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タイトル:絶対禁忌-沙羅双樹- 恋愛

05年に執筆した双恋SS。本当は六姉妹全部書いたのですが都合により二姉妹だけ収録。この話はまだ続きがあるように終わっていますが、続きは結局やらない方がいいと判断した為に執筆未定。

Sひかり 2009年01月08日 (木) 00時17分(5)
 
題名:第一話

沙「アイツが双樹の一目ぼれ相手か?」

双「沙羅ちゃん・・・もぅ・・・」

双樹は顔を赤らめながら反論した。


沙「じゃあ私は下で待っているから・・」

双「うん、すぐ戻るからね」

双樹は沙羅と分かれて病室へ向かった


今日、沙羅と双樹は町外れのある療養所に来ていた。
双樹が珍しく行きたいと言い出したからだ。

その目的とは・・・・

僕「あ、双樹ちゃん・・・」

双「大丈夫?お見舞いに来たよ」


彼はここの療養所の入院患者だ。
半年ほど前まではずっと一人だったけれど、
最近は双樹がたまに見舞いに来ている。


双「体は・・・・大丈夫なの?」

僕「うん・・・一応、療養って言う形だから」

彼はこの療養所に1年ほど入院している。


双「勉強中だった・・・?悪かったかな・・」


僕「そんなこと無いよ・・・親が勉強だのうるさかったから・・・ただの暇つぶしだし」


元々、体が弱かったため中学卒業と同時に
この療養所に来たという。

双「それじゃあ、また今度来るね・・」

僕「うん、またね・・・」


しばらく談笑した後、双樹は病室を出て行った。





沙「それにしても、このところ毎週行っているな・・・」

双「いいじゃない、あの人いつも一人なんだから」


沙「まあ、双樹が良いと言うなら・・・別に構わないけれど」




半年前、
親戚のお見舞いで双樹は彼と知り合った。
話しているうちに打ち解けたか、
よく見舞いに行くようになったらしい。

沙「さて、家に帰るぞ双樹」


二人はグルファクシの背に乗った。






双「あの人、お父さんもお母さんも忙しくて来てくれないんだって・・・・」

沙「そうなのか・・・」

双「最初、ロビーで私と会ったとき凄く驚いていたんだ・・」

沙「驚いていた・・・?」

双「よくわかんないけど・・・あの人優しいしそれに・・・」

双樹は言葉を詰まらせていた。

沙「いやいい、皆まで言わなくても・・・」





一週間後

沙「相変わらず遅いな・・・」

先週と同じように沙羅はロビーで双樹を待っていた


その時



ファンファン・・・・

沙「パトカーのサイレン?」


ジリリリリリリ・・・・!

