけど、開発に携わってはいないはずですよ。そうですよね?」

「あぁ。このシステムそのものを生み出したのは私じゃない。それどころか、開発には全く関与していないよ」

「全然?」

「あぁ」

「へぇ〜……でもさ、じゃあ何で開発者の人たちは、自分で研究しようとしなかったんだろ?」

「開発と研究はその根本が違いますからね。そもそも、研究というものが1から100ある全ての可能性をしらみ潰しに調べていくことであるなら、開発というものは、1から100ある選択肢の内、己の感性に基づいた一つを選び抜くことの繰り返しであることが多い訳ですから。研究者を努力型とするなら、開発者は主に閃き型です」

「中には、1から100まで可能性全てを試してゆく努力型の開発者もいますけど。こんな人智を超えたシステムを創り出すなんて、間違いなく前者でしょうね」

「そっかぁ。じゃあ、これを創った人って誰なんだろう?」

「確か……開発責任者の欄には、カナ文字で誰かの名前が記されていましたけど……チラッと見ただけですので、良くは覚えてませんね」

「どちらにせよ、そんなこと私たちには関係のないことですわ。さぁ、お喋りはそのくらいにして、二人とも席にお戻りなさい」

『は〜い』

「……」

「……博士? どうかなさいましたか?」

「ん……いや、何でもない。私は少し奥に戻っているから、その間よろしく頼む」

「はい……わかりましたわ」

月夜 2010年07月09日 (金) 13時22分(53)
題名:新世界5(第二章)

???「……忌まわしい月……。今夜は蒼月でしたか。どうやら、出てくる日を誤ったようですね」

???:それにしても、私がこうやって自らの意思で、実存する確かな肉体を動かせる日が再び来ようとは、思いもしなかったわ。……けれど、まだ力を覚醒しきってはいないみたいね。はてさて、真の意味での目覚めは、一体いつになるやら。

――ガサッ。

???「……どなたかしら?」

春紫苑「僕だ。こんな夜中に何をしている?」

???「貴方ですか……。この感じ……この月が貴方の月神みたいですね」

春紫苑「……何?」

???「お分かりになりませんか? まぁ、まだこの世界について理解も浅いでしょうから、仕方ないことかもしれませんね。事実だけを一言で述べるとするなら、私と貴方は決して相容れない存在だということだけです」

春紫苑「……貴様、何者だ」

???「まだ知る必要はありません。いずれ、時が経てば嫌が応にも知ることとなるでしょう」

春紫苑「何を……ぐっ!?」

――ドサッ。

???「ご安心なさい。その時が来てしまうまで殺しはしません。……出来ることなら、最後まで仲睦まじく過ごしたいものですが……」

春紫苑「……」

???「……きっと、そうもいかないのでしょうね。ここは、そういう場所ですから……。きっと、いつかは私と貴方も……」

???《私のような罪深き存在に、捧げられる祈りなどないと承知の上で、今私は貴方様に願います。神よ、どうかこの者たちに惜しみなき慈愛を。そして、この狂った世界に光に満ちた終焉を……》

月夜 2010年07月09日 (金) 13時22分(54)
題名:新世界5(第三章)

月夜「ん……んぅ……あれ……?」

春「起きたか」

白月「やっとお目覚め? もう昼過ぎよ」

メカ「とはいっても、この世界の時間の流れは速いからな。太陽の動きだけでは、今が元の世界で言ういつになるか、正確には分からないがな」

月夜「私、いつの間にか寝ちゃったんだ……そうだ! マヤさんは!?」

マヤ「ん? 呼んだか?」

月夜「あ……」

マヤ「? どうしたんだ? 急に固まって」

月夜「マヤさん……うわあああぁぁん!!」

――ガシッ!

