シャソニで発情期ネタでえろ (38) |
- 日時:2009年05月04日 (月) 16時52分
名前:名無し
※タイトル通り、ちょっと前にスレで発情期の話題が出た頃に書いたもの。春が終わりそうなので供養。
帰宅してみると、自分ひとり暮らしのはずの部屋に、明らかに別の誰かの気配があった。 正直、いつものことすぎてまたか、と思う気にすらなれない。鍵を渡しておいて良かったと感じるのは、こういう時だ。少なくとも、正面から入って来たのだろうと想像はできる。以前はどう考えても不法侵入だった。 いつものことだがいつもと違うのは、ダイニングに入ってもソニックの姿を見つけられない点だった。ドアに背を向けて配置されている、彼の指定席となりつつあるソファを覗いても、そこは空だった。常ならここに寝そべって、シャドウが帰宅すればひらひら手を振りながら、軽口のひとつやふたつ投げてきたりする。そうでない時は、日当たりのいいここで昼寝して、寝過しているかだ。珍しく日のある内の帰宅というのに、このふたつのどちらかに当てはまらないのは本当に珍しい。 ソファの座席に触れてみる。あったのは、日溜まりの温度だけだった。シャドウは窓際に歩み寄り、ブラインドを下ろす。ここでなければ、心当たりはあとひとつしかない。溜息を落とし、寝室へ足を向けた。 明かりをつけるかどうかを、少し迷った。カーテンも閉め切って薄暗い部屋の空気が、奇妙に湿って感じたからかも知れない。水気があるだけでなく、酒精も混じって感じるのだ。勿論それは、錯覚だろう。ただわけもなく、何かもわからないものにあてられそうになる。振り払うように、シャドウは軽く頭を振った。酩酊感が余計に増した。 「ソニック」 赤いスニーカーはベッドの下に、乱雑に脱ぎ投げられたように転がっていた。靴下ごとだ。この調子では、手袋もその辺に捨てられているかも知れない。ここまでしておいて、本人はベッドの上で丸いシーツの塊になっているのなど、今までに例がない。したくなったらなったで、こちらの都合もお構いなしにじゃれてくるのがいつものソニックだ。それが今は、妙に回りくどい。様子がおかしいのはわかったが、何故かこの時、真っ先に思い浮かべそうな体調不良という理由は想像さえしなかった。空気の湿りが、毛筋の一本一本にすら染みてくるようだった。不意に、シャドウは喉の渇きを覚えた。 「……ソニック?」 もう一度呼びかけても、やはり返事はなかった。ベッドに膝をかけると、体重による軋みだけでなくシーツの塊が揺れた気がした。手をかける。大仰な震えが、手袋越しに伝わってきた。 シーツを剥ぐのにも、思っていたほどの抵抗はなかった。ただその下のソニックの様子に、シャドウは驚いて手を止める。何に対してか、ソニックが悪態を吐く、その声がどうしようもなく湿っている、いや、濡れていた。 被毛に包まれていないむき出しの素肌の部分は、薄暗がりにも、余すところなく上気しているのが見てとれた。総毛立った毛並みが酩酊めいた湿りを帯びているのを見て、このせいかと何とはなしに思う。耳の先が時折悶えるように動くのも、吐く息が熱いのも、どれもこれも覚えがあった。うつ伏せている身体を仰向けに返して、緑の瞳にどれほど水の膜が張っているかを確かめてみたい衝動に駆られる。いつにない性急さに、シャドウは自分で驚いた。 再三、名前を呼びかける。喉の渇きが唾液と絡んでひりついた。返事がないので、肩に手をかける。その感触が手袋越しであることを含め、焦燥に逆らいもどかしいほどゆっくりと、ソニックを仰向けにさせた。忌々しいものを見るようにこちらを睨む緑は、やはり想像どおりの水分を湛えていた。まだ何もしていない、けれど、まるで既に、 「ムカつくな」 「何がだ」 熱を孕むと、言いがかりさえ睦言に響いた。完全にあてられて、ペースを乱されている自覚が今頃追いついてくる。冷静な判断ができなくなりそうだ。 「どうしてそう、涼しい顔してられんだ? お前だって、同じハリネズミだろ」 「だから何がだ。理解を求めているなら、言葉を選べ」 「季節を考えろってことだよ、Blockhead」 考える前に、濡れた息を吐くその口を塞いでやりたいと思った。