[89] 赤い赤い世界【シフWIZリトル/死ネタ・グロ注意】 |
- いづる - 2009年03月30日 (月) 20時29分
@重いです A暗いです Bシフが病んでいます Cリトルはもっと病んでいました。 D大惨事です。流血沙汰です。苦手な方は本当に注意してください。
+ + + +
赤い赤い。
世界はとっても綺麗だね。
赤い赤い空。
赤い赤い、戦場。
「君も死にたいの?弱い獲物には、興味ないよ」
《 赤 い 赤 い 世 界 》
ああ、つまんない。
今日もあっさり終わってしまった。でも沢山殺ってやった。 僕がシーフだからって、相手の火力どもは狙ってくるけど、そういう馬鹿な子にはたっぷりお仕置きしてやった。 一人やたらと僕に狙いを定めて足止めしてくる目障りな女がいたから、そいつは特に酷く痛めつけてやった。
真っ白な肌をズタズタに引き裂いて、真っ赤な血で白いドレスが染まって、ブサイクなお前がちょっとは綺麗になったんじゃない?
世界はホントに下らない。 皆弱っちくて、甘ったるくて、吐き気がする! オツカレサマデシタ。空に向かって唾を吐いたら、自分の顔に掛かった。
だけどね、僕はそんな世界がキライじゃない。 僕は世界でたった一つキレイなものを見つけたんだ。 それ以外の醜い全部が、たった一人その人の美しさを際立たせる脇役だと思ったら、 本当に愚かなこいつらも、少し生きるぐらいは許してやってもいい気がする。
僕の大切なひと。 大好き。 大好き。
「セシル!おつかれさまっ!」 「ああ、レン。お帰り、おつかれさま」
その人は僕を見ると、にっこり笑ってくれる。
その瞬間だけ、僕の口から体に入り込んで、肺を埋め尽くす汚いモノが浄化される気がする。
ああ、愛しい人。
栗色の綺麗な髪。緑の賢そうな瞳。 優しい表情も、白い肌も、落ち着いた声も、
全部全部僕のモノ。 全部全部、僕のモノになるんだよ!
「ごめんね、セシル。死なせちゃって」 「火力のお前が、何言ってるんだ。レイはうちのギルドのトップ火力なんだから」 「へへっ」
ああ、楽しいね。楽しいね! 僕も笑う。あの人も笑う。この一瞬だけが、僕のキレイな時間。
そうだよ。 かけがえのない一瞬だったんだ。 あの女が来るまでは。
「そうだ。マスターにはもう話してあるけど、今日は皆に紹介したい子がいるんだ」
ぞわ。 ぞわ。 嫌な予感がした。
転送されてきた、金髪の女。 お前、は。
「今日から、うちに入るサラだ。…今日の、Gv相手だったんだけどね」 「えっと、今日はありがとうございました!よろしくお願いします」
緊張がちに頭を下げるその女。 僕を狙って足止めしてきた、目障りなリトルウィッチ。 僕がさんざん殺してやったのに。殺してやったのに!
はにかんだ笑みを交わすセシルと女。 どうしてお前がそこにいる! そこは、セシルの隣は、ずっと前から僕の場所だって決まってたのに!
「おーい、お前ら、ちょっと怪しいぞ〜?」
どっと笑いが沸き起こって、女が顔を真っ赤にした。 セシル!なんであなたまで赤い顔をしてるのさ!
なんで。 なんで。
なんで?
それからは最低だった。 今まではちょっとでもダメージを食らったらセシルはすぐに飛んできてくれたのに、セシルのアスヒはあの女優先になった。 反省会じゃ隣り合わせに座ったりして、動き方について話し合ったり。 明るく素直で、意見もはっきり言うその女に、メンバーはすっかり取り込まれてしまった。
ふざけるな、ふざけるな! そこは僕の場所だったのに! なんで、なんでお前がそこにいる!
キライだ。
セシルにすりよる、あの女も! あんな女を受け入れた、ギルメンも! 僕をこんな目に遭わせる世界も!人間も! 僕だけを見てくれない、セシルも!
キライだ。 キライ。
きらイ。
だいきらいだ!
ねえ、シエル。
世界は綺麗だね?
赤い、赤い。
赤い空。
赤い戦場。
真っ赤な、血の色だよ!
「キャー――――ッ!!」
悲鳴、悲鳴。
あはは!歌え、歌えよリトルウィッチ!
真っ赤に染めてやるからさ!
「レン!アンタ何してんの!!」
駆け寄ってくるギルドメンバー。 悪魔のアンタが何言ってるのさ? こんな地獄絵図、見慣れてるんじゃないの。
「…なに、って、」
下らない。下らないね、こんな世界。 血に染まったダガーナイフ。 女の真っ白な肌を裂いて、真っ赤な血が、血が、血が。
だらりと下ろした腕。何もかもがけだるいよ。 僕は力無く笑った。 笑った顔が引きつった。
誰もの顔がおののいている。 嫌悪の表情で僕を見ている。 片手で、鬱血しそうなほど力いっぱい女の腕を握りしめて、何度も刺した女は青い顔で呻いてる。
許さない。 許さない。 許さない。
「お仕置きだよ」 「レンっ、今すぐサラを離しなさい!」 「うる、さいなぁ…ッ!」
腕を振るう。 ダーティーフィーバー。僕は見世物じゃないんだよッ!
