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音速針鼠で801スレ専用小説置き場

ぬるいナコシャナコ (50)
日時:2009年05月12日 (火) 00時40分
名前:ななし

名無し氏のガウェランに滾ってしまったので突発的にナコシャナコ。
イメージやキャラ違ってたらごめんなさい。







開けた窓から爽やかな風が入り込んでくる。
この部屋は人がいるにもかかわらず静かで穏やかで、鳥の声がやたら響いた。
春爛漫というか何というか。オレはあまり風流とかよくわからねぇけど。

ちら、と隣に目配せするとシャドウはまだ無表情でケーキを食べていた。
その視線はしっかりケーキに向けられて外される事は無い。
このケーキは甘い物が好きだと言うこいつの為に、このオレがわざわざ作ってやった物だ。
文句でも言ってきたら殴ってやろうかと思っていたのだが意外にもシャドウは素直で、
釘付けとでも言った方がいいくらい夢中でフォークを進めている。
駄目出しされても腹が立つがこの反応はこの反応で照れ臭くて嫌だ。
あぁ、チクショー。こんなのリアクションに困るじゃねぇか馬鹿野郎。
「美味いか?」
「あぁ」
そう返事をするコイツはいつもに比べて随分と柔らかい顔をしている気もする。
ケーキ1つで、だ!餓鬼かまったく。
心の中で悪態を付きながらも嬉しいと思う気持ちを否定できずに、オレはそっぽを向いた。

ふ、と考える。オレとコイツはいつの間にこんな仲良くなったんだろう。
つい最近までは(と言っても随分前の事の様に感じるが)知り合い以上友人未満と言うか
交流が限りなく浅い、出会ったら挨拶をする程度の関係だったはずだ。
むしろ何となく気に食わない存在でさえあった気もする。
それが今は頻繁にお互いの家に通い合ったりして、そのまま泊まってしまう事も度々だ。
下手すれば今のオレの日常生活に一番関わってるのはコイツになってしまう。
……いや、下手しなくてもそうなんだが。

しっかしまぁ、友人って言うには仲が良過ぎやしねぇか?
よくよく考えてみると本当に不自然な関係だ。
お互い特に用もなく会い、特別何をするでもなくぐうたらするだけ。
シャドウもオレも話上手って訳じゃないからとくに喋ってて盛り上がるわけでも無し。
ただたまにポツリポツリとどうでもいい冗談を言ったりして。それに笑ったり、腹を立てたり。
そしてそれが全く苦痛じゃなくて、むしろ居心地が良いと来たもんだ。
こんな関係はまるで……イヤ、イヤイヤ、ありえねぇ。全くもってありえねぇ!
オレは自分の発想を思いっきり否定した。
オレは立派に男だし、コイツだってどうみても男だぜ!?
何が『まるで恋人みたい』だ!オレは馬鹿かっ。