マヤ「うわっ……っと、おいおい、一体いきなりどうしたってんだ?」

月夜「無事だったんだね!? 大丈夫だったんだね!? 良かった……良かったよおおぉぉっ!!」

マヤ「オーバーな奴だな。そんなに心配してくれてたのか?」

月夜「だって……鏡架さんじゃないけど、もし戻って来なかったらどうしようって、ずっと思ってたんだから……」

マヤ「そう易々と殺られてたまるかって。鏡架にも言ったけど、サバイバル経験は豊富だって言ったろ?」

月夜「うん……うん……本当に良かった……」

白月「……」

朱蒼「……白月さん」

白月「……え?」

朱蒼「大丈夫……よね?」

白月「あ、はい……すいません」

朱蒼「……」

春紫苑「う……うぅ……」

艦隊「お? こっちもようやくお目覚めみたいだな」

春紫苑「ここは……っ!?」

艦隊「おい、大丈夫か?」

春紫苑「くっ……平気だ。それより、僕は一体……」

春「俺たちが起きた時には、もうそこに寝転がっていたぞ」

艦隊「あの寝相の悪さだからな。知らない内に、寝返りだけでここまで転がってきたんじゃないのか?」

春紫苑「そんなはず……ん?」

春「どうした? ……月夜がどうかしたのか?」

春紫苑「いや……何でもない」

メカ「なんだ、あいつに起こしてもらえなくて不機嫌とか、そういうことなのか?」

春紫苑「だ、誰もそんなことは言ってない!」

艦隊「ムキになる辺りがなんとも怪しいなぁ〜。やっぱりお前って、ああいう無邪気な娘が好ぎゃぷべぶふぉあっ!!?」

――ドサッ。

春紫苑「……お前は黙ってろ」

鏡架「……み、見事なまでに入りましたね」

メカ「相変わらずのドMっぷりだな。ここまでくると、呆れを通り越して感嘆するよ」

月夜「……あ、春ちゃん。ようやくお目覚め? もう昼過ぎだよ」

白月「人のことを言えた立場じゃないでしょう。貴女だって、本当についさっき起きたばかりなんだから」

月夜「う、うっさいな〜。春ちゃんより先に起きたのは事実なんだから、何言ったって良いじゃん」

春紫苑「……おい、月夜」

月夜「ん? どったの?」

春紫苑「昨晩……僕はお前と何か話したか?」

月夜「昨日の……夜? 私、昨日は皆のとこに戻ってきてしばらくしてから寝ちゃって、そこから今朝までずっと寝てたよ。だから、春ちゃんと話すのも今が最初」

春紫苑「そうか……」

月夜「あ、もしかして……」

春紫苑「な、何だ、急にニヤニヤと……」

月夜「昨日の夜、私と話したっていうのは、春ちゃんの夢の中での話なんじゃない?」

春紫苑「なっ……!?」

月夜「キャーッ♪ 私ってば、夢の中で春ちゃんとどんなことを話してたのかしら〜♪」

春紫苑「バカを言うなっ! 僕は滅多に夢を見ない体質なんだ!」

朱蒼「別に恥ずかしがらなくてもいいじゃない。好きな人を夢に見るっていうのは良くあることよ」

春紫苑「な……なっ……!」

マヤ「……言うね、あいつ」

鏡架「……えぇ。あんな火事場に爆弾を放り込むようなマネ、彼女じゃなきゃとてもできませんよ……」

月夜「ねね、どんな夢? 私、春ちゃんの夢の中でどんなこと言ってたの?」

春紫苑「だから、違うと言っているだろうがっ!!」

――ブンッ!

月夜「おっと! 踏み込みがあま〜い」

朱蒼「あら、残念。なら、貴女は少し踏み込みが深すぎたわね」

月夜「へ?」

――ガッ。

月夜「えっ!? あ、ちょ、わわわわぁ〜っ!?」

――ドシン!

月夜「いった〜……何よ、こんなとこに……って、あれ?」

艦隊「……」

マヤ「これは……あれだな。ヒッププレスってやつだ」

春「全体重が頭部に集中したから、もはや致命傷だな。あれは」

朱蒼「これだけ広けりゃ、埋める場所には困らなさそうね」

白月「土葬って、埋める深さが浅いと雨で地上に死骸が露出したり、腐敗臭が漏れたりするらしいから、埋めるなら相当深く掘らないといけませんね。めんどくさいったらありゃしないわ」

鏡架:……まさかとは思うけど、この人本当に埋める気じゃ……。

月夜「あ……え、えっと……ご、ごめんね?」

艦隊「……」

メカ「聞こえるわけないわな」

朱蒼「それより、貴女。人の心配をしている場合?」

月夜「え? ……あ」

春紫苑「……」

月夜「あ……えぇっと……き、きゃー、襲われるー」

白月「棒読みも甚だしいわね」

春「ま、いつも通り、自業自得ってやつだな」

月夜「あ、あれ……これは、もしかして本当に襲われる方向……?」

春紫苑「……」

鏡架「……みたいですね……通り魔的な意味で」

春紫苑「さて……覚悟はいいか?」

月夜「あ、えーと……あ、後一時間ほど猶予をくれると嬉しいかなぁ……」

春紫苑「断る」

月夜「え? あ、ちょ、マジ!? ぎゃあああぁぁっ!!」

月夜 2010年07月09日 (金) 13時25分(55)
題名:新世界5(第四章)

蒼空「……ん?」

紗女「どうしました?」

蒼空「いや……今、どこかから誰かの声が聞こえてきたような気が……」

紗女「声……ですか? ってことは、ここに私たち以外の誰かが?」

蒼空「そういうことになるな。見に行くぞ」

紗女「はい、坊っちゃん」

蒼空「……」

紗女「……」

蒼空「……」

紗女「……坊っちゃん」

蒼空「何だ?」

紗女「怖く……ないんですか?」

蒼空「怖い?」

紗女「つい先日まで平穏な日常の中に居たはずなのに、次に目覚めたら既に見たこともないような異世界……恐怖を感じて当然だと思いますけど……」

蒼空「まるで怖くない……と言えば嘘になるが、必要以上の怯えはないよ。何より、俺にはこれがあるし……」

紗女「……お母様の写真ですね」

蒼空「あぁ、このロケットがあれば、俺はどこでだって毅然と立ってみせる。それに、今は隣にお前もいるんだ。怖さなんて微々たるもんさ」

紗女「そう、ですか……」

蒼空「急にどうした? 紗女は怖いのか?」

紗女「私……私は……どうなんでしょうね。私自身、よく分かりません」

蒼空「はっきりしないやつだな。お前がそんな煮え切らない態度を取るなんて、珍しいじゃないか」

紗女「……そうかもしれませんね。じゃあ、私も怖くはありません」

蒼空「じゃあって何だよ。使い方おかしいぞ」

紗女「間違ってませんよ。怖くないと言う坊っちゃんが隣にいるなら、私だって怖くありません」

蒼空「言っておくが、誰かに頼られる程の力はないぞ。俺には」

紗女「知ってますよ。もういい加減付き合いも長いですからね」

蒼空「……少しは主の顔を立たせるってことを覚えて欲しいものだ。まぁ、長い付き合いだから、それが無理なことくらいとうの昔に承知の上だが」

紗女「その言い方だと、私が物覚えの悪いバカみたいじゃないですか」

蒼空「違うのか?」

紗女「違います」

蒼空「違ったか?」

紗女「違います」

蒼空「違わないだろ?」

紗女「違います」

蒼空「違わなくないだろ?」

紗女「違いま……あ、あれ? 今、何て言いました?」

蒼空「さぁね。……っと、確かさっきの声はこの辺りから……!」

春紫苑「しばらくそのままで反省していろ」

月夜「む、無念……」

メカ「おーおー、随分酷くやられたもんだな。大丈夫か?」

月夜「千本くらい骨折れた……き、救急車……」

白月「安心なさい。人間の体にそんな骨ないから」

鏡架「で、でも、本当に大丈夫ですか? 何か、指先が痙攣してるみたいなんですけど……」

朱蒼「放っときゃ治るんじゃない?」

春「……看護婦とは思えない口ぶりだな」

紗女「……坊っちゃん」

蒼空「あぁ。やはり、俺たち以外にも、先客がいたみたいだな」

紗女「……一旦、ここを離れましょう」

蒼空「離れる? どうしてだ? せっかく俺たち以外の誰かに会えたんだ。見た感じ、悪人の集団とも思えない。今の内に、得られる情報は得ておくべきじゃないか?」

紗女「それは……ですが……」

蒼空「……紗女。お前、俺に何か隠してないか」

紗女「……」

蒼空「……言えないか?」

紗女「……すいません。確証のないことを、軽率に話す訳にはいきませんから……」

蒼空「……分かった。だが、確証を得たその時、全てを話してくれるんだろうな?」

紗女「は、はい、それはもちろん……」

蒼空「よし。じゃあ行くぞ」

紗女「……ありがとうございます」

蒼空「俺は何もしてないぞ。さぁ、さっさと来い」

紗女「は、はい!」

月夜 2010年07月09日 (金) 13時25分(56)
題名:新世界5(第五章)