非常ベルがけたたましく鳴り出した

『緊急事態発生!所内の患者さんは速やかに避難して下さい!』


沙「・・・・まさか、双樹に何か?!」

沙羅は急いで双樹のいる病室へ向かった


沙「・・・・双樹!」


するとそこには・・・


双「沙羅ちゃん・・・・!来ちゃダメ!」


男「・・ん?・・・な、もう一人いたか!」


沙羅が病室の入り口に立つと、
刃物を持った覆面男が襲い掛かってきた


双「・・・・沙羅ちゃん!」


沙「・・・ぐ・・・双樹を話せ!」


男「うるさい!お前もおとなしくしろ!」



沙羅は男に捕まり病室に連れ込まれた






警官「犯人に告ぐ!おとなしく人質を解放しなさい!」


男は警官の要求に応えなかった


沙「なるほど・・・・お前の部屋にいきなり入ってきたというわけか」


僕「うん・・・急に刃物を突きつけてきて・・・
  逃げる余裕も無くて・・・」

双「それで・・・そこに沙羅ちゃんが・・・」


沙羅と双樹は彼とともに病室に軟禁された状態だ。

男は手に包丁を持ち窓から、
入り口を包囲する警官隊を見ていた

男「いいか、俺が欲しいのは金とかじゃねえ!
  今から言う2人の人間をここに連れて来い!そいつらの名前は・・・」


沙「・・・人を呼ぶのか?どういうつもりだ・・」



すると・・・
男が放った言葉に彼は反応した


男「の2人だ!・・・今日中につれて来いよ!」


僕「え・・・・その二人って・・・」


双「知ってるの・・・?」


そして覆面男はふりむき・・・
覆面を取りながら言った


男「まさか・・・
  アイツにそっくりな女が二人もいるとはな・・・」



僕「あ・・・・!」

双「・・・え?!その顔・・・!」

3人は男の顔を見て驚いた





警官A「何?!犯人と被害者の両親が来てくれないだと!」

警官B「はい、忙しいとか動転しているようで・・・」

警官A「全く、最近の親は子どもを何だと思っているんだ」





彼「・・・やっぱり・・・兄さんだったんだ・・」

男はかぶっていた覆面をかぶりなおした


双「・・・・え・・・・なんで?」


動転していたのは双樹だけだった


沙「落ち着け、双樹・・・・」


彼「大体・・・声とかで分かってたけどさ・・・」


男「ふん・・・・・まあ何でこんなことしたかは分かるな・・・」


彼「うん・・・・でも効果はどうかな・・・」


二人は冷静に話していた


沙「すまないけど・・・説明してもらってもいいかな?」


男「・・・ああ、話の通り似てるな、
  わかった・・・説明しよう」





覆面の男は淡々と語った



この男が最初に呼んだ2人の人物は両親だった

仕事等が多忙なわけでもないにも拘らず、
見舞いにも来ない。
暴力を奮うわけでもないが、
進学や生活面で厳しい親に理解を求めるには、
こうするしかなかったと言うのだ


