誓いの花 STAGE6
ふと、考えたことがある。
様々なことを知り------それこそ知らなくてよかったことさえも知ってしまうこと。
逆に、真実を知らず忘却のままに翻弄されること。
一体どちらが辛いのだろうかと。
俺は、こう思う。
知りすぎているのも、知らなすぎるのも同じ程に辛く、哀しいと・・・。
Flower of an oath〜誓いの花〜 STAGE6
「………訊きたいことがある」
そこには何人かの人間がいた。 たった今質問を投げ掛けたのであろう青年はある1人に睨むようにも見える視線を向けていた。
その視線の先にいたオレンジの長髪が印象的な男は、何事もないような涼やかな様子で問い返す。
「それは…『彼』のことか?」
簡潔なものだったが、的確だったようで質問主の青年は軽く頷いていた。かと思うと、言いかけていた言葉の続きを口にしていた。
「王家の血筋…というのは本当、なのか?」
「…本当。DNA鑑定でわかってる…」
その疑問に反応したのは、長髪の青年の近くに立っていた物静かそうな女性だった、
やや意外そうな表情を僅かに浮かべながらも、そっけなく青年は告げていた。
「そうか。…何もないなら、俺は行くからな」
そう言って、その場から立ち去ろうとしたが、一瞬だけその部屋にいた、今言葉を発した女性とは違う別の女性へ向けていた。 ……どこか、複雑そうで微妙な表情の女性だった。
それからしばらく。 特に当てもなく、青年は歩いていた。
何故だかわからないが1人になりたかった。一応、個室はあるのだが、戻る気にはなれなかった。
が、不意に足を止めていた。
「……もし、そうだとしたら、ライラック君はどうするんだ?」
「どうするって言われても俺には、よくわかりません。どうするべきなのか…っ!」
スターチスと、もう1人。ライラックと呼ばれている青年。 何やら話しているようだったが、気付けば青年の会話に口を挟んでいた。
「だが、自ら選ばなければいけない時だってある。わかってはいるんだろう?」
「「タフト……君(さん)?」」
どうやら、青年はタフトというらしかった。
タフトは僅かにスターチスの左耳に揺れる黒十字のイヤリングを見てから、気付けは口を開いていた。
「黒い十字架…、アクセサリーとしては、嫌いじゃない。だが…、それを見ているとスターチスさん。あんたが何か1人で抱え込んでるようにも見える。」
突然の指摘に、一瞬、スターチスもライラックも固まっていたが、当事者であるスターチスが苦笑しながら呟く。
「否定は……できないな。」
やや遅れて、ライラックも反応を示す。
「いや、否定しないって!……もしかして、さっきの話は…」
「ああ、彼らと幼馴染なのは、本当だし、長く会っていなかったのも本当だ。だけどな」
ライラックに対してスターチスが弁解?しようとした時、再びタフトが言う。
「俺は別に、あんたやリアトリスとかの関係はどうだっていい。どうでもいいが…言わなければ、行動しなければ、伝わらないことだってあるんだよ!!」
「え?えっと、あの……タフトさ…ん?」
ライラックが困惑している様子で不機嫌そうなタフトを制止しようとしていたところをみると、普段の彼ではなさそうだ。 だが、収まる様子はない。
「それに、ライ。お前は、いつまでここで流されてんだ?お前にはまだ、帰る場所や待っている人がいるんだろう!?そっちに戻るって選択もできんだよ!!」
「……それは」
タフトの言葉に対し、答えに詰まるライ。 そんな様子を見かねたのかは知らないが、スターチスがタフトをなだめる。
「タフト君、少し落ち着かないか…?」
しかし、それすらも逆効果だったようで、タフトはなおも苛立っているような声を上げる。
「無くなってから、失ってから気づいたって遅いんだよ!俺だってそうだった!!あんたらにはわかるか?故郷がもうない奴の、俺みたいな奴の想いがっ!!」
両手を強く、爪が食い込むのではなかろうかと思えるぐらいタフトが握りしめているのを見て、はっとしたようにライが呟いていた。
「……タフト…さん……貴方、ここ(レイア地方)出身って言ってましたよね…もしかしてとは思うんですが、アスベル……?」
聞こえていたのか、タフトはほんの僅かだったが縦に首を振った。
そして、気まずそうな様子のままに口を開く。
「……言い過ぎた、すまない。………だが、もう1つだけ言っておく。」
言いながら、ライに近づき、耳元で囁く。
