以前に仕立てた同じ意匠(*)の「桑田碧海」は裂の持主に差し上げました(画像6枚目[477])。筥迫の小さな面積にゴージャスな金駒刺繍が凝縮されると景色が変わると大層喜ばれ、是非もう一つ作って手元に残しなさいと同じ着物の片身古裂を下さったので姉妹筥迫にしました。 お着物を解いた裂にはもう片身ごろあるというところに何ともロマンを感じてしまいます。 今回の意匠では、青く爽やかな前回(6月)と気分もちがって、月夜の晩に黄金に輝く浪間の天変地異を表現しました。 表布:古布縮緬刺繍入り(江戸縮緬で柔らかくて薄くてしっとり) 内布:絹(モチーフは喜多川歌麿。働く女性を描いた『女織蚕手業草(じょしょくかいこてわざぐさ)』(1798-1800年)。12枚の蚕の成長シリーズ物で絵はすべてボストン美術館収蔵) 玉縁:ポリエステルシャンタン生地白 緒締め:ベネチアンビーズ 24ktゴールドフォイル 丸玉約8mm トパーズ 飾り房:江戸打紐の榛(はしばみ)色と乳白色(昇苑打ち紐)の2色。やはり人八は太くごついので8連段に抑えて切り房はやや増量。 びら簪金色アンティーク、縢襠付筥迫、綿入れ玉縁仕上げ。 6作目の被せ胴締め(キルティング芯のみ)よりもふっくら(厚地接着芯+キルティング芯の二重)、胴裏の鏡周りも裏打ち?補正がきいてなめらかになりました。なのに被せ下外箱にしわが。水分で伸びる縮緬と硬い刺繍に引っ張られたか難しいです。 【禁断の緒締め玉】金色のガラスビーズがどうしても使いたくて…ついにビーズリーマーなるものを購入して穴径を拡張しました。Rom筥さまのブログカテゴリー「筥迫材料-緒締」をのぞくと、緒締に凝りはじめると際限がないことが伝わってきました。美しく魅惑的なパーツだけに深みにはまらないよう自重したいものですが…なんとも。
------------------------------------------- (*)中国故事「桑田碧海(そうでんへきかい)=世の中が激しく変化する」を表す趣向。昔、仙人の王の宴に招かれた美しい仙女「麻姑(まこ)」が長い年月の間に、広い東海の水が干上がり桑畑に変わるのを三回も見たという逸話から。 【しつらい】三回の天変を、胴締め・被せ・被せ下の三箇所に金糸刺繍の柄出しで表現。表布は紺碧の海と浪間に浮かぶ金色の葉の見立て。内布は養蚕の仕事で働く女性たちの絵で、浮かぶ葉っぱが桑だったという謎解きの答にしました。
ちゅん [517] 10/21/(土) 18:15:37
確かにこんなにすてきな筥迫をいただいたら感激されるでしょうね。
姉妹筥迫に趣向を変えて作るというアイデアも素敵です。 嚢物というのは、こういったこだわりを込めるのがたまらなく楽しいのですね。
しかしまた硬い石をお使いになったようで、リーマーで穴拡張では相当大変だったと思います。 私は最近は水晶未満の石しか使わなくなりました(硬度6以下)。 それでも石を多く使うようになったら、ちょっと奮発してルーターにシフトしたくなると思いますよ。
いい裂を使ったときは、絶対に天然石に!とは言いませんが、それなりにこだわりのある緒締めを使った方が良いです。 このワンポイントによって仕上がりが断然違います。
rom筥 [519] 10/21/(土) 21:49:46
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