鏡架「はいは〜い、皆さん手伝ってくださ〜い」
春「よし、俺はおせちを持っていこう。メカは人数分の取り皿を頼む」
メカ「分かった。マヤはテーブルの上を片付けてくれ」
マヤ「了解。あ、そういや誰か、煙草吸う奴いるか? 居ないなら灰皿も片すけど……」
蒼竜「あ〜、出来れば残しておいてくれるか? 食後に一服したいんでな」
マヤ「そうか。じゃあ残しておくよ」
白月「あら? 朱蒼さん、スルメってどこにやりました?」
朱蒼「スルメ? 確かさっき月夜ちゃんが冷蔵庫から出してたような……」
月夜「……ギクッ」
白月「……あんた、ちょっとこっち向きなさい……!?」
月夜「……」
白月「……何か言うことは?」
月夜「えっ、と……いや、美味しそうだな〜と思って見てたら、いつの間にかこんなに数が減っちゃっててさ〜。な、何でだろうね〜?」
白月「こんの……おバカッ! つまみ食いはやめなさいと、あれほど言ったでしょうっ!」
月夜「わ〜っ! ご、ごめんなさ〜い!」
春紫苑「まったく……いつもにも増して騒がしい奴らだ。雑煮一つまともに作れんとは、嘆かわしい」
艦隊「今に始まったことじゃないし、あの二人はあれくらい賑やかな方が、楽しくていいじゃないか。……ところで、お前何をしてるんだ?」
春紫苑「何をって……別に何もしていないが?」
艦隊「嘘つけ。何か、変なもん持ってたろ。ちょっと手を見せて……あれ?」
春紫苑「……納得したか?」
艦隊「おかしいな……確かに何か持ってるように見えたんだけど……」
春紫苑「頭だけでなく、遂に目まで悪くなったのか? 早くも末期症状だな」
艦隊「っんだとぉ!?」
春紫苑「何だ、怒るってことは、自覚症状ありってことか? いよいよもって救いようのない奴だ」
艦隊「うるせぇよ、バーカ」
春紫苑「語彙力の無さが顕著に表れた貶し方だな。嘆かわしい」
艦隊「バーカ、バーカ。お前の母ちゃんでーべーそー」
春紫苑「……ガキか、あいつは」
伽藍「ん……っと……?」
蒼竜「ん? 伽藍、何してるんだ?」
伽藍「あ……えっと……皆の分のお箸……用意しようかなって……」
蒼竜「おぉ、偉いじゃないか。……で、何でそんなに困った顔をしてるんだ?」
伽藍「あ、え……っと……あの……その……」
蒼竜「……箸が何本いるか、分からなくなったか?」
伽藍「……///」
蒼竜「仕方のない奴だな……。人数は全員で13人。箸は1人につき2本。じゃあ、全部で何本必要?」
伽藍「えと……2、足す2、足す2、足す2、足す2、足す……あ……」
蒼竜「どうした?」
伽藍「……指……足りない……」
蒼竜「……なるほど、そうきたか」
伽藍「……」
蒼竜「仕方ない、じゃあ、俺の指も貸して……って、それでもまだ足りないな。……あ、おい、マヤ」
マヤ「ん? 何だ?」
蒼竜「テーブルの片付けなんてもう終わったろ? 悪いが、ちょっと指を貸してくれないか?」
マヤ「指を? お前、俺のゴールドフィンガーを引きちぎるつもりか?」
蒼竜「違ぇよ。いいから来い」
紗女「坊っちゃ〜ん!」
蒼空「ん? 何だ?」
紗女「すいませ〜ん! ちょっと来てくださ〜い!」
蒼空「一体何……うぉ!?」
紗女「あ、坊っちゃん、来てくださいましたか、助かります」
蒼空「……紗女よ、これは……何だ?」
紗女「何って……鏡餅ですよ。見て分かりませんか?」
蒼空「そりゃわかるが……こんなバカでかい鏡餅、一体どうやって……」
紗女「ついさっき、餅天からクール天空便で届いたんですよ」
蒼空「……何だって?」
紗女「まぁ、細かいことは良いじゃないですか。とりあえず、扉を開けていただけませんか? これ、見た目通りすっごく思いんですよ」
蒼空「あ、あぁ、分かった……だが……」
紗女「ありがとうございます。それでは……」
――ガッガッ。
紗女「……あ、あれ?」
――ガツッガツッ!
蒼空「……そうなるよな、普通に考えて」
紗女「ぬぐぅ……も、餅の分際で生意気な……!」
――ガツンッガツンッ!
紗女「むむぅ……そぉいっ!!」
――ベキャッ!!
紗女「……あ」
――ガンッ!
蒼空「……」
――ゴロゴロゴロ……バキャンッ!
