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タイトル:赤いたんざく 短編

06年秋に書いたシスプリSSのオリジナル修正版。

Sひかり 2009年01月08日 (木) 00時44分(18)
 
題名:

ある年の初夏の日……
一人の少年が小さな駅のホームに降り立った

勇真「やっと着いた……田舎だから乗換えが大変だったな」





女性「あら、勇真君久しぶりね」

勇「こんにちわ可波さん、
  お久しぶりです」

僕の名前は鯉田勇真
小さい頃に住んでいたこの街に3年ぶりに戻ってきた


可「今日はどこか泊まるの?」

勇「いや今日は実家に泊まって、明日には帰るんです」

「そうなの、大変ね」

勇「いえいえ…それじゃあこれで」


僕は早々と別れた


可波さんをはじめこの街の人は久々に帰った僕にもやさしく接してくれた
僕はその感覚が久々だったせいか、少し慣れない感じだったかもしれない




勇「昔の写真ってやっぱり少ないな…」

僕は実家に帰るや否や倉庫を洗いざらいにした
その途中で古いアルバムを見つけた


勇「父さんは転勤族で忙しいからしょうがないけど、
  もうちょっと撮っても良かったよな」

するとある一枚を見た瞬間、ページをめくる手が止まった


勇「あれ、この子は確か…」

僕は写真を外し倉庫を出た





僕は写真を持って街外れの林に入った

勇「墓地の隣の……と、
  この辺だと思うんだけど」


写真には僕がある女の子と林の前で並んでいた


勇「あった、ここだ」


僕は林の中の大きな笹が立てられていた前で足を止めた

その笹には何百枚もの短冊や紙飾りが吊るされていた
この街ではこの時期に願い事を掛けて、願いが叶うまで短冊を吊るしておく風習があった。


勇「そうか、今日は七夕だったっけ。
  この街を出てちょうど3年経つけど、ひょっとしたら僕のも…」


すると



「あ、勇ちゃん先に来てたんだ」

後ろから女の子の声が聞こえてきた

勇「え?その声は…」

鈴「もう、今日帰ってくるって言うのに、鈴のに会いにに来ないんだから!」

そこには、写真とそっくりの女の子が立っていた


勇「ごめん、鈴ちゃん。
  家の片付けがあったから」

鈴「言い訳は良いから、今日は鈴の虫取り手伝ってもらうよ!」


かすかに遊んだ記憶があった女の子・鈴ちゃん……
女の子としては珍しく一緒に虫取りしたような気がする


勇「え?今日カブト虫取りに来たの?」

鈴「そうだよ、ほら早くしないとおっきいの取れないよ!」

鈴ちゃんはそういって林の中に走っていった


勇「待ってよ、鈴ちゃ〜ん」

僕は鈴ちゃんの後を追いかけた






中々カブト虫は見つからず
僕らは林の中を話しながら歩いていた


勇「まだ早いんじゃない?
  カブト虫はもうちょっと経たないと出てこないんじゃ…」

鈴「絶対いるもん!誰かに先越される前に捕るんだから」


鈴ちゃんは虫取り網を持って大声で言い放った


鈴「勇ちゃんこそ、何で急に帰ってきたの?」


その質問に僕は少しうつむいて答えた

勇「実はさ、母さんが入院する事になったんだ」

鈴「えっ……、あの元気だったおばさんが?」

勇「何ヶ月かかかるらしいから、置いてきた服とか生活用品を取りに来たんだ」


鈴「そうなんだ…」

鈴ちゃんはすこし後悔したかのように言った


勇「気にしなくて良いよ、それよりおっきなカブト虫探そう」


僕がそう言って顔を上げると

鈴「勇ちゃん、あの木の上見て」

鈴ちゃんがそっと指差した木の上にカブト虫が止まっていた


勇「僕が取るから、網を貸して」

鈴「高いところだから気をつけてね」


僕は虫取り網を持ってそっと木に登った

勇「よ〜し、行くぞ!」

僕が狙いを定めて網を振り下ろした

勇「やった!捕まえた!」


…その時


鈴「勇ちゃん!危ない!」

僕は足を踏み外して木から落下した


勇「うわぁぁっ!」




落ちる瞬間……
背中に抱きとめられたような感覚がした………






勇「……う〜ん………あれ?」

気がつくと僕は木の下に倒れていた

勇「僕は確か木から落ちて……、
  …鈴ちゃん?」


辺りを見渡すと……
その場には僕と網の中のカブト虫しかいなかった







勇「………鈴ちゃんが死んだ?!」


可「ええ…、ちょうど勇真君が引っ越した日の夜に見つかったの」


そう言って可波さんは当時の事を話し出した



可『あら鈴ちゃん、今日は勇真君の引越しなのに出かけるの?』


鈴『ううん、
  勇真君におっきなカブト虫を捕まえて見せてあげるんだ』




1時間後

鈴の母『遅いわね、鈴は何してるのかしら』

可『林まで行って見ましょうか?』

鈴の父『私達も行きます、鈴はおてんばですからどこに行ったんだか…』



しばらくして林の中から鈴の父親の声が聞こえた


鈴の父『鈴が倒れてるぞー!!』

鈴の母『鈴?!しっかりして!!』





可「警察の人が言うには、
  鈴ちゃんはカブト虫を捕ろうとして木から落ちて頭を打ったらしいの」

勇「え、じゃあまさか……」

勇は僕はあの木の事を思い出した


可「しばらくしてご両親は引っ越したんだけど、
  今日が命日だからさっき会ったわ」


勇「え?本当ですか?!」


僕はさっき通った墓地へ向かった

するとそこには……


勇「おじさん…おばさん…」


鈴の母「あら勇真君、久しぶりね…」


鈴ちゃんのご両親に偶然会った


鈴の父「ウチの鈴が世話になったね」

勇「いえ、僕なんて何も……」

鈴の母「私達も明日帰るから、この辺でおいとまするわね」

そう言って鈴ちゃんのご両親はその場を去った


勇「鈴ちゃん……」


僕は墓地に入ろうとしたが
なぜか横にある林に興味が引かれた


勇「さっき、僕の短冊探そうとしたんだっけ」


僕は自分の短冊を探しだした
…しかしなぜか急にある2枚に視線が止まった


勇「あれ?この短冊ヒモ一本に2枚吊るされてる」


その短冊を手に取ると…





『いつかおっきなカブトムシを捕まえられますように こまの りん』
『勇ちゃんと2人っきりで暮らせますように こまの りん』


勇「鈴ちゃん……」




僕は鈴ちゃんのお墓の前でカブト虫をそっと置いた


勇「このカブト虫は…鈴ちゃんのおかげで捕れたんだ。
  鈴ちゃんにあげるよ」


僕は軽く合掌してその場を去ろうと振り返った

すると







鈴『ありがとう………』





勇「鈴ちゃん……?!」



僕が振り向くと
さっきのカブト虫が僕の横を飛んでいった



勇「僕の方こそありがとう…………」





僕は再び振り返って墓地を去った

僕の後ろで笹に吊るされた色あせかけた赤い短冊が風にたなびいていた





『しょうらい、りんちゃんといっしょにくらせますように こい田 ゆうま』

Sひかり 2009年01月08日 (木) 00時44分(19)


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