「そういえば、こっちへ来てから10年以上か・・・」
ぼそりと言ったつもりだったが、一緒に行動していた彼には聞こえていたようだ。
そして、言われる。
「そんな細かいこと、気にしなくてもいいのではないか?スターチス」
この人がこういう性格なのはいつものことだ。
だが、流石にそろそろこうスターチスは言いたくもなった。
「むしろ、貴方がもっと気にしてください。・・・ターコイズさん」
峰短編&誓いの花プロローグ
「雪に咲きし鋼鉄の花」
彼は・・・いや、彼らは、ある組織に所属する仲間といったところだ。
その組織というのは『理の峰』・・・簡単に言えば17属性の管理者といったところだろうか。
属性というのはポケモンのものと同様のもの。
17属性というからにはそれぞれの属性に1人ずつ、全部で17人いるのだが個性的というかなんというか・・・。
ともかく今はその一員、(一応)先輩にあたるターコイズとの任務中。
・・・なのはいいが、正直なところ、スターチス的にこの人は少し苦手である。
実力的な面では、かなりのものなので何も問題はないのだが(というか峰自体、半端な実力じゃ入れないのだが)・・・苦手なのは、性格。
いつでも飄々としているというか、掴めないというか、とにかくそんな人だった。
・・・いや、冷静な部分も確かにあったがそれにしたってわからない。
年齢もさほど変わらなく、彼の方が4〜5歳上という程度なのだが・・・妙に子供扱いされているような気もしている。・・・あぁ、多分それも原因だろうか?
1つだけ誤解しないで欲しいのは、嫌ってはいないということ。
つまり、苦手=嫌いと思わないで欲しい。
「まったく・・・油断大敵、ですよ?まだ任務は終わってないんですから・・・」
「大丈夫だ。これぐらいの任務、すぐ終わるだろうからな」
・・・それが油断だ、とは言わなかった。何かいろいろと面倒になったようだ(ぇ)
そんなやりとりをしていると、背後から何かの攻撃の気配がした。
「鉄壁・・・っ!」
「おぉ、早いですねぇ。・・・最も、こちらももう終わりましたけど♪」
咄嗟に鉄壁を張ってスターチスはちらりと横のターコイズを見る。
彼の手には1つのモンスターボール。
そして後方には数匹のバンギラスが倒れているのが見えた。おそらくは、野生だろう。
スターチスはもう必要がないと判断して、鉄壁を解除する。
それから数十分後。
任務を手早く済ませた彼らは、・・・いや、スターチスは峰本部にいた。(どこにあるかは私は知らないけど(蹴)
ターコイズはどうしたって?
・・・・・・ターコイズは急に「研究の続きをしたくなったんで、後は頼みました♪」と言い残して去って行ったとか(苦笑)
「というわけで、今回の任務は終わらせました。キヨミさん。」
一通りの説明を終えたスターチスは、峰のリーダーであるキヨミにそう告げた。
「ありがとう。よくやってくれたわね」
ねぎらいの言葉をかけるキヨミにスターチスは軽く会釈をしながら、口を開く。
「・・・それで、久々に自分の世界へ戻りたいんですが・・・」
「構わないわ。少しぐらいなら里帰り・・は表現が少し違うかもしれないけど・・・してくるのも悪くないと思うわ。」
実はスターチスはこの世界の人間ではない。本来は別の世界の人間だ。
だが、どういう経緯かはわからないが行き来ができる場所を知ってそれで移動しているらしい。
キヨミもそのことは知っているので了承したのだが・・・この時のスターチスは気付いていなかった。
この時戻ったことが今後に大きく影響をあたえようとは。
〜数日後〜
「ここのところ忙しかったから戻るのは本当に久しぶりだな・・・」
スターチスは、自分の世界に戻ってきていた。
とりあえず出身地である町へ行こうと思いながらそう呟いていた。
・・・そんな時だった。
「・・・もしかして、スターチスなのか?」