双「そう言えば、お父さんもお母さんも一度も見なかったね・・・」

沙「なるほど・・・大きな問題もなく改善することは出来ないからな・・・」




双「でも・・・・・・だからってお父さんやお母さんを心配させちゃ・・」


その言葉に・・・二人は顔を合わせて言った


男「見た目だけじゃ・・・・無かったな」


彼「うん・・・・似てる・・・」




双「・・・・・え?何が・・・?」



男「・・・実は・・・」


男が何かを言いかけた、その時





警官C「犯人に告ぐ!落ち着いて聞いてくれ!」

男「む・・・ちょっと待ってくれ」


警官C「残念だが、お前の頼んでいた両親は来ないそうだ・・・、
    しかし人質は解放しなさい・・・」



男「そうか・・・わかった、
  だがもう少し待て・・・!」


そう言うと覆面の男はこちらを振り返った


男「双樹とか言ったな・・・
  ウチの妹に・・・・そっくりだ・・・」


双「・・・・・・・え?!」


彼「うん・・・・最初は驚いたよ・・・・」


沙「そう言う・・・事だったのか・・・」



そして覆面の男は持っていた包丁を持ち上げた


男「アイツは・・・
  いつも優しかったな・・・・・」


彼「・・・・うん・・・・・あいつがいたから・・・だけど」



双「それで・・・その妹さんは・・」



双樹が言いかけると・・・覆面の男は包丁を自らに向けた


双「え・・・・?!何をするつもり・・・?!」

彼「・・・・兄さん?!」



男「どうやら・・・、
  ウチの親は俺らの事なんてどうでもいいようだな」


双「だからって・・・」


彼「確かに・・・、
  小さい頃からアイツしかいなかったけど・・・」


男「すまないな・・・
  今からやり直すことも出来ないし・・・、
  先に会いに行くぜ・・・」


双「・・・だからって・・・」


そして覆面の男は窓の外の警官隊のほうへ振り向いた


男「よく聞け!
  今から5分後に人質を解放する、
  だが・・・俺を捕まえることは出来ないぜ」

覆面の男は包丁を自分の腹へ向けた

警官D「な・・・バカな真似はやめろ!」


男「迷惑かけたな・・それじゃああばよ・・!」



彼「・・・・兄さん!」





刃が・・・・腹部を貫いた・・・



しかし・・・



双「・・・・・・え?!」



血を流して倒れたのは・・・包丁を持った男ではなかった・・・


男「・・・・・な、お、・・・お前」



彼「兄さん・・・・間に合ったみたい・・・だね」



沙「・・・かばって・・・・刺さったのか・・・」



男「おい!すぐに医者をよこせ!」


警官D「わかった!・・・誰でもいいから現場へ向かってください!」


避難していた医者や看護士が療養所に入っていった


双「しっかり・・・すぐお医者さんが来てくれるから!」


男は双樹に抱きかかえられた・・


彼「・・・双樹・・・・ちゃん・・・」


沙「無理はするな、傷に悪いから・・・」


男は双樹の顔に腕を差し出した


双「・・・・・あ・・・・これ・・・」


男の手首には・・・赤い切り傷が何本も引いてあった


彼「最初に会ったとき・・
  大好きだった妹がまさか・・・と思って驚いたよ」

沙「・・・その傷・・・・自分でやったものだな」


彼「暴力とか単身赴任とかあったわけじゃないけど、
  成績が悪いとか少しでも抜けたことをすると怒られて・・・そのたびに怖かった」


沙「多分、その後両親はまったく分かってなかったんだな・・・」


覆面の男が走って部屋に戻ってきた


男「担架に乗れ!そこの処置室で先生が待っているから!」



双「・・・ほら、早くしないと・・・!」


しかし、男は双樹の腕の中から降りようとしなかった


彼「双樹ちゃん・・・最後にいいかな・・・・」


双「・・・・え?」


そして・・・男は息を切らせて叫んだ・・・






彼「・・・・ごめん・・・・でも、
  後は・・・頼んだよ・・・・」


沙「・・・・・・・・お前・・・」





彼「さよなら・・・・グフッ・・・」





血を吐きながら・・・
双樹の顔にかけられていた腕が下りた




男「おい・・・しっかりしろ!」



沙羅が傷だらけの手首にそっと触れた


沙「・・・・・・ダメだ・・・・もう・・」


沙羅が首を振った・・・




双「そんな・・・そんな・・・
  何で?ずっと、一緒に生きていくって・・・いくって・・・・!」


沙「双樹・・・・」


双「起きて・・・・!お願い、起きて!・・・」


双樹は泣きながら・・
いつまでも叫び続けた・・・・・







一ヵ月後


双樹と沙羅は療養所の近くの海岸にいた



沙「アイツの兄は・・・少年院に入ったらしいな」


双「うん・・・・・」



沙「双樹に似てるって言う妹さんが事故してから、
  リストカットや非行に走り出したとか・・・」


双「私・・・悪いこと聞いたかな・・・」



双樹がうつむきながら胸に抱えた風呂敷を見つめた