紗女「……」
蒼空「……一気にみすぼらしくなったな」
紗女「……う、うえぇぇぇん!」
蒼空「な、泣くんじゃない!」
紗女「だって……だって……一気にみすぼらしくなったって……うわあああぁぁぁぁん!」
蒼空「ち、ちょっと先端が欠けただけじゃないか。これだけ大きいんだ。まだまだ荘厳で立派な鏡餅だよ」
紗女「っく……えぐっ……ホ、ホントですか……?」
蒼空「あぁ、だからもう泣き止んでくれ……」
紗女「ヒック……は、はい!」
蒼空「ふぅ……バカの扱いも楽じゃないな……」
紗女「あぁ〜! い、今……今、私のことバカって言った……や、やっぱり私……う、うぅ……」
蒼空「だぁーっ! 悪かった! 俺が悪かった! だからもう泣かないでくれっ!」
朱蒼「は〜い、用意はできたかしら? それじゃ、皆座って〜」
月夜「春ちゃ〜ん、隣に座っても……」
春紫苑「断る」
月夜「ちょ、早ッ! なんでそんな拒絶すんのさ〜」
春紫苑「正月くらい静かな時を過ごさせろ。お前といたら、騒々しくてやってられん」
艦隊「月夜、今日くらい我慢してやれ。こいつの恥ずかしがり屋は、今に始まったことじゃないだろ」
春紫苑「だ、誰も恥ずかしがってなどいないだろう!」
月夜「な〜んだ、そうなんだ〜。んふふ〜、恥ずかしがらなくてもいいじゃ〜ん? 私と春ちゃんの仲じゃ……」
――クイッ。
月夜「……ほぇ?」
――グイッ!
月夜「はがっ!?」
白月「はいはい、貴女がKYなのは分かったから、そろそろ落ち着いて座んなさい」
月夜「なっ……こ、これは!? い、一体いつの間にっ!?」
白月「ついさっきよ……って言うか、そんなことにも気付かないなんて、貴女大丈夫?」
月夜「人を障害者扱いする……が……ぐはっ……!」
白月「暴れたら、即締め上げるんでよろしく」
月夜「ぐ……こ、この悪魔が……」
白月「なんとでもどうぞ」
艦隊「はははっ! そんな首輪付けられるなんて、月夜は間抜けだな〜」
春「……真性のバカだな」
マヤ「まったくもって……」
春紫苑「……その通りだな」
蒼空「……哀れな」
艦隊「? 皆、一体どうし、がっ……!?」
――ドサッ。
鏡架「……」
艦隊「ぐ……がが……」
鏡架「……」
紗女「き、鏡架さん……?」
鏡架「……え、あ、はい。何でしょう?」
紗女「えっと……やり過ぎじゃない?」
朱蒼「彼、どんどん青ざめてるわよ」
鏡架「へ?」
艦隊「……」
鏡架「あっ!?」
艦隊「がはっ! げほっ! い、息が……」
鏡架「ご、ごめんなさい!」
艦隊「お、俺を殺す気か……」
鏡架「すみません、つい……今度からは、もっと優しくしますから……」
艦隊「も、もっと……優しく……?」
蒼竜「……ダメだ、こいつら」
伽藍「……」
蒼竜「……ん? どうした、伽藍」
伽藍「……座布団……ない」
マヤ「あれ? 座布団足りなかったか? それじゃ、俺の使うか?」
伽藍「……いい……」
――ちょこん。
伽藍「……」
蒼竜「え?」
伽藍「ここがいい……」
蒼竜「ここって……おいおい、俺の膝は座る場所じゃ……」
伽藍「……ダメ……?」
蒼竜「あー……まぁ、別に構わねぇよ。その代わり、座り心地は保証しないぞ?」
伽藍「ありがと……」
蒼竜「ったく……」
マヤ「ふっ……」
蒼竜「な、なんだよ……その妙な含み笑いは……」
マヤ「いや。こうして見てると、歳の離れた仲の良い姉妹みたいだな〜と」
蒼竜「だ、誰が……」
伽藍「……///」
蒼竜「……お前が赤くなるな。俺まで恥ずかしくなる」
朱蒼「ん〜……まぁ、とりあえず皆各々の席には着いたみたいね」
月夜「それじゃあ、僭越ながら私が乾杯の音頭を……」
白月「取らんでいい」
月夜「ぐぇ」
朱蒼「はいはい、乾杯の音頭は私に任せなさいな。皆さん、目の前に杯がありますか〜」
皆『は〜い』
朱蒼「それじゃあ、ゴホン。え〜、新年最初のめでたき日、お日柄も良く、ただ1人の欠席者もなく今この時を迎えられたこと、とても喜ばしく思います。前年は皆さま方にとって、いかがなお年だったでしょうか? 終わり良ければ全て良しという方もいらっしゃれば、その反対の方、または徹頭徹尾全て良しという方まで様々でしょうが、今年一年が、各人一人一にとって素晴らしい年となることをお祈り申し上げながら、杯を交わしたいと思います。それでは……」
朱蒼「新年、明けましておめでとうございます」
皆『おめでとうございま〜す!』
朱蒼「今年もどうぞ、よろしくお願いします」
皆『よろしくお願いしま〜す!』
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