不意に、彼の名前を呼ぶ声が背後から聞こえてきたのだ。
それに少し驚いたスターチスだったが、その声には少し聞き覚えがあるような気がして振り返る。
見れば、オレンジの長髪で右目が隠れている長身の男がいた。
隠されていない左目には赤が見える。
「まさか、リック・・・?」
スターチスは気がつくと声を発していた。
すると、相手は、リックと呼ばれた男は僅かに口元で笑みを作る。
「あれ以来、一体どこに・・・いや、それよりも・・・ちょうどよかった。聞いてほしいことがある」
「・・・聞いてほしいこと?」
この時は、旧友・・・というより幼馴染の話をただ普通に聞いてみるかと思った程度だった。
だが、全てを聞いた時、思わず信じられないという表情を浮かべ、こう言っていた。
『少し待ってくれるか』・・・と。
そして・・・彼は、スターチスは複雑そうな色を目に浮かべながらも、再びキヨミの前にいた。
少しだけ迷いながらも、スターチスは口を開いていた。
「・・・聞いてもらいたいことがあります、キヨミさん。」
「峰・・・の話ではないようね。一体どうしたの?」
キヨミは、そんなスターチスの様子から、いつもとは違うと察したのかそんな言葉で反応していた。
流石に彼女は峰を束ねる存在なだけあって、少し様子を見ただけで相手がどのような状態か把握できるようである。
「・・・その前に、私の過去を話す必要があります。全ての始まりはあの時だから・・・」
〜レイア地方・フィーロ〜
昔、その雪原の町にはある1人の男性と、彼を慕う幾人かの子供がいた。
その子供達の中でも特にあるグループは彼と一緒にいることが多かった。
しかし、いつからか仲が良かったその子らの関係は変わっていき、それはあることをきっかけに完全に形を変えた。
全ては、そのグループ内の2人の少年による口論がきっかけだった。
ほんの少しの考え方の違いのはずだった、のに。
お互いに謝れず、気まずい雰囲気のまま、数日が過ぎた時・・・事故は、起きた。
その事故に居合わせた人の言うことには、彼は最後まで笑っていたという。
本当に優しい人だったから、多分誰かを守ろうとしていたのだろう、とも言っていた。
・・・後になってわかったことなのだが・・・、予想通り、彼は1人の少女を助けていた。
そして、その少女が少年達のよく知る者だった・・・。
少女は、彼が好きだった。
2人の少年の1人は彼女のことが好きで、それを利用して彼女に更に近づいた。
もう1人の少年は、それがずるいと感じたし、直接彼に言おうともした。
だが、その時もまだ仲違いしたままで・・・やがて、そんな空気に耐えれなくなり・・・1人を求めた。
そんな時に偶然異世界への道を見つけた少年は、そのまま何も言わずに彼らから離れて・・・。
「・・・異世界に旅立った少年・・・貴方のことかしら?」
その話を聞いたキヨミは確認するように、口にする。
しかし、スターチスから返ってきたのは意外な言葉だった。
「・・・僕は、逃げた・・・中途半端に壊したままに・・・。」
「『僕』?」
不思議そうにキヨミが復唱するのが聞こえて気がついたのか、スターチスは苦笑を浮かべていた。
そして、少しだけ気まずそうな口ぶりであったが、説明を入れた。
「・・・昔の言い方が出ただけで・・・・・・それにしたって思った以上に今回の件で自分は動揺しているみたい・・・だ」
その口ぶりに納得したのか、キヨミはすぐに切り替えて訊ねる。
「そのままで構わないから、そろそろ本題を話してくれるかしら?」
「・・・数日前、その幼馴染に会いました。彼は・・・リアトリスは・・・ある意味では純粋といえるのかもしれないけど・・・あのやり方は・・・」
僅かに怒気を含んだような声で、スターチスは語り始めた。
そんな時、この部屋の近くにいた者が1人いた。
「スターチスさん・・・だよな?この声・・・」
