「……終わったか?」
「はい、博士」
「無事、転送完了いたしましたわ……」
「浮かない顔だな。まだ慣れないか?」
「当然ですわ。こんなこと……間接的に人を殺めているも同然ですもの……」
「……まぁ、言い方悪いけど、その通りっちゃその通りだよね」
「博士のことは尊敬していますし、これが必要なことだというのも理解しています……ですが、これだけは……」
「……潔癖症ですね。そんなことだと、世の中苦しいことばかりですよ」
「……貴方に言われなくとも、それくらいわかってますわ」
「ま、キレイなままいれるのは子供の時だけってことだね。誰だって、いずれは何かしら汚れた部分を抱えるようになる……それが大人になるってことよ」
「そう……かもしれんな」
「理屈はそうだと、頭では理解していても、心までそうはいかない。……人間ってのは、つくづく不便な生き物ですよね」
「……まぁ、中には頭も心もちゃらんぽらんで、何にも考えてなさそうな奴もいますけど」
「ふ〜ん。でも、もしそんな生き方ができるなら、きっと毎日幸せだろうな〜」
「あら。でしたら、私の直ぐ近くに、とても幸せそうな人がいますわね」
「へ〜。本当にそんな人いるんだ。羨ましい限りだね〜」
「私は全っ然羨ましくなんてありませんけどね」
「そうなの? ……もしかして、その人のこと嫌いなの?」
「え……あ、いえ、べ、別に嫌いというわけでは……」
「だったら、そんな全然〜なんて言って、冷たく当たらなくてもいいじゃない。どうせあんたのことだから、面と向かってもそういう態度なんでしょ?」
「そ、そう……なのかしら?」
「きっとそうだよ。ちゃんと好きなら好きなりに、優しく接してあげないと」
「なっ!? だ、誰が貴女みたいなバカを好きになんて……!」
「? いや、私じゃなくて、あんたのそのお友達の話なんだけど」
「っ!? そ、そんなことは私の勝手ですわ! 失礼します!」
――バタン!
「……変な奴〜」
「……前々から思ってはいましたが、相当鈍いですね、彼女」
「まぁ、昔からあんな調子だからな。気にするな」
「へ? 何か言った?」
『いや、別に』
「? 二人して変なの〜」
「変なのはお前だ」
「はえ? おじいちゃん、それどういう意味?」
「言葉通りの意味だ。さぁ、二人ともそろそろ仕事に戻れ」
「はい、わかりました」
「?」
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