月夜「白月、白月」

白月「何?」

月夜「そういやさ、昨日私のせいで挫いちゃった足、もう治った」

白月「え? あぁ、言われるまで忘れてたわ」

朱蒼「忘れるくらい良くなったのなら、もう問題はなさそうね」

月夜「良かった〜」

白月「貴女、そんなに心配してくれてたの?」

月夜「そりゃそうよ。だって、私がこかせちゃったせいで、こんなことになったんだから」

白月「月夜……」

月夜「それに、これでようやく負い目もなくなったってもんよ。肩の荷が降りた気分だわ」

白月「……」

鏡架「そんなこと、わざわざ言わなくていいのに……」

春「口は災いの元ってのは、もはやあいつのためにある言葉だな」

白月「……ありがとうなんて言って、損したわ」

月夜「ん? 何か言った?」

白月「い〜え! 別に何も!」

月夜「? まぁ、いいや。それじゃ、空も明るくなってきたことだし、そろそろ移動しない?」

朱蒼「ダメよ」

月夜「どうして?」

メカ「そこで伸びてる奴をどうするんだ?」

艦隊「……」

月夜「あ……でも、これは春ちゃんのせいなんだから、春ちゃんがおぶればいいんじゃない?」

春紫苑「僕の? 何を言ってる。トドメをさしたのはお前だろう」

月夜「う……そ、それは……」

春「まぁ、こいつが目を覚ますまでは、ここを動かない方が良いだろう」

マヤ「だな。それじゃあ、俺は明るい内にちょっとそこらへんを散策してくるよ」

月夜「あ、私も……」

朱蒼「貴女は止めときなさい。昨日の疲れが残ってるでしょう?」

月夜「そんなことないよ〜。あれだけ寝たんだから、もう元気そのものだって」

春「現役看護婦長が止めてるんだ。素直に止めておくんだな」

月夜「え〜、でもぉ……」

朱蒼「月夜ちゃん」

月夜「……はぁい」

マヤ「それじゃ、行ってくるよ。直ぐに戻ってくる」

メカ「マヤ」

マヤ「何だ?」

メカ「今更わざわざ言うこともないだろうが……気をつけろよ」

マヤ「……あぁ」

月夜 2010年07月09日 (金) 13時26分(57)
題名:新世界5(第六章)

蒼空「ふぅ……」

紗女「疲れましたか? 少し休みます?」

蒼空「いや、いい。まだ歩ける」

紗女「ですが……」

蒼空「大丈夫だ。あいつらから離れるんだろう? なら、こんなところでぐずってる訳にはいかない。違うか?」

紗女「……そうですね。では、無理せず急ぎましょう」

マヤ「お、いたいた」

蒼空&紗女『っ!?』

マヤ「そう警戒するなよ。別に捕って食おうなんざ思ってないぞ?」

紗女「……ですが、私たちの後を尾けたのは事実でしょう?」

マヤ「ん……まぁ、そりゃそうだが……」

紗女「何故、わざわざ追ってきたのですか?」

マヤ「何故って……こんな得体の知れないおかしな世界で、誰か見つけたら何かしら話しかけたくなるのが人情ってもんだろ? それに、何故ってのは寧ろこっちのセリフだぜ」

紗女「……何?」

マヤ「陰で俺たちのことを見ておきながら、どうして黙ったままあの場を去ったんだ? 自分で言うのもなんだが、どこからどう見たって悪人の集まりには見えなかったろ?」

紗女「……戯けたことを」

蒼空「紗女……?」

紗女「あなた方は何も知らないようですから深くは語りませんが、私たちはあなた方と馴れ合うつもりはありません」

マヤ「何故だ?」

紗女「話す義務も義理も、必要さえありません。第一、話したところで理解できるはずもありません」

マヤ「そいつはどうかね? 俺たちはあんたらよりここに居て長い。理解し難い現実を受け入れることには慣れてる」

紗女「……これ以上貴方と話すことはありません。早く、お仲間の元へ戻ってはいかがです? ……尤も、いつまでそのお仲間ごっこが続くのか、知りませんけどね」

マヤ「……何? おい、どういうことだ?」

紗女「さっきも言ったはずです。話すことはありません、と。さぁ、さっさとお戻りになってください。さもなくば……」

蒼空「……止めろ、紗女」

マヤ「さもなくば……どうするんだ?」

紗女「力ずくでも……!」

蒼空「止めるんだ!」

紗女「ぼ、坊っちゃん……?」

蒼空「お前は何をしてるんだ! 彼らがまだ心許せる相手かどうか分からないから、一旦距離を置くだけというのならまだ理解もできる。だが、相手のことを知ろうともしない内に拒絶し、あろうことか傷付けようなんていうのは絶対に間違ってるぞ!」

紗女「で、ですが……」

蒼空「じゃあ、彼が危険だという証拠はあるのか!? 言ってみろ!」

紗女「それは……」

蒼空「……頼む、紗女。もう……止めてくれ……」

紗女「……分かりました」

蒼空「ありがとう……」

紗女「はい。……誠に申し訳ありませんでした。私としたことが、少し攻撃的過ぎました。どうか、ご無礼をお許しください」

マヤ「いや、構わないよ。……で、どうする? 色々訳ありなようだが、良かったら……」

紗女「……すみません。それは、やはり遠慮しておきます」

マヤ「そうか。分かった。それじゃ、気を付けてな」

紗女「あなた方も」

マヤ「あぁ……っと、忘れるとこだった。ほら」

――ヒョイ。

蒼空「っと……えっ……」

紗女「これは……」

マヤ「覗き見趣味はないんで中身を見ちゃいないが、大切なものなんじゃないか?」

蒼空「あ、あぁ……だが、一体どこに……」

マヤ「お前さんたちの気配を感じた草むらの、すぐ近くに落ちてたよ。多分、チェーンが老朽化して切れたんだろう」

蒼空「そうか……すまなかった。わざわざありがとう」

マヤ「ん。これは貸し一つってことにしとくよ。それじゃ、またどこかでな」

紗女「……」

蒼空「……紗女」

紗女「……行きましょう、坊っちゃん」

蒼空「あぁ……」

月夜 2010年07月09日 (金) 13時27分(58)
題名:新世界5(第七章)