「ライは、俺に似ている。似ているからこそ俺と同じにはならないでほしい……」
「……え?」
意図がわからず、きょとんとしたライの隙をついて、タフトはその場を後にする。 しばらくその場に残された2人は固まっていたが、姿が見えなくなってからようやく口を開く。
「……あんなタフトさん、初めて見た」
「あ、ああ。口数が少ない印象が私にもあったしな」
互いに、タフトの意外な一面に驚いていたかと思うと、ライは少し冷静になった頭で考えた。
「俺が…タフトさんに似てる?どういう、意味だったんだ・・・?」
そんなライの疑問に対し、スターチスはぽつりと言った。
「私や、タフト君・・・リックたちも・・・か。ほとんどが訳ありの中で、ライラック君。君は普通なんだ。一番の中立とでも言う方がいいのかも、しれないがな」
「………2人に、当たるつもりはなかったのに…!」
先程の場所とは少々離れた位置で、タフトが少しは落ち着いた様子で、先程のことを思い出していた。
そんな時、1人の女性が話しかけてきた。
「タフト、今時間あるかしら?」
彼女は、ここにいる人間の中では珍しい、スカートをはいている。 だから間違うことはそんなにない、というよりは、タフトが間違えるはずはなかった。
「オレガノさん………」
「?……えっと、暇じゃないなら、別にいいのよ?」
タフトの声が若干暗さを含んだ声だったので、オレガノと呼ばれた女性は気遣うように言った。
数秒、考えていたようだが、タフトはすぐに快諾する。
「構いませんよ?」
そして外に出たオレガノとタフト。
「じゃあ、行くわよ!シャワーズ!」
「ノクタス………出てきてくれ」
それぞれ、モンスターボールからポケモンを取り出しているところを見ると、ポケモンバトルをするようである。
先に動いたのは、ノクタス。
「ニードルアーム」
「よけて、オーロラビーム!」
初撃は、お互いに牽制といったところか。 ニードルアームとオーロラビームが2匹それぞれにかすった程度。
すると、オレガノは即座に違うボールを取り出していた。 2つのボール……片方はシャワーズのものだが……を投げた。
タフトは、変えるか変えまいか考えた後、ノクタスで続行することにしたようだ。
「………出てきたら、だまし…」
技の指示を口ではしようとしていた。 だが、新たに飛び出してきたポケモンの技を見て、できなくなった。
そんなタフトの様子に、気付けなかったのかオレガノのそのポケモンはそのままその技を放つ。
「…………ミミロップ!行きなさい!」
ノクタス自身は、タフトが口にしかけただましうちの構えをとりかけていた。 だが、司令塔の様子の変化が気になった一瞬に体勢が崩れ、もろに攻撃をくらってしまう。
あらかじめ指示されていたであろう、炎を纏った拳の一撃を。
「……炎、の、パンチ………」
その技名を呟いているタフトは、酷く怯えているようにも見えた。
そこで、ようやくオレガノが変化に気がついたようで、慌てて駆け寄る。
「タフト!?ちょっと…あんた、大丈夫!?」
「苦手なだけだ………、炎は、思い出させる……思い出したくないことまで……な」
---------炎は、呼び起こす。双人の記憶を。
同じ頃、ふとどこかから空を眺めていた、ハルがぽつり、呟いた。
「……僕は…………僕には、妹が…いた?」
■後書きだと思われる■
すいません、タフト書きたさに書いた中身なんです、これ(お前) ま、最初はそうだったんですが……結果オーライだしいいかな(帰れ) ここからの登場が、タフト、リック、オレガノ、ライ、リジア・・・。 あー、リジアはまあ、わかるでしょう。1人だけ名前でていないキャラがいたはずですから(ぇ)
さて、色々とちりばめていったけど、どこかどの伏線だったかなぁ(おい) ……ウソです、把握はちゃんとしているのでご安心を(蹴
No.42 日乃 水葉 2009年10月13日 (火) 00時26分
感想というよりもツッコミ報告(謎)
ハルやクロスが出る展開と思いきや、今回はタフトというキャラがメインのお話でしたね。 タフトは基本的にクールな性格なのかな?
ちなみに、舞台が中世だと思われる世界で、DNA鑑定という言葉が出たことに、不覚にもツッコミを入れてしまいました(ェ)
No.43 HIRO´´ 2009年10月17日 (土) 18時35分
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