沙「知らなかったから気にするな・・・
  それより早く済ませよう・・・・」


双「・・・・うん」





双樹は・・・海岸の傍の人工岩の前に立ちふたを開けた


双「色々ありがとう・・・
  私・・・何も出来なかったけど・・・」


双樹は涙をためながら男の遺骨を墓に納めた



沙「泣くな・・・あいつのためにも・・・」


双「大丈夫だよ・・・私は・・・」


双樹は墓を閉めながら自分の腹部を押さえてつぶやいた


双「ここに・・・もう一人の貴方がいるから・・・・・」



双樹の発言に沙羅は一瞬動揺した


沙「・・・まあ、アイツならいいか」

Sひかり 2009年01月08日 (木) 00時18分(6)
題名:第二話

ある病院の一室


双「鳥居先輩、お加減はどうですか?」


鳥「ありがとう二人とも、おかげで今は大丈夫よ」



ある週末の昼下がり、
沙羅と双樹の二人は顔なじみの先輩のお見舞いに来ていた



沙「この間はびっくりしました。
  先輩が急に倒れて入院したって聞いて・・・」


鳥「仕方ないわよ、
  テスト前で徹夜続きだったから・・・・」


双「それで・・・・・・・退院はいつ頃になるんですか?」



双樹がせかすように聞いてきた


鳥「そうね・・・・早ければ、来月の始めとか言われたけど・・・」



沙「・・・・・・そうですか・・・・・」



その言葉に沙羅は少し表情を曇らせた


双「・・・・?どうしたの?沙羅ちゃん」



沙「え・・・・あ、新学期に間に合うかなって・・・・」


沙羅はあわてて答えた

鳥「大丈夫よ、すぐに戻ってくるから・・。
  崇も心配だし・・・」




沙「えっと・・・・すみませんが、
  夕食の準備があるのでこれで・・・」


沙羅が口ごもりながら言った



双「もうそんな時間・・・、
  それじゃあ先輩、また今度来ますね・・・」


鳥「ありがとう、またね〜」


二人は病室を後にした





沙「双樹、そろそろ予約の時間じゃないのか?」


双「あ、もう4時半・・・・
  じゃあ行って来るね」


沙「先に帰っているから、バスの時間に間に合うようにな」



双樹は小走りに病院の受付に向かった



その後ろ姿を沙羅は寂しげに見つめていた





沙「あれから・・・・・4ヶ月か・・・・・」






しばらくして沙羅は出口へ向かった





1時間後

双「よかった・・・早く終わって・・・・」


双樹は診察を終え帰りのバスに乗っていた



双「あれ・・・・?今の・・・」


すると、窓の景色に見慣れた人物が映っていた



沙「・・・・それじゃあ、また来ます」


沙羅はあるアパートの前で男と立ち話をしていた



双「沙羅ちゃん・・・?いつもならとっくに帰っているのに・・・」






しばらくして、バス停に到着した時・・・・



沙「・・・・双樹、もう終わったのか?」


沙羅が買い物カゴを抱えてバスに乗ってきた


双「うん・・・・・・、
  沙羅ちゃんこそ何でここに?
  スーパーは2つ前のバス停から行っているのに・・・」



沙「・・・・レジが混んでて間に合わなくて・・・・、
  歩きながら次のバスを待っていたんだ・・・」


双「ふ〜ん、じゃあさっきの男の人は?」


沙「道を聞かれて・・・」


沙羅の口調はたどたどしかった




双『さっきの男の人・・・どこかで見たような・・・?』


双樹が考え込んでいると隣に座った沙羅が


沙「そ、それよりどうだったんだ?
  お腹の方は・・・?」


双「あ、順調だって・・・・。
  早かったら来年の春辺りとか言われたよ」


沙「そうか・・・・・今後の事考えないとな」


双「うん、でも一人だけでも何とかするから」


沙「そうか・・・・何かあったら言ってくれ」





その日の夜
夕食中に双樹が言い出した


双「沙羅ちゃん、料理上手くなったよね」


沙「そうか?まあ最近、双樹の代わりに私がやってるから
  少しはマシになったかもしれないけど・・・」



双「手伝ってもいいのに・・・・」


沙「いや、双樹は今大事な時期だろ。
  何かあったら大変だ」





次の日

双「沙羅ちゃん今日もおでかけかぁ・・、
  最近、毎日出かけてるなぁ・・・・・」



休日、沙羅は朝早くから出かけていた
双樹は安静にしろと言われ留守番していたが・・・・


双「TVも面白くないし、
  読む本もないし・・・・・暇だなぁ・・・」


双樹は膨らみかけた腹を擦りながら窓の外を見つめていた


双「そう言えば、先輩のお見舞いに行ってから沙羅ちゃん変わったような・・・、
  何かあったのかな・・・・?」





双樹はしばらく考えた後、立ち上がった








双「あ、沙羅ちゃんがスーパーから出てきた」


双樹は家を出て沙羅の後を追った

予想通り沙羅はスーパーに行った様だが・・・



双「あれ・・・?バス停を通り過ぎてどこに行くんだろう?」


沙羅は普段乗っているバス停を通り過ぎて行った