???「お前も嫌われたもんだな」

マヤ「まったくだよ。あそこまであからさまに敵対心むき出しにされるとは、思いもしなかった。っていうか、お前はまた覗き見か? 良い趣味してるな」

蒼竜「何言ってんだよ。俺が見てたことくらい、お前だって最初から気付いてたろ? 見られる側に自覚症状がある場合のそれを、覗き見とは言わねぇよ」

伽藍「……」

マヤ「ん? その娘は何だ? お前の子供か?」

伽藍「★○▼※◇£$!!?」

蒼竜「バ、バカ、違ぇよ! 伽藍っていう奴で、俺たち同様、いつの間にかここに落とされたらしい」

マヤ「ふぅん……で、俺たちの所にくることは拒んだってのに、この娘とは一緒に行動してるのか?」

蒼竜「何言ったって、俺の傍から離れないんだ。仕方ないだろ」

マヤ「えらいなつかれようだな。それに比べて、俺はまたしても嫌われたようだけど」

伽藍「……///」

蒼竜「お前がいきなりあんなこと言うからだろ。こいつ、人一倍恥ずかしがり屋なんだから」

マヤ「ははっ、可愛らしくて良いじゃないか」

伽藍「……」

――ギュッ。

マヤ「そんなに隠れないでくれよ。別に隙あらば襲おうって訳じゃないんだからさ」

蒼竜「口ではそう言っていても、お前が質の悪いロリコンじゃないって証拠はないからな」

マヤ「言ってくれるじゃないか。じゃあ何か? 今ここで、自分の性癖を暴露しない限り、その娘は俺と話してくれないってか?」

蒼竜「……お前は変態か」

マヤ「まぁ、それはそれとして置いといてだ。さっきあいつにも言ったことだが、お前、俺たちと行動を共にする気は……」

蒼竜「ない」

マヤ「即答かよ。なんでだ?」

蒼竜「俺と一緒にいて、お前たちに得は一つとない。第一、俺は群れるのが好きじゃない」

マヤ「お前が一緒にいてくれれば、俺たちとしても大分心強いんだがなぁ」

蒼竜「気持ちは嬉しいが、首を縦に振るつもりはない。悪いな」

マヤ「そうか。まぁ、今の状態でも十分頼もしいから、それで良しとするか」

蒼竜「……知りつつ気付かぬフリとは、やっぱり質悪いな、お前」

マヤ「何のことやら」

蒼竜「しらばっくれやがって……まぁいい。それじゃ、俺たちは消えるぞ」

マヤ「あぁ。ストーキングに飽きたらいつでも出てこい。歓迎してやるよ」

蒼竜「人をストーカー呼ばわりしてんじゃねぇよ。じゃあな」

伽藍「……さよなら」

――ガサッ。

マヤ「ったく……また厄介な輩がやってきたもんだ。これ以上のゴタゴタは遠慮したいんだがな……」

月夜 2010年07月09日 (金) 13時27分(59)
題名:新世界5(第八章)

