誓いの花 STAGE7
ある都市が燃えていた。
原因が何なのかはわからないが、火の手はすぐに広がり、彼らの元へにも…。
「一体…何……あっ」
瓦礫も目立つ中、少年は見つけた。
「ガーベラ!」
「…ハル……そうだ…これ、預かっててくれる…?」
瓦礫に埋もれて身動きが取れないながらも、何かを託そうとする少女。 一瞬少年は拒むが、無理矢理何かを握らされる。
それを確認した後、どこか諦めたような声音で彼女は呟いていた。
「お願い…それ、タフト……お兄ちゃんに、渡して…もう私は…」
「そんなことっ、言わないでよ!今そこから助けてあげるから…!」
そんな彼女を励ますかのように、少年は声を上げる。 だが少女…ガーベラは強い口調で言った。
「私、わかってるの。限界が近いって…。だから、ハルだけでも逃げてよ!今なら、きっと助かるから!行って!」
ガーベラの様子に、迷いを見せていた少年はできる限りの笑顔を見せた。
「わかったよ……。これを、渡せばいいんだね?時間がかかるかもしれないけど…必ず見つけ出して、これも、ガーベラの想いもちゃんと届けるよ!」
「ありがとう。ハル……」
それは、運命に導かれ、彼らが出会う前のお話……。
Flower of an oath〜誓いの花〜 STAGE7
「………そっか、あの時の……ガーベラのためにも、何としても見つけないと…あれ?」
ふとポケットを探ると、それが手に当たった。 そのことでハルは思い出していたのだが、何かに思い当たったように首を傾げた。
「…………タフトって、言ってた?(もしかして…?)」
ガーベラの言っていた『お兄ちゃん』と同一人物かはわからなかったのだが、構わずハルは駈け出した。 タフトに、直接聞いてみようと思った故に。
しばらくすると、探し人はすぐに見つかった。だが、雰囲気が違うことを感じ取り、声をかけられずにいた。
「その場にはいなかった。けど……見るたびに思い出して……怖くなる」
「そう。それは辛いわね……」
話していたのは、タフトとオレガノだった。 やや落ち着いてきたようで、タフト本来の冷静さを取り戻しつつあったようだが、それでも少し震えていた。
「それでも、俺は………アスベルのタフト・ソディアの名までは、捨てていないっ」
どうやら、タフトは故郷に対する想いが強いようだった。 そして、それを聞いていたハルは確信する。
「……ソディア……間違いない!」
2人とはやや離れた所に立っていたが、その声は聞こえたようでタフトがオレガノからハルに視線を移していた。
「…ハル?……そんなところで、何か用か?」
呼びかけられたことで一瞬だけ、ハルの動きが止まる。 だがすぐに意を決してタフトに告げる。
「ガーベラから預かってるものがあるんです」
「ハル……お前、ガーベラを知っているのか!?」
その名前を聞いた途端、タフトは先程のバトル時とは違った意味での動揺を見せた。 それほど、大事な存在なのだろうが……ハルは、真実を伝えないといけなかった。
「僕は、数年間アスベルにいたんです。あの日まで」
「……そうか。ところで、お前がいたのって…もしかして、7年前から5年前じゃないか?」
「それが、どうかし……」
ふとタフトが口にした年月。 確かにその通りだったので、素直にハルは答えたのだが、その瞬間タフトの表情は僅かに沈んだ。
そのタイミングを見計らって、2人の会話にオレガノが割り込む。 っていうか2人とも見事に忘れていたな(ぇ)
「えーっと、2人とも。そのガーベラっていう人は・・・?」
タフトとハルは数秒目配せしあうと、小さくタフトが呟く。
「………………俺の妹だ」
それを聞いたオレガノが、疑問に思ったことがあった。
「えーっと、そのガーベラって子とハルが知り合いだったわけ?」
「……でも、助けられなかった。あの子は、ガーベラは…僕を逃がして、自分は…」
呟きながら思わず沈み込むハルの頭に、タフトが手を触れる。 驚いて僅かに顔を上げると、タフトの複雑そうな笑みが見えた。
「いや、それでよかったはずだ。それに、ガーベラは昔からそういう子だったからな。」
語りかけるような、優しげな口調だった。 だが、タフトはきっと無理して笑っている。
そのことに気付いたハルは、空いていたタフトの右手に、ポケットから取り出した物を置く。 そして、タフトの顔は見ずに呟く。
「中身は見ていないのでわかりませんが…でも、確かに渡しましたから」
タフトがしばらくそれを眺めていたかと思うと、やがて大切そうに仕舞いこむ。
乗せていた手をどけると、真剣な表情になってハルに言う。
「話して、くれないか……?俺がいなかった間の、アスベルのこと…ガーベラのこと…」
同じ頃、リュージュ。
街外れの小高い丘に、2つの人影があった。
「……クロッカス。あんた、さっきは言わなかったことがあるでしょう?」
