――ピピピピピッ、ピピピピ、カチャッ。
「はいは〜い、こちら私、こちら私」
「こちら私なんて応答はありません。ちゃんと名乗りなさい」
???《……伽藍です》
「あの子の方が、貴女より断然しっかりしていてよ? 歳上の女として、恥ずかしくないのかしら?」
「うっさいわね〜。私はいつまでも若々しくがモットーなの。あんたはそんなんだから、実年齢より年増に見られるのよ」
「精錬された立ち居振舞いや落ち着きがあるから、大人びて見えるのですわ。貴女と違ってね」
「はぁ……伽藍ちゃん、将来こんな耳年増にはなっちゃだめよ?」
「伽藍さん、間違ってもこんな質の悪いガキみたいな大人になってはいけませんわよ?」
伽藍《……》
「……伽藍さん? いかがなさいました?」
「珍しくそっちから回線繋いでくれたのに、だんまりだなんてお姉さん悲しいなぁ」
伽藍《……あの》
「ん? 何?」
伽藍《……》
「貴方が自分から回線を繋いできたということは、何か話したいこと、もしくは聞きたいことがあるのでしょう?」
「そうなの?」
伽藍《……はい》
「なら、何でも遠慮なく言ってよ。私と伽藍ちゃんの仲じゃない」
伽藍《……》
「……ですが、もし言えないことなら、無理に言わなくてもいいですよ?」
「できれば、躊躇いなく胸中をぶちまけて欲しいとこではあるけどね〜」
伽藍《……》
「……」
「……」
伽藍《……あの》
「何?」
伽藍《私……役立たず……?》
「えっ!? が、伽藍ちゃん、今なんて……」
伽藍《……》
「……どうして、急にそのようなことを?」
伽藍《……別に。……ただ……そんな気がしただけ……》
「……」
「そ、そんなこと、あるわけ……」
「……えぇ、そうですわね。そうかもしれません」
伽藍《……》
「なっ!? ち、ちょっとあんた……」
「第一、自分からそんなことを聞くのですから、自分自身、少なからずそう思っているのでしょう?」
伽藍《……》
「自分で自分のことを役立たずだなどと言うのは、何かしら為すべきことを為していないと、自覚しているからに他なりません。そのような人を、有能な人材とは呼べませんわ」
「あんたねぇ! 少しは言葉を選んで……」
「貴女は黙ってなさい」
「うっ……」
伽藍《……》
「……ですが、私はそうは思いません」
伽藍《え……?》
「伽藍さんが何を思ってこんなことを聞いてきたのか、私には分かりません。ですが、一度深く考えてご覧なさい。今、貴方が考えている為すべきことは、本当に為さねばならないことなのかどうかを」
伽藍《……》
「私たちは、こちらから事の成り行きを見つめることしかできない、ただの傍観者でしかありませんわ。しかし、貴方は違う。その混沌とした世界の中で生きている、当事者の一人なのです」
伽藍《……》
「悲しいことですが、こちらから見ているだけの私たちには、貴方の気持ちは分かりません。ですが、だからこそ、私たちに貴方を束縛する権利なんてありません。何を気にすることもない。貴方は貴方のやりたいことを、やりたいようにやっていれば良いのではありませんか」
伽藍《やりたいことを……やりたいように……》
「えぇ。そんな貴方を、一体誰が責められると言うのです? ねぇ?」
「え……あ、う、うん! そうだよ! 人間誰だって、やりたいことをやるのが一番だよ!」
伽藍《……ありがとう》
「礼はよろしくてよ。貴方の悩みが解決したのなら、それが何よりですわ」
「何かまた相談したい事ができたのなら、いつでも話しなよ? 頼りになるお姉さんたちが、バッチリ解決したげるからさ♪」
伽藍《うん……それじゃ……》
「えぇ」
「またね〜」
――プッ。
「……ふぅ」
「んっふっふ〜……」
「? 何よ、ニヤニヤして、いつにも増して気持ち悪いわね」
「いや、普段ツンツンしてるくせに、優しいところもあるんだな〜って」
「私は元々優しい人間でしてよ。……そんなことより貴女、さっきさも当然のように私たちと言ってましたが、貴女はなんにもしてないでしょう」
「まぁまぁ、細かいことは良いじゃない。ささ、おじいちゃんたちが来る前に、ちゃちゃっと準備しちゃお」
「はぁ……」
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