艦隊「ぬぬぅ……」

月夜「むむぅ……」

白月「二人とも、長考が過ぎるわよ。さっさと決断なさい」

月夜「真剣勝負においては、微かな油断も命取りになるってことが分かってないみたいね。これだから無抵抗主義な軟弱医学生は困るわ」

白月「医学を学ぶ者全員が軟弱みたいな言い方、しないでもらえるかしら。ほら、いい加減決めなさいよね。どんなに目を細めたって、相手のカードが透けたりしないんだから」

艦隊「くっ、もう少し待て……もう少しで、俺の心眼が……」

月夜「私も、額に宿る第三の目が……」

白月「あんたらに宿ってるのは、目ならぬ馬鹿の芽だけよ。……あ、それはもうとっくに開花して満開だから、芽とは言わないかしら?」

鏡架:……さりげなく言うこと酷いなぁ……。

朱蒼「……で、どうするの、お二人さん? ベットオアドロップよ」

艦隊「くっ……ここで引いちゃあ、男が腐るってもんよ! 俺は行くぜ! ベットだ!」

月夜「むぅ、艦隊風情が、生意気にも男見せてくるじゃない……。えぇい! ここで引いちゃ、私も女が腐るわ! 私もベット!」

白月「……どうでもいいけど、そこは“腐る”じゃなくて“廃る”よ?」

鏡架「し、白月さん、これ以上揚げ足を取らなくても……」

朱蒼「はいは〜い、一旦注目〜。……ってことは、そちらの賢明なお二人はしっかり降りたから、私の相手は月夜ちゃんと艦隊の二人ね」

白月「そうなりますね」

鏡架「私たちは大人しく身を引きます」

艦隊「よ〜し、そんじゃワイから行かしてもらいまひょか!」

月夜「おっ、出たなエセ関西人。どっからでもかかってこいや〜!」

艦隊「ワイの手札は……これや!」

白月「エースとクイーンのフルハウス……なかなか強いの持ってたのね」

艦隊「どや!? これに勝てるか!?」

月夜「……ふっ」

艦隊「な、何や、その既に勝ち誇ったかのような余裕の笑みは……」

月夜「いえいえ。流石は艦隊さん。強気に勝負を挑んできただけあって、なかなか良いカードを持っていらっしゃる。私、感心致しましたわ」

春紫苑「……急に似合わない喋り方をするな。気持ちが悪い」

月夜「あら、恥ずかしがらなくても良いじゃない。春ちゃんはどっちの私が好き?」

春紫苑「どっちも鬱陶しい。強いて言うなら、今のお前はその鬱陶しさの上に更に気持ち悪さが合わさってて、もはや見るに耐えん」

白月「で、肝心のあんたの手は何なの?」

月夜「ふふん、良くぞ聞いてくれた! 見よ、この芸術的手を!」

艦隊「なっ……ジャックのフォーカードだとっ!?」

月夜「やたーっ! 私の勝ちーっ! へへっ、今日はツイてるツイてる♪」

艦隊「バカな……バカなぁっ!!」

月夜「ふっふっふ……弱者は強者により搾取される対象でしかない。悲しいけどこれ、現実なのよね」

春「まぁ、その通りだな」

メカ「あぁ。事実だ」

月夜「でしょ? さぁ、とっとと掛け金全部……って、あれ?」

朱蒼「ん? どうしたの?」

月夜「いや、どうしたもこうしたも……なんで朱蒼さんが持ってっちゃうの」

朱蒼「だって、私の勝ちだもの。ほら」

月夜「……へ?」

艦隊「キングの……フォーカード……?」

朱蒼「そういうこと。ってことで、初戦は親の総取りよろしく」

月夜&艦隊『な、なんだってーっ!!?』

春「フルハウスにフォーカードが二組とは、初っぱなから相当熱いことになってるな」

月夜「ねぇ、何で!? 何でフォーカードで負けるの!? これで負けるとかあり得る!? 否っ!! あり得なああぁぁいぃぃっ!!」

メカ「とりあえず落ち着け。いつも以上に狂ってるぞ」

鏡架「あはは……さ、災難でしたね」

艦隊「フルハウスで勝負にもならないとか、ハイレベル過ぎるだろ……ところで、お二人さんはどんな手札やったん?」

白月「私はこの通り」

メカ「完全にバラバラ……ブタか」

月夜「やーい、ブターブター、白月のブ……タ……?」

白月「……」

月夜「……白月さん?」

白月「何でしょう?」

月夜「その手に持ってるのは……何?」

白月「見てわからない? じゃあ誰か、このバカに説明してやって下さい」

メカ「ま、注射器だわな」

春「だな」

月夜「いや、それは分かってるけど……何か、中でこの世ならざる色の液体がブクブク沸騰してるんですが……」

鏡架「あの……白月さん、これは一体……」

白月「あの娘を良くしてくれるとっておきの薬よ」

月夜「いっ!?」

白月「さぁ、腕を出しなさい。大丈夫、直ぐに済むから」

月夜「ちょっ、な、何がどう大丈夫だってのさ!?」

朱蒼「あら、そんなに白月さんに射たれるのが嫌なら、現役看護婦の私が代わりにやってあげましょうか?」

月夜「あ、そう? じゃあお願いしよっかな……って、するかぁっ!!」

春「ノリツッコミとしてはまだまだ次点だな」

春紫苑「お前、何の分析してるんだよ」

月夜「誰が射ち手でも嫌だから! そこ、そういう問題じゃないから!」

白月「こら、暴れないの。上手く射せないでしょ」

月夜「いーやーだーっ! ごめん! ホントごめんなさい! もう二度とブタとか言わないから、それだけは止めてーっ!」

白月「……本当でしょうね?」

月夜「ほ、ホントもホント! ワタシ素直、嘘ツカナイアルヨ!」

白月「貴女、どこの人間よ。錯乱し過ぎでしょう……はぁ、まぁいいわ。次は本当に射しますから、口には気を付けなさい」

月夜「い、いえっさー!」

春「ところで白月よ。その注射器の中に満たされてる怪しい液体は、実際のところ何なんだ?」

白月「ちょっとしたお薬ですよ。春さんと言えど、中身は秘密です」

春「そうか……」

春:……気になる。

艦隊「そ、そういえば、鏡架はどんな手だったんだ」

鏡架「え? 私ですか? あはは、私も白月さんと同じく、役なしですよ。ほら」

艦隊「なるほど、確かにバラバラ……え?」

月夜「……バラバラ?」

白月「……鏡架さん」

鏡架「はい?」

白月「貴女、ポーカーのルール知ってます?」

鏡架「え? はい。同じ数のカードを多く集めたらいいんですよね?」

朱蒼「ん〜、ちょっと違うわね〜」

鏡架「あれ? 違うんですか? さっき、月夜さんにそう教えてもらったんですけど……」

白月「……またアンタ?」

月夜「わーっ! ごめんなさい! ごめんなさーい! だから、注射だけは勘弁してーっ!」

メカ「えらい怯えようだな」

春「あんな得体の知れない薬物を取り出されちゃ、誰だってああなるさ」

朱蒼「鏡架さん、ポーカーっていうのはね、ただ数を揃えるだけじゃなくて、他にも数が順番に並んでるストレートと、マークが全部一緒のフラッシュっていう役があるのよ」

鏡架「あ、そうなんですか? じゃあこれは……両方?」

朱蒼「そう。だから、ストレートフラッシュって役なの」

鏡架「へぇ〜、そうなんですか。強いんですか?」

白月「えぇ。ジョーカーがない以上、最強と言っても過言ではない手札ですよ」

鏡架「ということは、下りなきゃ私が勝ってたんですか?」

朱蒼「そういうことね」

鏡架「あらら、残念です。月夜さん、ルールはちゃんと教えて下さいよ〜」

月夜「あ、う、うん……」

メカ「……めちゃくちゃなポーカーだな」

春「あぁ、こんなに場が荒れるのも珍しい」

マヤ「うぃ〜、帰ったぞ〜……って、何やってるんだ?」

メカ「おぉ、お帰り。見ての通り、あちらは女性陣とM男でトランプに興じているところさ」

マヤ「トランプって……どこにそんなもん……」

メカ「あぁ、暇潰しのちょっとした遊び道具くらいなら、これまた俺の標準装備さ」

マヤ「お前、色々と備えすぎだろう……あぁ、そうだ、春よ」

春「なんだ?」

マヤ「ちょっと話があるんだが、今時間いいか?」

春「俺に話? 別に構わんが……一体何の話だ?」

月夜「くそーっ! またやられたーっ!」

艦隊「なんでや!? なんでワイのエースのスリーカードが、こうも簡単にあしらわれるんや!? 納得いかん! 朱蒼はん、あんたイカサマしてるんやないやろな!?」

朱蒼「あら、失敬ね。そんなことしてないわよ。第一、もししてたとしても、そのイカサマを見抜けないようじゃあ、貴方もまだまだってことじゃない?」

艦隊「な、なんやとーっ! 月夜、凝視しろ! カードを混ぜるとこから配るところ、更には手札を開くその瞬間まで、目ん玉見開いて凝視するんや!」

月夜「合点承知! かかってこいやーっ!」

マヤ「……ここじゃなんだから、向こうで話すよ」

春「……あぁ、わかった。メカ、春紫苑、ここは任せたぞ」

メカ「了解」

春紫苑「あぁ」

月夜 2010年07月09日 (金) 13時28分(60)
題名:新世界5(第九章)