「ナックルズ」
「お、おう。どうした」
考えに没頭していたオレは急に現実に引き戻される。
いつの間にかケーキを綺麗に食べ終えていたシャドウはじっとこちらを見ていた。
そして呟くように口を開く。
「僕は、好きだぞ」
「!?」
こ、こここいついきなり何を言ってんだ!
心が読まれたんじゃないかとオレの頭の中は真っ白になって、次の瞬間には頭から蒸気を出す勢いで血が駆け巡っていた。
「な、な、」
オレは何の言葉も言えずに口をただパクつかせる。
落ち着けオレ!冷静になれ!
どう考えてもこれはオレじゃなくてケーキの話だろうが!
そう気付いても顔の熱さは治まらない。
チクショウ!こいつがこんなタイミングでこんな事言うからだ!
「な、何を赤くなっている?  ……ッ!!」
シャドウもオレの考えていることに気が付いたらしくみるみる内に羞恥で耳まで真っ赤になった。
実に珍しく可笑しい光景だったが今のオレにはコイツを笑う余裕は無い。
「き、君は何を考えてるんだ!僕が言ってるのはケーキの話だ!」
「そんな事判ってるってーの!」
「じゃあなんだその反応は!」
「しょーがねぇだろうが!お前だって顔真っ赤な癖してよ!」
オレは自分のことは棚に上げてシャドウを指差す。
オレの顔だってやたら熱い。多分シャドウに負けないぐらい顔が赤いんだろう。
まったく自分が嫌になるぜ!何が悲しくて野郎二人で照れ合わなきゃならねーんだ!
「バ、バ、バカじゃないのか!」
シャドウの顔は赤さを指摘された事でさらに赤くなり、照れを隠すように語気も強くなった。
「うるせぇ!馬鹿にすんな!」
オレも何だかやたら恥ずかしくて怒鳴り散らした。
頭が熱を持って、ただとにかく大声を出すことで恥ずかしさを吹き飛ばしたかった。
言葉の内容なんかはどうでもよかったのだ。
「大体いつもお前は言葉が足りねぇんだよ!少しは相手の事も考えろ!」
オレは言い切ってから少し言い過ぎたかと心の奥で悔やんだが、もう遅い。
シャドウは本気で癪に障ったのか、ピクリと体を反応させた。
「僕に非があると言うのか!?
 普段言葉が足りないのは君だって同じ事じゃないか!」
そう言うシャドウの顔が段々と険しくなっていく。
「どう考えてもお前よりはマシだろうが!この無愛想野郎!」
オレの言葉もそれに合わせる様に棘が含まれていく。
これは、まずい。この流れは喧嘩になる流れだ。
オレの頭の奥、冷静な部分が危険を必死に訴えていた。
おいおいおいシャドウお前少しは落ち着けよ!オレは別に喧嘩がしたいわけじゃねえんだ。
オレも落ち着くからよ、な?ここは両者引こうじゃねえか。
「あぁ君が足りないのは言葉ではなくオツムの方か!それでは救いようが無いな!」
「何だと!?」
思惑とは打って変わってオレは条件反射でシャドウの言葉に噛み付いていた。
しょうがねぇだろうがそういう性格なんだよオレは!侮辱されて黙っていられるか!
「テメェ言って良い事と悪い事があるぞ!」
オレの剣幕にもシャドウは嘲笑で答えた。
その顔がすげー憎たらしくってオレは思わず右手を振り上げるが、寸でのところで思い留まる。
落ち着けオレ!ここで暴力に走ったら最後、本気で血を見る喧嘩になるぞ!
少なくともオレはこんなつまらない理由で争いたくない。
振り上げた右手を震わせながら、オレはオレの心を宥めようと必死だった。
あぁちくしょーなんでこいつはこんなに人を怒らせるような素振りをするんだ!(噛み付くオレもオレか?うるせえ!)
「……」
シャドウが右腕を上げたまま殴り掛かってこないオレを訝しむ様に睨んでいる。
手を出してみろ、こちらも容赦しないぞと目が言っていた。
オレはオレの憤りに振り回されて右腕を下ろす事もできず
この場を収める様な言葉も思いつかずで完全に身動きが取れなかった。
オレはどうすりゃいいんだ、これは。謝ればいいのか?
『今言った事は照れ隠しなんだ、すまねえな』とでもオレの口から言えってのか?
いきなり過ぎるだろ!それにオレのプライドが許さねぇ!
オレがソニックみてえに上手いこと口が回ったら苦労しねえがそんな風にもできやしねえし。

シャドウ、お前だってこんなにつまらねえ事で喧嘩はしたくないって思ってるんだろ?
ただオレと同じ様に照れた想いを隠したくて、勢いに任せて言っちまったんだろ?
お前がどうしようもねぇ程不器用な奴ってことぐらいオレは知ってんだ。
不器用で、無口で、無愛想で。悪態を付くときだけやたら元気になりやがる。
それでもオレは、お前のそんなとこ嫌いじゃねえんだよ。
あぁちくしょう!何で此処まで解ってて意地を張り合っちまうんだオレ達は!