双樹はこっそり物陰を行き来して後をつけた



すると意外な光景が飛び込んできた


双「あ・・・・昨日のアパートに入って行く」



沙羅がアパートの中に消えていくのを確認して、
双樹はこっそりアパートの入り口前に立った



双「あれ・・・・?ここ先輩のアパートじゃない?」


そのアパートは双樹の記憶の中に存在していた

入院した先輩の住んでいるアパートだった



双「でも・・・誰もいないのに何のようだろう・・・?
  お使い頼まれた覚えもないし・・・」



疑問を持ちながら双樹はアパートに入って行った






階段を上がると入院中の先輩の部屋の前に沙羅が立っていた


双『・・・・・何の用だろう・・・?』



しばらくすると部屋の扉が開き、男が出てきた



男「やあ沙羅ちゃん、今日も来てくれたんだ」



沙「先輩の話を聞いて心配になって・・・」



双『昨日の男の人・・・・?何で先輩の部屋に』



双樹が不思議そうに見ていると


男「とにかく・・・入ってよ・・」


沙「はい、お邪魔します・・・崇さん」



双『あ・・・・崇さんって・・・ひょっとして・・・』



双樹は昨日聞いた先輩の言葉を思い出した



双『先輩の彼氏の人・・・・・
  何で沙羅ちゃんが?!』




戸惑っている双樹には気づかず、
沙羅は部屋の中に消えて行った





沙「・・・双樹・・・・・・全部見ていたのか・・・?」


双「・・・・うん・・・・沙羅ちゃんが入っていくところから・・・・」


沙「・・・・・そうか・・・・・」



二人の帰りのバス車内の会話はこれだけだった




家に帰ると、
沙羅は仕方なしに説明した




双「じゃあ、あの崇さんの世話に行ってたの?」


沙「ああ・・・、
  先輩も言っていた通り頼りない男だったよ。
  料理もろくに出来ない上に、
  四角い部屋を丸どころか×印にに掃くくらいだ」


双「何だかよくわからないけど・・・、
  それならそうと言ってくれればよかったのに」


沙「双樹はその体だろう。
  手伝わせるわけには行かない・・・」

沙羅はそういうと部屋を後にしようとした

しかし、


双「あれ・・・?そのチョーカー先輩と同じ・・」


双樹は沙羅の首元に光る星型のチョーカーに気づいた


沙「あ・・・、これは倉庫を掃除していたら見つかって・・・」


双「でも・・・、
  それ今年の夏の新作だって先輩が・・・」


沙「細かいことは知らない・・・」


沙羅は少々あわてたそぶりで話した




沙『アイツ・・・私にもこんな物を・・・・、
  まあ受け取ってやったけれど・・・・』



双「・・・?何か言った?」


沙「あ、いや・・・夕食を考えていただけだ」


沙羅はそう言って台所へ向かった





1週間後


双「よかったですね先輩、早めに退院できて」


二人は退院祝いに先輩の家に来ていた

鳥「ありがとう、これから忙しくなるから良かったわ」


沙「・・・・・え?忙しくって?」


沙羅は不思議そうに言った


鳥「そうそう、沙羅ちゃんはよく崇の世話に来てくれたって?」


沙「あ・・・・はい」


男「いや〜、本当に助かったよ」


鳥「コイツ、ホント家事とかからっきしだから」


先輩の言葉に双樹だけは笑っていた



すると沙羅が部屋を見渡して気づいた


沙「あの・・・・箱が多いですけど大掃除ですか?」


沙羅は部屋の周りにあるダンボールや袋詰めの荷物の多さに気づいた


双「あ・・・・そう言えば・・・」





その二人の言葉に先輩は突然口調を変えた





鳥「言ってなかったね・・・
  私達、来月ココを引っ越すの」




双「・・・え?!卒業したら近くで仕事探すって・・・」


双樹が驚いて言い返した


鳥「実はね・・・・」


先輩がささやくように言おうとすると


男「お前の口からは言いづらいだろう、俺が言う」





そう言うと崇と言う男はかいつまんで説明した





その日の夜


双「知らなかったね、先輩の恋人が大学の助教授候補だったなんて」


沙「ああ・・・・」


沙羅は寂しげに返した


双「福岡の系列校に助教授で転勤かぁ・・・凄い人だね」



沙「・・・・・・・・」




沙羅は何も言わなかった



双「先輩も一緒に行くって言うし・・・・、
  来月、見送りに行くよね」



沙「・・・・・・・・・・」





沙羅はその日一度も喋ることはなかった





一ヵ月後


二人は予定通り空港に見送りに来ていた

双「先輩・・・・手紙下さいね?」


鳥「もちろんよ・・・・それより沙羅ちゃんは?」


双「トイレに行くとか言ってましたけど・・・遅いなぁ?」


鳥「混んでるんじゃない?崇もお土産買ってくるとか言って遅いし」




その頃


男「これ・・・・最後に受け取ってくれるかい?」


崇と言う男は沙羅にあるものを手渡した



沙「これは・・・・口紅?」


男「俺、そういうのわからないから安物だけど・・・」