マヤ「さて、この辺りでいいか」

春「で、何なんだ?」

マヤ「単刀直入に聞くぞ。お前さん、この世界について何か知ってるんじゃないのか?」

春「……何故そう思う?」

マヤ「勘だ」

春「なんとも非論理的な答えだな」

マヤ「で、どうなんだ?」

春「そうだな……答えはイエスでもあり、ノーでもあるといったところか」

マヤ「なんだそりゃ。えらく矛盾した答えだな」

春「だが事実だ。確かに、この世界について、お前たちの知らない何かを知っていることは認める。しかし、その知識が絶対の真理であるかどうか、俺には知る術がない。ならば、それは本当の意味での知ではないだろう?」

マヤ「何言ってんだよ。この世に絶対の真理なんて、何一つとないさ。昨日、時刻表通りに電車が来たからって、今日も絶対そうなるとは限らない。今日、商店街の一角にて繁盛していた魚屋が、明日には潰れているかもしれない。太陽だって、いつも当たり前のように頭上で輝いているが、未来永劫それが続くかと問われれば、そんなことは決してない。な? 元あった世界でも、そんな真理なんてものは一つもないんだよ」

春「それももっともだ。だが、話すわけにはいかないな」

マヤ「何故?」

春「さっきも言ったように、ただの予測でしかないことを軽率に話し、皆を混乱させるわけにはいかない。それに……」

マヤ「それに?」

春「俺自身、それが真実だと思えないんだ」

マヤ「どういうことだ? 自分で自分が信用できないってことか?」

春「その通りだ」

マヤ「そうか……しかし、いつまでも自分一人で抱え込んでいたところで、その予測が確信に変わることはないだろう」

春「だろうな。だからといって、皆に話したところで何も進展はしない。その時が訪れるまで、予測の範疇を超えることはない……これは、そういう問題だ」

マヤ「……わかった。じゃあこうしよう」

春「?」

マヤ「お前の秘密を聞き出す代わりに、俺もお前に隠している秘密を明かそう」

春「それは、お前が昨日目覚めた力と、それに伴ってお前の中に、自分以外の誰かが突如として発現したっていう秘密か?」

マヤ「なっ……お前、何でそれを……」

春「知ってるさ。それが、俺の役割らしいからな」

マヤ「役割って……なんだよ、それ」

春「言葉の通りさ。俺という存在に与えられた役柄、言い換えれば、使命といったところか」

マヤ「ふざけたことを言うな。これはゲームじゃないんだ。俺たちは今、こうして生きている。右も左も分からない狂った世界に落とされながらも、毎日を必死に生き抜いている。そんな俺たちに、役割なんていう後付けの何かはない。違うか」

春「あぁ、その通りだ。お前たちは皆、一度しかない今を必死に生きる、儚くも美しく輝かしい命だ。第三者の義を欠いた脚本に踊らされる必要はないし、そんなことはあってはならない」

マヤ「その言い方だと、お前は何度となく生きるという行為を繰り返しているように聞こえるな」

春「いや、そんなことはないさ。俺が俺として生きるこの道は、皆と同じように一度きりしか歩めない一方通行だ」

マヤ「じゃあ、さっきの言葉はどういう意味だ? どこからどう聞いても、俺たちとお前では違うという風にしか聞こえなかったぞ」

春「違うと言えば違うし、違わないと言ってもそれはそれで語弊はない」

マヤ「……やっぱ、詳しく説明してもらう必要がありそうだな」

春「何度も言ってるだろう。話すわけにはいかないと」

マヤ「だが、話してもらわない限り事態は何一つとして進展しないだろう」

春「いや、事態は確実に進展しているよ。それが果たして好ましい方を向いているかどうかは、分からないけどな」

マヤ「それは、俺のこの得体の知れない力も含まれているのか?」

春「あぁ。ちなみに言うと、それはお前だけじゃない。他の連中も、お前のようにはっきりと覚醒してはいないが、皆水面下で力に目覚めつつあるようだ」

マヤ「あいつらにも、俺と同じような力が?」

春「そうだ。お前のそれとは種類が違うが、根源にあるものは全て同じだよ」

マヤ「……お前が、今胸の内に抱えている秘密を、俺たちに打ち明けてくれるのは、俺たち全員がその力とやらに目覚めてからか?」

春「……どうだろうな。そうなるかもしれないし、それよりも早くなるかもしれない」

マヤ「どちらにせよ、その時がくるまで、俺たちには何も話せないか?」

春「……そうだ」

マヤ「……わかった。それじゃ、話はここまでだな」

春「……すまないな」

マヤ「謝るなよ。俺はお前じゃないんだ。お前がどんな苦しみを抱えているのかも知らない俺に、お前を責める権利はないし、責めようとも思わない」

春「……」

マヤ「ただ、これだけは言っとく」

春「?」

マヤ「まだ、お前と知り合って日も浅いが、俺はお前のことを信じてる。無論、お前だけじゃない。他の皆のことも、俺は信じてる……仲間として。そのことだけは、心に留めておいてくれ」

春「……あぁ」

月夜 2010年07月09日 (金) 13時29分(61)
題名:新世界5(第十章)