彼がここに来たのは、少し前にキヨミの部屋を訪れた際に忘れ物をしたことに気付き、取りに戻ってきたからなのだが。
思いがけず、深刻そうな会話が聞こえてきたのでどうするべきなのか、と考えさせられているのであった。
数秒考えていたが、やがて僅かに諦めたように呟いていた、
「・・・タツヒトには悪いがもう少し待ってもらうか・・・」
どうやら・・・彼は人を待たせているようであった。
それでもこの場を離れなかったのは何故だったのか。
「リックはアルメリアさんの言っていた理想を成し遂げようとしている・・・それはいいと思ってる。だけど・・・地方の一国を壊してまで得ようとしているのが許せない・・・!でも、それでも!僕は・・・完全には見放せない・・・!」
どちらかというといつもは冷静なのだが、今のスターチスにはそれがなかった。
むしろ、内に秘めていた想いを一気に爆発させているかのような、危うさが強い。
キヨミも、部屋の外で聞いていた青年・・・マサシもそんなスターチスを見たことがないので驚いていた。
といっても、2人とも表情には出していないが。
キヨミは内心苦笑いを浮かべながらも、ふとこう言っていた。
「・・・そんなに気になるなら、好きにするといいわ。」
今度はスターチスが驚く番だった。
しばらくキヨミの顔を見てから、慌てるような声色で反応していた。
「え、いや、いいんですか!?」
それが少しおかしいと内心思いながらも、キヨミは穏やかな笑顔でスターチスに語りかけていた。
「貴方は今休暇中よ?自由に行動する権利はあるわ。それに・・・もし私が反対しても、きっと貴方は行くでしょう?」
にっこりと微笑みながらそう言ったキヨミに、参ったと言わんばかりの態度でスターチスは呟く。
「いつから、気づいてました?」
キヨミはそれには答えず、真剣な表情でスターチスを見て言う。
「行って来なさい。でも、決着がついたらできるだけ早く戻って来るのよ?」
「・・・ありがとうございます。」
「スターチスさん。」
キヨミに礼を言って、部屋を出た所でスターチスはマサシに声をかけられた。
そこにマサシがいることに気づいていなかったらしく、驚きの表情があった。
「・・・マサシ君?」
「すみません、話、聞いてしまいました。」
僅かに不思議そうな顔のスターチスだったが、その言葉で状況を理解したようだ。
「もしかして、キヨミさんに用事でもあったのか?」
「まぁ、そんなところです。・・・それよりも、本当に行くんですか?」
それは、確認というよりは心配といった感じの言葉だった。
そのニュアンスの違いに気付きながらもスターチスはただ、微妙な表情を見せるだけだった。
マサシは、その様子にどう声をかけるべきか迷ったが、そうしているうちにお互い静寂のまま別れてしまった・・・。
そして彼は、スターチスは行く。
幼馴染を止めるために、過去と向き合うために。
・・・・・・・・後悔を増やさないためにも。
■後書き?■
峰短編と花プロローグ兼用な話がこの話。
時期としては、花1話から2カ月ぐらい前・・・と思う(ぇ)
峰の一員であるスターチスが何故花にも出ているかーというのを説明するために書いたかもしれないとか言いませんy(ちょ)
ところで、過去話のところは挑戦的にいつもならやらない書き方をし、自滅気味になったのはここだけの話(ぁ)
後、アルメリアさんはスターチスたちが仲良くしてもらっていたお兄さんのことです。とここで補足。
リアトリス(リック)は・・・・・・花のラスボス的存在(ぼそっ)
それはそうと、峰というわけで何人か登場。
ターコイズ、キヨミ、マサシ・・・それと名前だけでタツヒト。
ぶっちゃけターコイズさんは冒頭だけの出番だったのにも関わらずかなり扱いにくかった!(爆)
・・・えーっと、ウィキのお世話になりましたが、似てなくても責任は負えません。むしろ笑って許してください(待て)