「…………姉さんには敵わないか。まぁ、姉さんなら口は固いし大丈夫かな?」
問い詰めるコスモスに、若干たじろぐクロス。 だが、諦めたのかすぐに観念したようだ。
そもそも、何故この姉弟はここにいるのか? それは、30分ほど前に遡る。
クロス、そして途中からだが乱入したコスモスがロゼとフィニに、森であったことを話していた。 何故フィニもかというと、彼もシヴァス騎士隊の関係者だったから。
『ハルに会った』というクロスの言葉に驚いた様子を見せながらも、ロゼは冷静に話を聞いていた。
途中、いくらかロゼが口を挟んだりしていたが、ほぼそのまま耳を傾けていた。
「後は……いや、なんでもない」
ただ1つ、クロスが言葉を濁したのだが、ロゼは気にしてはいなかった……というよりは気にしていられなかった。
「わっ…!ロゼさ……あ。」
一番側にいたフィニが受け止めると、体が熱かった。 そして、一同顔を見合わせて、言った。
「……変わってないな、こいつも」
「ああ。前から無理ばっかりしてますもんね」
「まぁ、ロゼットだからしょうがないわ」
………ともかく、過労からかぶっ倒れたロゼをコスモスはフィニに託し、そのまま弟を連れて出て行ったのだ。
以上、回想終わり(ぇ)
「今から言うことは、推測の域を出ない。けど、多分事実だ」
いつになく、クロスの表情は真剣だった。 それほどまでに、彼が今から話そうとすることは重大なことなのだろう。
真っ直ぐ、コスモスを見ると、静かに頷いていた。 それを視認してから、クロスは口を開く。
「その前に…、姉さん。シヴァス王家の行方不明の第一皇子のことは知ってるよな?」
「え?ええ。それがどうかしたの?」
唐突に、その話を出すクロスにやや疑問に思いつつも、コスモスはひとまず続きを促した。
クロスもそんな反応をされるのは予想の範囲だったようで、一拍置いて再び口を開く。
「その皇子ってのは、多分ハルのことだ」
コスモスは一瞬絶句、次いで信じられないといった表情になり、クロスに反論する。
「はい!?……そりゃあ、あの子と第一皇子は同じ『ハルジオン』って名前で誕生日も一緒だけど…でも…!」
「突拍子もないことかもしれない。けど、他にも理由はあんだよ」
だが、あくまでもクロスは冷静に言う。
「俺は、第一皇子の付き人だった人を知っている。というかロゼに再会する前にも会ってきた。その彼の話を聞いてわかったんだ。事故に巻き込まれて行方不明となったと。」
「………あんた、どんな人脈あるのよ」
思わずコスモスがこう呟けば、クロスは「偶然だ」と簡単に返す。 そして、言いかけていた言葉の先を口に出す。
「俺が思うに、その事故でハルは記憶を失くしたんじゃないか?そして、そこを誰かに助けられた。ハルが言っていたじゃないか、アスベルにいたって」
クロスのその説明に納得したのだろう。だが、ふと附に落ちないものを感じてコスモスは口に出していた。
「……成程ね。それだと色々と辻褄はあうわ。だとしたら……あいつ、そのことを知っていたんじゃないかしら?」
「だろうな。シヴァスの第一皇子はかなりの人望があった。その皇子が生きているとなれば、これ以上とない切り札にできる。」
そこまで言って、クロスは毒づいた。
「やべぇ、俺今ものすっげぇリアトリスの野郎を殴りたい…!」
コスモスは弟のそんな発言は聞き流し(内心では彼女も同意していたが)、クロスに笑いかける。
「じゃあ、そんな重要な話を教えてくれたお礼というわけでもないけど………私が知っている貴方の力を教えてあげる」
一瞬きょとんとしていたクロスだったが、すぐに理解したようであった。
「俺の力……あー、あの風の力ね。聞こうと思っていたから、ちょうどいいや。知ってるなら教えてほしい」
そう軽く言えば、コスモスは不敵な笑みを見せる。
「教えてくださいお姉さまと言いなさい」
「……姉さん、それは違うぞ!?」
「ああ、こっちの方がいいかしら?コスモス様お願いします」
「何がしたいんだ姉さん!?」
そしてこのやり取りはしばらく続いたそうな?(ぇ)
■多分後書き■ 最初から最後まで真面目に行く…はずが、最後の最後に(汗) それはともかく、この話は全体的に重要な部分です。 さてさて、一体次の話はどこまで書くかな??
No.44 日乃 水葉 2009年10月25日 (日) 22時06分
RE: 誓いの花 STAGE7
タフトとハルを繋ぐものは、タフトの妹のガーベラだった。 また、クロスとコスモスが今後どんな行動に出るか注目ですね。
しかし、一番注目するべくは、コスモスの女帝発言(?)ですね。クロスをパシリに使う彼女の姿が容易に想像できます(ェ)
No.45 HIRO´´ 2009年10月26日 (月) 11時21分
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