鏡架「さぁ、皆さん、いかがいたしますか?」

朱蒼「ん〜、普通なら勝負いってもいい手なんだけど……相手が貴女さんだと、ちょっとね〜」

白月「最低でもエースのスリーカードくらいはないと、てんで勝負になりませんものね……」

月夜「鏡架さんがこんなにギャンブル強いとは、夢にも思わなかったよ……」

艦隊「これで一切イカサマしてないんだから、末恐ろしいよな……」

鏡架「インドア派だったもので、こういったカードゲームは昔からよくやってたんですよ」

月夜「なのにポーカー知らなかったの?」

鏡架「やるのは、専らおいちょカブとかブラックジャックばっかりだったもので」

朱蒼「根っからのギャンブラーってわけね……ダメ。やっぱり下りだわ」

白月「私も下りるわ」

月夜「突っ張りたいところではあるんだけど、勝てそうにない戦はしない主義なんでね」

艦隊「残念だけど、俺も……ん?」

鏡架「? どうしたんですか?」

艦隊「あ、いや……なんでもない」

月夜「で、艦隊はどうするの? やっぱり下り?」

艦隊「いや……俺はちょっとついていってみるぜ」

鏡架「……じゃあ、もう一つベットです」

艦隊「なら、俺も」

朱蒼「行くわね、貴方」

白月「いつになく強気ですね」

艦隊「ちょっと、ね」

鏡架「……では、ここでコールです」

艦隊「よし。じゃあ、俺の手を見せるぜ」

月夜「どれどれ、どんな強い手だったのかな〜……って、え?」

白月「2の……ワンペア?」

朱蒼「そんな手で勝負しようだなんて、貴方もなかなか無茶するのね」

艦隊「ははっ、まぁ、勝負は乗るか反るかの駆け引きが大事だからね。さぁ、鏡架よ。手を見せてもらおうか?」

鏡架「……」

――パサッ。

月夜「あれ? どうしたの、鏡架さん」

鏡架「……やりますね、艦隊さん。私の完敗です」

朱蒼「……数字も柄も完全にバラバラ……今度こそ、正真正銘の役なしね」

白月「ってことは、あれだけ煽ってブラフだったということですか」

鏡架「流れからいって、騙せるかなと思ったんですけど……いやはや、なかなかそう上手くはいきませんね」

艦隊「っしゃー! ようやく初勝利だぜー!」

月夜「おぉー! やるじゃん!」

朱蒼「それにしても、こんな手でよく勝負しようなんて思ったわね」

白月「今までの彼女のツキを見てたら、どうしてもしり込みしてしまいそうなものですが……」

艦隊「いや〜、いつまでも引いてるわけにはいかないからな。どこかしらで勝負を仕掛けないと」

鏡架「さぁ、次は艦隊さんの親の番ですよ」

艦隊「あ、そっか。よ〜し、今までの負け分、一気に取り返してやんぜ!」

鏡架「ふふっ、そうやって勢い付いていられるのも、今のうちだけですよ……」

月夜「黒っ!? ……鏡架さんって、こんなキャラだったっけ……」

朱蒼「勝負事になると、隠れていた本性が露になるっていうのはよくあることよ。さて、私もそろそろ本気を出そうかしら」

白月「本気も何も……ポーカーに必要なものなんて、運だけじゃありませんか?」

朱蒼「さぁて、一概にそうとも言えないんじゃないかしら? ……ねぇ?」

鏡架「……えぇ、そうですね」

月夜&白月:うわ〜……。

月夜 2010年07月09日 (金) 13時30分(62)
題名:新世界5(第十一章)

紗女「……」

蒼空「すぅ……すぅ……」

紗女「……何用でしょう?」

――――

紗女「……居るのでしょう、そこに。出てきたらいかがです?」

蒼竜「……気配は絶っていたつもりなんだが……よく気付いたもんだ」

紗女「……で、ご用件は?」

蒼竜「ただの観察だ」

紗女「観察?」

蒼竜「あぁ。お前らが俺の捜している奴らかどうか、俺の敵かどうかを確かめるためのな」

紗女「そうですか……して、その結果は?」

蒼竜「聞きたいか?」

紗女「えぇ、是非。私の勘が正しいかどうか、その証明になりそうですから」

蒼竜「言ってくれるじゃないか。俺としても、お前の勘とやらが弾き出した答えを、是非聞きたいところだ」

紗女「では、教えて差し上げましょうか? ……行動をもってして」

蒼竜「……望むところだ」

紗女「……」

蒼竜「……」

蒼空「ん……んぅ……?」

伽藍「……」

紗女「……と、言いたいところですが、今は止めておきましょう」

蒼竜「……そうだな」

紗女「ですが、次はありませんよ?」

蒼竜「それはこっちのセリフだ。……お前がどんな牙を隠し持っているのか、興味が湧いたよ」

紗女「貴女みたいな根っからの野獣に、牙だのなんだの言われたくはありませんね」

蒼竜「言ってくれるぜ。さぁ、戻るぞ、伽藍」

伽藍「……はい」

蒼空「紗女……? 今のは……」

紗女「いいえ、何でもありませんよ。坊っちゃんは、安心してお休み下さい」

蒼空「……分かった」

月夜 2010年07月09日 (金) 13時30分(63)
題名:新世界5(第十二章)