ソニックの短気がうつったかのようだ。視線を外さず、布地を噛んで手袋を脱ぐ。言われたとおり頭の端で、今の時候を考えてみる。雪が溶けてゆるむように気温が上がり、それにつれて浮かれてきたような街の空気と、そこにも薄くほのかに漂っていた酩酊感、そして、それを濃くしたようなこの部屋と彼について。そこまで考え、ああ、と気付いた。口角が上がる。 「――僕は十分、正しい手順を踏んでいると思うが?」 「よく言うぜ」 被毛のない胸に手を置くだけで、無意識にか、ソニックは満足そうに喉を鳴らす。思考が麻痺しそうだ。考えることを放棄したくなる。 「正しいだろう。発情した君に触発されている」 「お前も今頃、グダグダになってると思ったんだよ」 「君と違って、僕には本来不要な機能だからな」 究極の生命とは、本来そういうものだ。他を必要とせず、増えることも継がれることもない。他を求めたことがそもそも異常なら、最後として彼を選んだのも異常の延長だろう。そのせいで巻き込んで、発情して駆け込む先が同性のシャドウという状態に“してしまった”と言えば、ソニックは怒るだろうが。だから今は、口には出さなかった。 「ソニック」 撫でるように、上気した身体のそこここに触れるだけでも、ソニックは呼吸を乱した。かけらでも理性が残っている内に、耳の先に唇を寄せる。触れると嫌がるように震える、尖った先端を舐めながら、言葉を吹き込んだ。 「去年まではどうしていたんだ?」 直後の反応の大きさに、シャドウは吹き出したくなった。ソニックの表情は最高に忌々しそうだ。歯噛みするような間の後、殆ど捨て鉢の返答を得る。 「……落ち着くまで適当にガマンしてたさ。でも今年は、お前がいるから、余計に」 「そうか」 「これで満足かよ?」 ああ、とシャドウは頷いて、ソニックの口を塞いでやった。答えとしては上出来だ。 去年の今頃の記憶は、シャドウにはない。おそらくはエッグマンの基地の片隅で、眠らされていた。たかだか一年足らずの内に起きた出来事と、その短い期間でここまで来たという不思議を、今更ながらに思った。
シャドウが後ろに手を伸ばす頃には、ソニックは既に泣き声だった。 シーツを掴む指先も力なく、腰を上げるために立てさせた膝は何度も崩れかけ、そのたびにシャドウはソニックの腹を抱く手に力を込めた。背後から覆い被さる姿勢に、時折わざと体重をかけるとソニックの背中はたやすく沈む。それを無理に引き上げ今の体勢を維持させるたび、ソニックが喘ぎの下で途切れ途切れに悪態を吐き、文句を投げてくるのが楽しかった。君の怒った顔が嫌いじゃない、そう言えばソニックはきっと悪趣味だと返すだろう。問題なのは、本当に彼の怒りを好ましく思っている点と、治す気もないことだ。 手と口とで二度解放に導いてやってから、中心には全く触れていない。身体は完全に弛緩しきって温かい泥のようになっているのに、そこだけがまた熱が集まって勃ち上がっているのは知っていた。触れてもいないのに、汗ではない滴をシーツに零すそれを持て余して、ソニックの腰が揺れることも。腹を抱くシャドウの腕なりシーツなりに擦りつけたいのだろうが、敢えてそうはさせなかった。それでいて、耳やトゲの付け根といった他の敏感な部分には惜しみなく触れるものだから、張り詰めた中心がいっそ哀れな状態になっている。 「シャドウ、」 呼びかけたソニックの語尾は喘ぎに呑まれて続かなかった。ゆるく周辺をさすっていたシャドウの指先が、内側へ潜り込んだためだ。身を捩って睨んでくるソニックの緑がこれ以上なく濡れているのに、シャドウは満足を覚える。意地が悪いと思うなら、そういう相手を選んだ自分に後悔すればいい。後悔したところで、現状が変わるわけでもないのだから。 受け入れ、ここで快楽を得ることを知っている内壁は常以上に熱く、柔軟だった。てのひらで尾を揉みこむようにしながら解してやると、二本目の指への抵抗も少なかった。伸び上がり、耳のふもとから頭のトゲの先までを、流れをなぞるように舌先で辿り、歯を立て、首の裏に噛みつく。小さな仕草のひとつひとつに、ソニックは律儀に反応を返した。