[69] WIZ兄弟の話・弟語り |
- ψTrinity - 2009年02月13日 (金) 14時50分
代々魔法使いの家系に僕は産まれた。
魔法使いの髪は魔力をためると昔から言われており混じりのない色と癖毛が強い程よしとされていた。 鮮やかな赤毛に強い癖毛をもって産まれた僕を見れば誰もが同じような事を言った。
「まぁ、こんな上質な髪の毛…見たことがないわ。将来が楽しみね」 「この子の髪はすごいね。将来有名になるだろうね」 「これ以上の髪は見たことがないよ。羨ましい」
初対面だろうが二度目以降だろうが、みんな髪しか見ていない人ばかり。 僕は自分の髪が大嫌いになった。
初めて髪に興味を示さない人に出会った。 3歳の誕生日に父に連れられ出会った兄。 僕の髪に興味を持たなかったこの人なら信用できる…と自分の中で輝いた兄に毎日ついて回った。
最初は気にもしてくれていなかった兄も段々と僕を待ってくれたり呼んでくれるようになった。 名前を呼んで貰えるとすごく嬉しかった。この人は髪じゃなくて僕自信を見てくれている。
父が僕を連れて帰る日、兄と離れたくなくて泣いた。そうしたら父は苦笑いしながら兄の側におく事にしてくれた。
兄の様になりたくて必死で魔法の勉強をした。活字や数字の羅列は難なく覚えれるのに実践では上手くいかない。 兄は理屈だけで魔法は使えないと言った。 僕は10歳になっても小さな炎すらだせないでいた。 この頃には既に劣等感ばかりが募り家に籠りがちになってしまった。 でも兄のようになりたいのは変わらず書物を読み漁っていた。
兄は親しい友人や恋人と狩りへ出かける事が多くなった。 あまりに家からでない僕のためか兄は自分の友人や恋人を家に招き、その日の計画をたてるようになった。 僕も同席させてもらえ、実際の戦場へも連れて行ってもらえた。
14歳のある夜、兄が熱で寝込んだ。 心配で仕様がなくずっと兄の側についた。 ふと書物で読んだアースヒールを思いだし兄に向けて詠唱してみた。
…なんて…未だに小さな炎すら出せない自分がアースヒールなど難易度の高いスキルができるはずない…
「ジィン」 兄の目が覚めた。 「今、何をした?」 上半身を起こしながら兄は僕を見た。 「あの…アースヒールを…」 聞かれていたのが恥ずかしくて俯いた。 「アースヒールか…いつの間に習得したんだ?大変だっただろう」
…成功した?
「え…あの今思いたって詠唱してみたんです」 兄は嬉しそうに 「明日新しいスキルを教えてやろう」
【続?】
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