沙羅は空港の裏で男と会っていた


沙「いえ・・・・ありがたくもらいます・・・それと・・・」



沙羅が何かを言いかけると


男「そうだ・・・・今、塗ってみてよ・・・」



沙「え・・・・あ、こんな物初めてだから・・・」



沙羅は鏡を見ながら慎重に塗った



沙「これで・・・・いいんですか?」



沙羅が聞くと


男「沙羅ちゃん・・・」



沙「崇さん・・・?あ・・・」



男はそっと沙羅に顔を近づけてきた






数分後

鳥「遅い〜、何してたの?」


男「ゴメンゴメン、迷っててさ・・・」



双「そろそろ、乗らないと時間じゃ・・・」


鳥「あ・・・、ゴメンねバタバタしてて」


沙「いえ、いいんです・・・・・それに・・・」



沙羅が言いかけると



鳥「あ、それじゃあそろそろ行くから・・またね」


男「元気でね・・・沙羅ちゃん・・・それと・・・双樹ちゃん・・」



双「はい・・・先輩達もお元気で・・・」




先輩と男はエスカレーターに乗って消えていった





二人は展望台で飛行機を見つめていた



双「寂しいけど・・・・手紙くれるって言うし・・・・」

沙「・・・・・・・」



双「あれ・・・?沙羅ちゃん唇光ってない?」


沙「あ・・・・リップクリーム塗ったんだ・・・」


沙羅はずっと下を向いていたが。・・



双「・・・・?ちょっと、沙羅ちゃん?!」


すると突然沙羅は走り出した


双「沙羅ちゃん・・・・泣いてる・・・?」



双樹は沙羅の去り際の顔に涙が浮かんでいたのをはっきり見た



双「・・・・・・・やっぱり・・・・あの人と・・・」





双樹は大体感づいたらしい


沙羅はそのまま空港を後にした



双「沙羅ちゃんのことだから・・・わかるよね・・・・」


双樹は先に帰路についた



Sひかり 2009年01月08日 (木) 00時19分(7)
題名:第三話

沙「一人で大丈夫か・・・・・・?」


2人は長い廊下を歩いていた

双「うん、心配しないで」





しばらくして、一枚のドアの前で止まった




沙「じゃあ、時間になったら迎えに来るからな」


そう言って沙羅は振り向いて去っていった







双「・・・・・・・・失礼します」


双樹は静かにドアを開き室内に入った









警備員「面会時間は20分です。
    何かあればドアの前にいますので」


部屋の中には椅子が向かい合って2脚置かれていた


双「はい・・・・ありがとうございます」




警備員が部屋を後にすると・・・
入れ替わるように一人の男が入ってきた




双「・・・・・・・こんにちは・・・」




男「・・・・・ああ・・・・」



男は軽く返事をして向かいの椅子に腰掛けた



双樹は思い切ってこう口にした

双「あの・・・・・伝えたいことって何ですか?
  ・・・・・お義兄さん」



男「ああ・・・・・・、
  一応、弟の件で俺は義兄ということになるんだっけな・・・・・」



双「急に手紙が来て・・・・あの人のことで何か・・・・」




双樹が尋ねると・・・・・、
男はゆっくりと口を開いた



男「本当に妹に似ているな・・・・アンタ」


その言葉に、双樹は一瞬戸惑ったが

双「え・・・・・はい、
  あの人にも言われましたけど・・・・・・・」



男「アイツがあの時死んでなかったら・・・、
  こういう事にはならなかったがな・・・・・・」



男は寂しそうに語った



双「そうですね・・・・・・、
  交通事故にあったとか・・・・」



その言葉に男の口調が急に変わった






男「違う・・・・・・、
  あいつは殺されたも同然だ・・・」



双「・・・・え?
  でも、妹さんは2年前に車にはねられたって・・・・」




男「・・・・・・そのことで、伝えないといけないことがあるんだ・・・・」




男「今から2年前・・・・・俺がまだ学生だった頃だな・・・・」





男は双樹が愛した「あの人」と3人で暮らしている状態だった


男「・・・・父さんも母さんも・・・・、
  明日からまた出張らしくてもう寝たみたいだ」


ある日、3人の兄弟が夕食の準備に取り掛かっていた


彼「昨日2ヶ月ぶりに帰ってきたのに・・・、大変だね」


妹「仕方ないよ・・・・それにお父さんもお母さんも頑張って働いているんだから・・・・私達が頑張らないとね、お兄ちゃん」


妹は料理を作りながらそう言った


男「それより、宿題は終わったか?」


彼「終わったよ、やってないのばれたらうるさいから」


妹「お父さん厳しいからね・・・・」


男「進学がどうとかうるさいよな・・・・・・、
  別に大学行かなくてもいいと思うけど」



両親は仕事上、ほとんど家にはいなかった


しかし、子供達には厳しく、
3人とも大学まで進学させるつもりだったらしい


妹「さあ、ご飯できたよ」




その晩、3人はいつも通り楽しく食事していた