「ちくしょう!」
気付いたらオレは勢い良くシャドウを抱きしめていた。
「!?」
シャドウの息を呑む声。クソ、そりゃ驚くだろうな!
それでもコイツが特に文句も言わずにこの状態をすんなり受け入れてくれたのでオレはほっとする。
オレの想いは口では上手く伝えられそうにないから行動で伝えようとして、
シャドウの胴体を力一杯(といっても多少の加減はする)締め付けた。
オレは顔を見られたくないし相手の顔を見るのも怖い。
今どんな顔をしているんだろうか、オレは。コイツは。
(もしシャドウがまた嘲笑っているならオレにはもう打つ手がねぇ。喧嘩になっちまうだろう)

沈黙が降りて、心臓の音が響いた。
相手の距離が近くてそれがどちらの音なのかは解らない。
「君は」
沈黙を破るようにポツリとシャドウが呟いた。
その声色が随分と優しく響いてオレは面食らう。
「……何だよ」
いきなり抱きしめておいて何だよもねぇもんだ!
そうオレは自分に突っ込んだが、シャドウの方はクスリと笑っただけだった。
そしてゆっくりとオレの体に腕を廻して、宥める様に背中を軽く撫でる。
「…君は、不器用だな」
シャドウは穏やかに、少し呆れながらそれでも愛おし気にそう言った。
「っお前には言われたくねぇ」
オレは軽く悪態を付きながら抱きしめる腕に力を込める。
「流石に苦しいぞ」
「うるせぇ」
シャドウが苦笑してるのが顔を見なくても解る。
それでも拒まれている気はしなくてオレは力を緩めようとはしなかった。

オレ達はしばらくそのままで話をした。話といってもたいした事じゃない。
いつもと同じ様なくだらないとりとめも無い話だ。
バカだとかお前こそとか、間を取ってソニックがバカだってことにしようとか。(他愛もねえジョークだぜ?許せソニック)
ただオレはそれだけで何となく幸せな気分になれたんだ。



それでその後は普通に音楽を聴いたりテレビを見たりして何時も通りぐだぐだと過ごし、
気付いた頃にはとっくに日が暮れていた。
「そろそろ僕は御暇しよう」
シャドウがふ、と外に目を走らせる。外はもう真っ暗だ。
「そうか?夕飯ぐらいこのオレが振る舞ってやってもいいぜ?」
「……いや、今日はいい。気持ちだけ貰っておこう」
シャドウは少し迷ったようだが首を横に振り、立ち上がる。
オレも「そうか」とだけ頷いて、大きく伸びをした後立ち上がり、
そのまま連れ立って特に話もせずに庭先に出た。
春といってもまだこの時間は風が冷たい。オレは肩をすくめる。
「今日は………」
シャドウがオレの顔を見つめて何か言おうとした。
『楽しかった』とかの言葉が続くんだろうなとオレが待っていると不自然な沈黙が周りを包む。
気付けば、シャドウの顔は再び真っ赤に染まっていた。
「な、な、お前どうした!?」
オレはそりゃあもうびっくりして滑稽な程うろたえてしまった。
今日は二回目だが、こんな顔コイツは滅多にしねぇんだぞ!
「い、いや、いい。なんでもない」
「なんでもないじゃねーよ!明らかに様子がおかしいじゃねえか!」
問い詰めるオレにシャドウは観念したのか真っ赤な顔をさらに赤くしながら口を開いた。
「きょ、今日の、あのやり取り覚えているか?」
「おう」
今日のやり取りというのは、まぁ喧嘩になりそうになったときの事を指すんだろう。
「あんなやり方は、だな、まるで……」
オレの視線を避ける様にしてシャドウは半分ヤケになりながら言った。
「まるで、恋人の様、ではないか……!」
「な、な、な、」
何言ってんだコイツ!頭がおかしくなっちまったんじゃね―の!?
シャドウの言葉にオレの顔は懲りずに赤くなった。
まるで恋人だって!?確かに、確かにそれっぽかったかもしれねえし、
まぁ、オレだって今日そんなこと考えてみた事もあったけどよ、ほら!違えんだよ!
何が違うかは知らねえけどとにかく違えんだ!否定しろオレ!
それでもオレはそれに反論できずシャドウもシャドウでオレの反応に戸惑って言葉が出ずで
結局オレ達はただ真っ赤な顔でしどろもどろする羽目になった。

もういいだろうオレ!今日はもう十分赤くなっただろ!シャドウもそんな顔やめろ!
そんなオレの願いだけが空しく心の中で響く。
冷たいはずの風が顔の熱さで全く冷たく感じなかった。


 (51)
日時:2009年05月12日 (火) 06時39分
名前:ナナシ

純な二人に禿萌えました!GJ!

 (52)
日時:2009年05月12日 (火) 16時46分
名前:氷香梨

ナコシャ大好きな私にはたまらない作品です!
素敵な小説ありがとうございました!!



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