「ぐっ」 「あぁッ」 「…やめろッ、レン!」
ほら、たちまち地獄絵図だよ。 ああ、悪魔さん。ごめんねぇ、目に当たっちゃった? つぶされた目玉が痛い?痛いでしょ? アンタの赤い髪はキライじゃなかったよ。 真っ赤になってもっとキレイになったよ。
うなだれて動かない女をみる。 体が冷たくなっていくのが分かる。
「……死ねよ」
腹に思い切り蹴りを叩き込んだ。
「ぐふッ」
くぐもった声。ゴホゴホッと激しく咳き込んで血を吐いた。 内臓を痛めたのか、それともさっき殴った時に口の中でも切ったのかな?
もっともっと苦しめよ。 僕の居場所を奪った罪は重いよ。 死んで僕の居場所を返しなよ!
「…ほらぁ、僕もそこまで酷くないからさぁ?
とどめ、刺してあげるよぉおっ!」
ダガーを振り上げる。 それで終わりになるはずだった。
「レン、やめろっ!」
緑の影が飛び出す。
「駄目だセシルッ!」
あの女の前へ。
「え、」
「セシルーーッ!」
悲鳴が上がった。 テイマーが泣き叫んで倒れた。 意味も無くわめき散らすテイマーをランサーがあやしながら、呆然とセシルを見ている。
ゆっくり、ゆっくり。
倒れる僕の、大切なひと。
世界で、世界で。
いちばん、たいせつな。
白い白いシャツを。
赤い赤い血で染めて。
黒い黒いダガーに、全身をずたずたにされて。
「セシル……?」
どさっ
ねぇ。
どうしてあなたが死ぬの。
そんな女の、ために。
どうしてあなたが死ぬの。
どうして。
「ひどいよ…」
頬を涙が伝う。 指の先から冷たくなっていく。 心が死んでいく。
「セシルのいない世界なんて、意味がないじゃないか…」
もう、こんな女に復讐したって意味がない。 もう、こんな世界で生きている意味が無い。
セシル、あなたがいないなら。
「レン……?」 「おい、レン、お前……ッ」
首に、ダガーを押し当てる。
「僕も、行くよ、セシル」
「レン…っ!?」 「や、めて…ッやめてぇ…ッ!」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔で、テイマーが首を振ってうずくまる。
「ばいばい」
一気に首を掻き切ろうとした瞬間悪魔にドローされた。
ひどいよ。邪魔するなんて。
そう笑ったら思いっきり殴り飛ばされた。
セシルが死んでしまった。 その、ひどい喪失感に、胸がぽっかり抉られて何も考えられない。
セシル。セシル。大好きだったのに。
「あきれたわ」
唐突な声に思考が止まって、ただの反射で振り向いた。 ボロ雑巾みたいになった金髪の女。 亡霊みたいにゆらりと立ち上がって、僕を見下ろしていた。
「こんな、男のために」
ガスッ もう動かないセシルの顔を踏みつけた。
「死ぬっていうの?」
無表情。狂った静寂。 次の瞬間切り裂いたみたいな笑みを浮かべて、サラは僕を見下ろした。
「あなたは知らないかもしれないけど、あたしはずっと前からあなたのことを知ってた」
「は……?」
「初めて逢ったとき、あなたは容赦なくあたしを倒した。圧倒的だったわ。他の男なんて比べようもないぐらい」
「なに、言って」
女の瞳が緩まって、酷く優しい笑みを浮かべた。 ぞわ、ぞわ。 誰もがおびえて、凍えたように動けないまま、目を見開いて女を見ている。
女は崩れるように膝をつき、僕の顔を覗き込む。 血の匂いがする吐息が、触れるほど近く。
「何度もあなたと戦った。あなたに殺されるたびに嬉しかった。 あなたと一緒に戦いたかった。あたし、そのために頑張ったのよ。…それなのに」
この女は、何をいって。
サラがいかにも汚らわしそうな目で、セシルを一瞥した。
「あなたはこんな男に惹かれてた。許せなかった。だから、利用してあなたに近づいてやったのよ」
「お前……?」
声が震えてる。 なんで?なんで、なんでだよ。
「ねぇ…?どうしてそんなに怯えてるの?」
この女は。 僕の頬をいとおしそうに撫でる、この女は。
「お前…誰だ…」
女の顔が嬉しそうにゆがんだ。 狂ってる。 頭がいかれてる。
阿鼻叫喚、地獄絵図。 誰もが呼吸を忘れて凄まじい戦慄に震える中、女は囁いた。
「愛してるわ。私のレン」
+ + + + + +
ごめんなさい。心の底からごめんなさい。 急展開続きの上に読みづらくてすみませんーー
後味の悪さを目指しました。 お口直しに他の素敵作家様の素敵小説を読むこと必須です。 作業BGMはオーエンsweet timeでした。
|
|