艦隊「ん〜……」

メカ「どうしたんだ? 奇妙な唸り声を上げて」

マヤ「そのカードがどうかしたのか?」

艦隊「あ、いや、大したことじゃないんだけど……ほら、さっきまでポーカーやってたろ、俺たち」

春「あぁ、大分白熱してたようだったな」

マヤ「で、それが何か?」

艦隊「いやな、一瞬だけだったんだけど、カードが透けて見えた気がしてさ」

メカ「透けて見えた?」

艦隊「あぁ。何か相手の手札が見えたんだよ」

メカ「それは、もちろんカードの裏側からってことだよな」

艦隊「そりゃそうさ。自分の手札をみすみす相手にバラす奴がどこにいるんだよ」

メカ「ん〜……気のせいなんじゃないか? 今は見えないんだろう?」

艦隊「まぁな。あの時、本当に一瞬だけだ。やっぱり気のせいなのかなぁ……確かに見えたような感じがしたんだけど……」

春「……」

マヤ「……なぁ」

春「何だ?」

マヤ「俺が何を聞かんとしてるか、予想はついてるだろう?」

春「まぁ、な」

マヤ「あれが、あいつの力ということか?」

春「そういうことだ。まだ完全に目覚めたというわけではなさそうだが」

マヤ「そうか……ところで、お前には誰がどんな力に目覚めるか分かるのか?」

春「あぁ」

マヤ「じゃあ、他の連中はどんな力なんだ?」

春「時が来れば、いずれ分かることだ。今知ったところで、何ができるということでもないだろう?」

マヤ「まぁ、そうだけど……」

春「とりあえず、今現在ではっきりと覚醒しているのは、この中ではお前だけだ」

マヤ「この中では……ねぇ。ってことは、他の奴らの中にも覚醒している輩がいると?」

春「そういうことだ」

マヤ「なるほど。ところで、お前はどうなんだ?」

春「俺?」

マヤ「お前自身には、どんな力があるんだ?」

春「あぁ、そういうことか。俺にお前たちのような特別な力はないよ」

マヤ「なんだ、それじゃあ誰も彼も全員にこの奇妙な力があるわけじゃないのか」

春「いや、それは俺だけだ。俺以外は全員、ただ一人の例外なく力は存在する」

マヤ「何でお前だけなんだ?」

春「言ったろ? 俺の役目は知ることだって」

マヤ「……またそれか」

春「型にはめられた役を背負わされているのは、この世界じゃ俺だけだ。お前たちにそんなものはいから、安心しろ」

マヤ「んなこと言われて、何をどう安心しろってんだ。第一、お前は知ることが自分の役目とか言ってるが、実際どれくらいのことを知ってるんだ?」

春「どれくらい……ねぇ。全てに限りなく近いが、真理からは果てなく遠いくらい、とでも言っておこうか」

マヤ「何だそりゃ。博識なんだか無知なんだか、さっぱり分からん」

春「ははっ、まぁ細かいことは気にするな。適当言ってるだけだから」

マヤ「とぼけた奴だな。こっちは真剣に話してるってのに」

春「そんなことはないさ。嘘は一つも口にしてないよ」

マヤ「ふーん……ま、俺としても、無理に聞き出すつもりはないから構わないんだが」

月夜「あっ! ねぇ、みんなー!!」

白月「いきなり騒々しいわね〜。一体どうしたってのよ」

月夜「空だよ、空! 今度は緑色の月が浮かんでるよ」

朱蒼「あら、本当ね。目に優しい月だわ」

春紫苑「光が強いせいか、緑というよりは新緑色に近いな」

鏡架「なんだか、今回は純粋に綺麗な月ですね。見惚れてしまいそうです」

メカ「へぇ、淡い緑の光を放つ月か。案外悪くないもんだな。なぁ?」

艦隊「……」

メカ「お〜い、聞こえてるか〜?」

艦隊「……え? あ、ごめんごめん、聞いてなかった」

メカ「お前、大丈夫か? いつにもまして変だぞ」

艦隊「おいおい、その言い方だと、俺がいつも変みたいじゃないか」

春紫苑「違うのか?」

月夜「違うの?」

白月「違うのかしら?」

朱蒼「違わないでしょ?」

メカ「違わないな」

艦隊「……てめぇら、いつか絶対地獄見せっかんな」

鏡架「あはは……」

春「……」

マヤ「……」

月夜 2010年07月09日 (金) 13時32分(64)
題名:新世界5(あとがき)


























もうつかれたよぱとらっs(ry















゜。゜(つ∀`)ノ゜。゜













はい、皆さんお久しぶりです。月夜です。


生きてると思います


いいのにコメは、心の内に留めておいてくれると助かります(管理人のメンタル面的に)


さて、今回で新世界も第5段。
新たなキャラとして、蒼空さんと紗女ことシャークさんが参入しました。

え?
正月ん時とキャラ違い過ぎる?
いやいや、根はおんなじですよ?
ただ、バカキャラはもうお腹いっぱいなんで、これ以上増やしたくなかっただけ……え?
どうせキャラ設定が曖昧だったから、正月の時は派手に迷走してただけだろって?


はっはっはっはっはっは。





















アーアーキコエナーイ(∩・ω・∩)















ボグァッ!(´Д月(〇―(`∀´#)
















これで勘弁してやってくだしあ(´・ω・`)


ところで、この前とある鞍氏とがっこで話をしたんですが。


鞍「新世界どうなってんの?」

月「試行錯誤と迷走を繰り返しながら、執筆しとるよ」

鞍「あれさー」

月「何?」














鞍「終わるの?」



月「大丈夫。私は途中で作品を投げ出さないドMタフネスに定評があるんだ」

鞍「ふーん。どっちにせよ、まだ序章も序章だよね。色々謎だらけだし」

月「まーねー」

鞍「後思ったんだけど」

月「今度は何さ?」













鞍「人増えすぎ」



月「それは私もオモテた」

鞍「大人気だねー」

月「まず、あんな人気出ると思ってなかった」

鞍「そりゃ、ちょっと言うだけで自分を小説のキャラにしてくれるんだから」

月「まだ人数増えそうな予感と悪寒でいっぱいです」

鞍「もういっそ殺しちゃえば?」

月「まさかの除名!? それは可哀想だろ〜」

鞍「一応“常連”用小説なんでしょ? なら疎遠な方から抹消していけば?」

月「酷ぇ……が、一理ある」

鞍「あ、後、アトリエのトップの構想考えてワードで送ったから、見といて」

月「もうアトリエの管理人でも や ら な い か」

鞍「黙れ」




とまぁ、こんな感じの会話に花を咲かせてますた。
ってわけで、今必にアトリエ改修中です。
これが読まれる頃には、ちょっとスッキリしたアトリエに生まれ変わっていることでしょう。

正直、こんなずぼらな現管理人より、彼の方がよっぽど管理人に向いているような気がしてなりません。
ホント、ダメダメな管理人ですいません(´・ω・`)


さて、管理人のダメっぷりを派手に露呈させたところで、今回のあとがきはそろそろ終わりにいたしましょうか。

この作品に関する感想及びゴルァ! は、下の「小説感想アンケート板」または「小説感想掲示板」、「月夜に吠えろ」の方までドゾー。


ここまでは、テスト期間真っ最中にインフルエンザを発症し、終了すると同時に鮮やかに全快した私、月夜がテストの結果に戦々恐々としながらお送りしました。


























オワタ\(^o^)/

月夜 2010年07月09日 (金) 13時33分(65)


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