[113] 荒野の三人【BIS・剣士・WIZ】 |
- DJ - 2009年08月22日 (土) 22時18分
・新シリーズですb どうしちゃったんでしょうDJは。 ・本当はこの前に3話ありましたがオールエロでとても載せられませんorz ・セフレ以上友人以下な三人固定PTの、まだ清らかだったころの話^^
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剣士ビート、ウィザードのリィズ、ビショップのシグルド。 三人は伝説の赤い石を探すPTだった。
「なあ、それを言うなら三人と一匹じゃね?」 「お前死ねよ」
詳しく語りたいところだが18禁どころか21禁の騒ぎになるのでスルーしてほしい。
――こんなガキどもと妙な関係になるとは思わなかったな。
*
シグルドが昔のことを思い出す。
国王がレッドストーンに賞金を賭けた。情報に金も出すらしい。 冒険者が旅に出るには十分な理屈だった。 シグルドは仲間を求めていた。 自分はまだ「守る」余力がある。だが殲滅する力には劣る。 ビートと会ったのはそんなときだ。 いや、会ったというか…ビートは森の中で一人、行き倒れていたのだった。 面倒だが、ビショップとしては見捨てるわけにはいかない。
「そこの剣士、死んでんのか?」
軽く蹴ってみる。
「…」 「大丈夫か?」 「…なんか食い物持ってね?」
骨董品級のアホであった。 携行食を分けてやると、遠慮もせずにいい食いっぷりを見せる。
「俺、は、ビートって、んだ。お前、は?」 「食うか喋るかどっちかにしろ。」 「お前旅人なら、よ、俺、ボディーガード、してやるから、連れてってくれよ。」
助けられたくせに態度がでかい。剣士は水をぐいっと飲み干して、
「俺はたぶんレッドストーンを探してる」
言った。今まで会ったどんな奴よりも間の抜けた顔で。
「は?」
あまりに唐突ですぐに返事もできなかったが、
「金か?」
シグルド、つい尋ねた。すると剣士…ビートは勝手に語りだした。
「愛した女がいんだよね。むちむちのボーンでショートカットで赤い目なの。俺が束になっても適わないくらい強くてさ。槍使いでさ」 「あーそーよかったな」 「死んじまった」
笑顔のまま、ビートは言った。シグルドはまた黙る。
「王の命令でレッドストーンの捜索に出たんだってさ。俺が教えてもらえたのはそれだけ。」
シグルドは警戒した。
「…そのお前がなぜレッドストーンを探す?」
やけになった奴はろくなことを考えない。国王への復讐。でなければ女を生き返らせる、そんなところだろうと思った。だがビートは言った。
「別に彼女を生き返らそうとかそんなこと思っちゃいねー。いや少しは思ってっかも。だがよぉ、願いが叶うとか世界を滅ぼすとかワケわからん石が、彼女より価値があるなんて、俺にはどうしても思えんのだわ。」
ビートの頬が紅潮している。
「…」
シグルドはここで、ビートに水と間違えて酒の袋を渡していたことに気づいた。だが、酔い任せの戯言とは到底思えなかった。
「見つけてどうする?」 「わかんね」
そう言ってまた笑う。
「本当は見つからなくても構わないのかもしれねー。でも俺は彼女を愛してる。何かしてねーと…ダメなんだ…なんだ…頭痛え…」
空きっ腹に酒が効いたのか、ビートは真っ赤な顔でぶっ倒れる。 シグルドはため息を一つつくと、その男を担ぎ上げ、元来た道を歩き出す。 俺の相棒としては上等だ。
ところが。
「なあなあシグルド」 「あん?」
アンデッド化した野良犬。それを切り裂きながらビートは続ける。
「仲間増やそうぜ」 「そうだな…」
戦闘に危なげはない。ビートはその辺のごろつき傭兵よりも遥かに強く、太刀筋も見事で、シグルドが守る必要もないくらいだった。
「まあこの依頼が終わってから考えるか」
さっき力試しに依頼を受けた。ここら一帯に群れを作ってしまった野良犬の排除だ。魔獣化した犬は仲間意識が強く、下手に殺せば他の犬が殺気立つので、一般人には駆除しきれなくなっていた。
成仏しろよ、犬。 シグルドも一応聖職者だ。少しくらい心が痛まないわけでもない。
「おい」
と、突然ビートが大きな声を出す。
「人が来たぞ。いいのか?」 「なにっ…」
遠くに人影。聞いてなかったのか。犬が興奮状態のこんな時に人間が近づけば――。
「そこのバカ、逃げろ!!」
シグルドが叫ぶ。唸り声を上げて飛び掛る犬たち。
が…。 人物は杖を振りかざし、轟音と共に犬を焼き払った。
「な」
――スマグのウィザードか!
向こうもこちらに気がついたらしい。
「あの…」
小さいがよく通る声だ。
「町ってどっちですか?」
――また迷子か。
犬の数に疲れていたシグルド、
「連れてってやるから、まず手伝えよ、兄ちゃん」
にやっと笑った。
そんなわけで、殲滅はほとんどその男に任せて、ビートとシグルドは犬を追う。全滅させるまでに時間はかからなかった。
――こいつ何者だ…?