中を探る指の動きが多少乱暴になろうと、熱く荒らぐ息から濡れた声が立ち昇るのも変わらない。堪りかねたように首を振るのに、ひどく凶暴な気分が満ちてくる。今すぐにでも突き入れて揺さぶりたかった。けれど同じぐらい、聞きたくもあった。 感じやすい浅い場所を、広げるようにぐるりと撫でてやる。ひと際高くなった声は涙混じりだった。欲情が背筋を駆け上がっていく。 「もう、もう、嫌だ、嫌だシャドウ、シャ――」 どうしようもなく懇願が滲む声が言い終える前に、シャドウは一気にそこへ押し入った。言葉が歓喜とも悲鳴ともつかないものになったのも束の間、声さえ奪われたようにソニックの息が掠れていく。押し入るものに絡んだ熱の意味を考えるまでもなく、答えはソニックの様子が教えてくれた。張り詰めていた中心はまだ吐精の余韻に二度三度と震えており、一瞬意識を飛ばしたのか、呆けたように開かれたままの唇から、断続的で深い呼吸が聞こえる。それも長くはなく、ソニックの喉がひきつった。達したばかりで敏感になった感覚には、中で膨らんだシャドウが圧迫になったのだろう。 待てと言いたかったのだろうが、ソニックの言葉は音にならなかった。口だけが形を作り、漏れたのは掠れた息だけだった。逃れるように指先がシーツを掻き、膝が身じろぐのを押さえつける。元々ぐずぐずになっていた身体は、腹を支えていたシャドウの手が腰を掴む程度で些細な抵抗さえなくなった。 「逃げるな。僕はまだ満足していない」 「だからって、ちょっとは休ませ、あ、動くなっ」 「悪いが、君を待っている余裕はないんだ」 待ちわびて吐息混じりになった声を吹き込むと、ソニックはびくりとした。同時に、埋められたシャドウのものを熱く喰い締めてくる。ずっと付きまとっている酩酊感が、思考を赤く灼いていく。ソニックがいつも求めてくるような、楽しむためのものではなく、余裕なく、互いの熱をぶつけ合うような行為に、身体の奥底で一本芯の通ったものが揺さぶられた。それを本能とも呼べることは、後になって気付いた。人工の身体にもそうしたものを見つけられた感動に、理性が痺れる。 うわ言のようにソニックが名前を呼ぶのに、いちいち応えてやる。返して呼びかけると、内側の反応は顕著だった。奥へ奥へと穿ち、突き上げるたびにソニックの口から泣き声が落ちた。それにまた煽られ、無意識に逃げを打つ腰を掴んで強く打った。噛みついた首筋から、鉄の苦味が滲んだ。シーツを掴むソニックの手に自らの手を重ね、ぎゅっと抱きしめながら彼の内へ注ぎ込む。組み敷いた身体が、断続的な飛沫を受けての振動を伝え、目前で青いトゲが揺れた。数拍遅れ、ソニックも達したのがわかった。 は、と息を吐く。熱の残滓が尾を引いた。シャドウが内から立ち退く動きにも、ソニックは喉を鳴らした。寝返りを打って仰向けになり、足りない酸素を味わうように深呼吸を繰り返している。その胸も腹も腕も、まだ色づいており、被毛の薄い内股から素肌の腹にかけてを、自ら放ったものが濡らしていた。何となく目を逸らしたシャドウの視線を連れ戻すように、ソニックがふらつく両腕で頭を抱いてくる。応えて、キスをした。 「……君は」 深くなるくちづけの合間に呟く。溶けた理性が戻りきらない緑の瞳が、ぼんやりと問い返した。 「もう一度と言えば、怒るか」 瞬きを繰り返した後、ソニックはニッと口の端を吊り上げた。頭を抱く手が、毛筋を掻き乱すようにくしゃりと撫でてくる。またキスをされて、何度か互いについばみ合った。 「落ち着くまで適当に付き合ってもらうつもりだったって言えば、怒るか?」 「泣いていたくせに?」 「アレはNo coutだ、忘れろ」 「断る」 騒ぎだされる前にソニックの口を塞いで、なだらかな腹部を辿る。シャドウの手がまた中心に触れず通り過ぎると、くぐもった抗議が塞いだ口から漏れた。無視して口腔を舌で探っていると、仕返しのように甘く歯を立てられる。薄暗かった部屋は、いつしか春の夜の闇に包まれようとしていた。
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