男『これが・・・3人で過ごした最後の思い出だったな・・・・』


双『え・・・・・』





次の日

男「・・・・・アレ?誰も電話に出ない・・・、
  2人とも帰っていないのか」


男は放課後家に電話をかけたが、
誰も出なかった


男「変だな・・・普段ならとっくに帰っている時間だし・・・・・特に予定も聞いてないし」



男は不思議に思いながら帰路につくことにした





しかしその途中


男「ん・・・?バイブがなったような・・・」


男は振動するケータイを取り出し電話に出た



男「はい、もしもし」


その電話の内容は・・・・驚くべきものだった






男「おい・・・・!大丈夫か?!」



弟「兄さん・・・・・」


男が病院に向かうとそこには弟の姿があった



男「電話聞いてすっ飛んできたんだが・・・アイツは・・・」



弟「命に別状はないらしいよ・・・だけど・・・」



あわてる兄に対し弟はゆっくりと語った











双「・・・・それで、どうしたんですか?」


静かに聞き入っていた双樹が口を開いた

男「その時は精神的に混乱しているから入れないって・・・・・その夜は病院で一夜を過ごしたんだ」


双「・・・・・・混乱・・・?一体、妹さんは・・・・」




その質問に男は少し怒った口調で言った




男「同級生に・・・・・・襲われたんだよ・・・」




双「・・・・え・・・・」



双樹は絶句した


男「アイツは昔から可愛いとか言われていた。
  それだけなら謙遜しながらも明るく過ごしてきた、
  男女問わず友人も多かったんだ・・・」



双樹はまた黙って聞き入った


男「だがな・・・・アイツは狙っている男子が多いことには気づかなかった、
  恋愛には奥手だったからなそれほど純粋だった・・・・・・
  だからこそ、こんなことになったのかもしれない」



双「どういうことですか・・・・?」



男「狙っていた男子どもがヤケになってな・・・
  ボコボコにされてよ、後で見たアイツの服はボロボロだった・・・」



双「いじめ・・・・じゃあないんですね?」


男「多分アンタにもわからないだろうな・・・性格まで似てるから・・・」



双「・・・・え?それって・・・?」


男「やはりな・・・、
  純粋なのは悪いことじゃない、
  だがそれゆえにあのダメージも大きかった・・・」



双「・・・・ダメージ・・・・・?」




双樹がまたも不思議そうに問いかけると



男「幸い、大して重症ではなかった、
  家での処置をきちんとすれば入院する必要もないと言われた、
  けどな・・・・・それを親父に連絡したら・・・・」






[差し支えないなら明日にでも学校に連れて行きなさい]






男「・・・・・・・これで『はい、わかりました』とアンタは思うか?」




双「それは・・・・・ひどいですよね・・・」



男「一応、次の日には退院したさ・・・
  だがアイツは家に帰ることはなかった・・・・」






しばらくして双樹は沙羅とともに帰路についた



沙「それで・・・・・事故じゃなくて自分から車に飛び込んだってわけか」


双「うん、結局事故って扱いになったらしいけど・・・・」



沙「それで、兄は非行を繰り返して退学・・・
  アイツはショックで体を壊したってわけか」



双「うん・・・・・そう聞いたよ・・・」





双樹は沈んだ表情をしていた



沙「双樹、お前が落ち込んでどうするんだ」


双「だって・・・・あの人にあんな悲しい事があったなんて・・・・
  知らなくて・・・私・・・思い出させたかなって」



泣きそうな双樹に沙羅は叫んだ



沙「双樹!お前、自分が妹さんの代わりとか考えてるんじゃないだろうな!」



双「・・・・・え?」



沙「そのアニキが言ってたのはそう言う事じゃないだろう、
  お前が似ていると聞いてからそのことを気にしているんじゃないかって思ったから・・・、
  少なくとも双樹はアイツの心の支えになっていたじゃないか」



双「そうかな・・・・私、なにも・・・・」



沙「何言ってる・・・・、
  お前がアイツと愛し合っていたのが何よりの証拠じゃないか・・・・
  お前は妹さんの代役なんかじゃないって言う」



双「・・・・・・・・・え・・・」


沙「双樹は双樹だ・・・、
  アイツの為にもお腹の子の為にも・・・・・泣いていてどうする」



双「・・・・・沙羅ちゃん・・・・・」





数日後


沙「双樹、こんなに買って大丈夫か?」


沙羅は双樹につれられデパートに来ていた


双「いいの、この子の為にもできるだけのことはしたいから」



沙「そうか・・・・・・」




双樹の表情は

明るく輝いていた・・・・・・

Sひかり 2009年01月08日 (木) 00時21分(8)


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