やたらPTプレイに慣れている。はぐれウィザードというだけで珍しいのに。
シグルドは警戒した。 しかし疑いを差し挟む前に、
「なあシグルド、こいつもレッドストーン探してんだって。連れてっていいだろ?」
すでにビートが勧誘してしまっていた。
こうしてPTを組むこととなった性格のまるで違う三人は、それでも戦闘の相性は良かったようで、特に何事もなく数週間が過ぎた。 そしてある日の晩。
「アリア…」
女の名前を呼んで、ビートが安宿の枕を抱きしめている。 その声で目が覚めてしまったシグルド。枕を投げつけてやろうかとも思ったが、あまりにも幸せそうなので許してやった。 寝直そうとしたが…気づけばその向こうのベッドが空いている。
――?
いつもなら気にもとめないのだが、
…窓が開いている。
なぜか気になったシグルド。飛び降りて外に出てみると、意外なほど明るかった。月が出ているのか。
と。
遠く茂みに、気配を感じた。
薄暗い森の中、分け入っていくと獣道じゃない、新しい踏み跡。
「…リィズ?」
影が、ギクリと動いた。
「来るな…」
細い声がした。 服を脱ぎ、コート一枚ひっかけて。しかし杖を手にしているから、襲われたわけではないらしい。
「具合でもわるいのか?」
はあはあと荒い息をしながら、蹲った背中が震えている。その足を仰々しい鎖が戒めている。
「なんだこりゃ」 「放っといてくれ!」
よくわからんがウィザードの儀式なんだろうか。聞くのは諦めたが、あまりに苦しそうなので身体を抱いて治療の魔法をかけてやる。
「うう…」
月が中天に達したとき。 …どこかで、聞いたことはあった。満月になると狼になる男の噂を。 「シグルド…頼む…逃げてくれ」
その手が、みるみる毛に覆われる。
――お前がレッドストーンを欲しがっていたのは。
頬を伝う一筋の涙。
しかしざわざわと伝う魔の気配。魔狼の気配が。
魔狼が、一声吼えた。 もはや完全に狼になってしまったリィズ。シグルドの腕から逃れようと、唸り声をあげて噛み付く。
「…つっ。」
牙が食い込み、血が溢れた。
…怯えている。
「だから俺は敵じゃねーって」
腕を噛まれたままで、シグルドは犬を馴らすように体をぽんぽんと叩いてやる。 ガサガサと音がして、
「シグルド!大丈夫か?!」
飛び出てきたのはビート。魔狼はシグルドの腕を離し、唸り声を上げた。
「ビート!待て、来るな…」
シグルドを振り払い、魔狼がビートに飛び掛った。しかし後ろ脚に逆茂木のように食い込んだ鉄の輪。鎖がいっぱいに伸びて、引き戻された。 魔狼がぎゃあっと吼えた。 鎖に気づいて、噛み千切ろうとするもできない。どころか、暴れるほど鉄の刃が脚に食い込んでいく。裂けた肉からぼたぼたと血が流れた。
「あいつ…なんてことしやがる」
魔狼は怒りに荒れ狂った。 その瞳が、シグルドに向いた。
「危ねぇっ!」
ビートが飛び掛る。
「ビート!傷つけるな!」 「ンだって?!」 「そいつが…リィズだ」 「冗談じゃねえぜ」
さっさと一人で腑に落ちて、攻撃をやめてしまったビート。
「ごめんな怖かったな。よしよし」
体を撫でてやる。
「よしよしじゃねええええ!」
シグルドが頭を抱えた。 ビートはアホなので相手の状況など読めない。鋭い牙の下、差し出されたままの首。たやすく食い千切れるだろう。 だがその行動を理解できない、碧色の瞳に迷いが。
「ははッ。目の色は変わんねえのな、お前」
中天から――月が動く。
朝の光に、目を覚ましたリィズ。
「…ッ」
がばっと起き上がると、辺りを見回す。二人の仲間の姿。よかった。生きてる。
「け、怪我は?」
聞いた。
「アホ。そりゃお前だろうが。」 「動物虐待だ、まったく」
気がつくとベッドの上。脚には包帯が巻かれている。
…故郷を追われ、何度も狩られそうになった。はぐれウィザードが一人で生きていけるわけもなく、PTに入っても、露見したが最後狩られるか売られるか、そうなればもう戦うしかない。
「…僕のこと、どうする?」
「どうするって…」
シグルドとビートは顔を見合わせた。だがすぐにビートは真顔で答えた。
「やっぱあれだな。食い物で釣る!」
意外と動物好きなビートだ。
「ちょ。お前何の話を」
シグルドは当然それに吹き出したが、
「…いや…そうだな。ああ、調教して芸でも仕込むさ」
案外、それでいいかもしれない。
*
そして、シグルドは目を細めて、二人の仲間を眺めていた。
「何にやにやしてんだよ?」
ビートに小突かれて我に返る。
「何でもねぇよ」
シグルドは仏頂面に言い放ち、二人の頭をぐしゃぐしゃと無理やり撫でた。
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・DJ的には最年少の剣士君が好みです^^属性はリバだよ!(お前もう黙れ)
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