バレンタイン話その1 (6) |
- 日時:2009年02月14日 (土) 15時39分
名前:965
>>944、949様のネタを使わせていただきました。 かぽー要素なんてありません。ソニックとシルバーでお送りいたします。
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毎年恒例つったらそうなんだけどな。
「ひいふうみい・・・。こりゃまた一杯貰ったもんだねぇ俺も」 機能してるのかしてないのか分からない家へ久々に帰ってみると玄関目の前には大量の箱。 可愛らしい色のタータンチェック、鮮やかなグラデーション、チャオの絵柄の入ったものなどなど・・・様々な包装紙で包まれたそれが山を成していた。 この時期で来るプレゼント・・・といったら一つしか無い。いや、誕生日とかじゃなくて。 何処かの地方から伝来してやってきた『バレンタインデー』、だ。
普通バレンタインデーと言ったら女が男に――というのが定石だが最近はそうじゃないらしい。 逆チョコ、だとかなんとか。要するに男が女に、って事だろう。 でも国によっては女から男へ、が逆チョコだったりするよな。
「・・・、いやでも俺こんな食えないな」 チョコは少し放っておいても腐りはしないが流石にこれは多すぎる。 例年の事と言ったらそれまでだが、今年は妙に多い。 ――ああ、世界中旅したから?まいったね。 ・・・という自惚れはさて置いて。
「はぁー・・・つっかれた」 山を成していたプレゼントを掻き分け掻き分け、奥に埋もれていた扉を開ける。 扉を開けた瞬間にどざぁ、とそれは決壊した川の様に室内へと流れ込んだ。 そして外に残った奴らを残さず部屋に入れてようやっと一息。
同じ様に自分もソファに雪崩れ込んで側にあったチョコに一つ手を伸ばす。 キレイな包装紙を破くのは勿体無いがそれを丁寧に剥がすのが面倒臭いのでびりびりと破り捨てる。 そして箱を開けて一口。 「あー・・・・。・・・・ん゛、・・・甘っ!」 予想外に甘すぎて思わず飛び起きてしまった。 最初の一口目がこれは・・・衝撃が強すぎた。しかも妙にまろやか。 はっとして見もしなかったそのチョコの色を見てみる、と。 「Oh・・・ミルクか、これ」 普通よりも色の明るいチョコレート色。思わず苦笑いをしてしまった。 なんというか、ミルクは苦手なのだ。それと一緒でホワイトもあまり好きじゃない。
強いて言えばビターの方が断然好みだ。 といっても大概はスイートが大半を占めているから、それの割合は凄く低いけど。 理由は分からないが甘いミルクより、苦いビターの方が好きだ。といっても、ミルクが食べられない訳じゃない。 「でもやっぱチリドッグだよなぁ。辛いチョコとか無いのかねぇ・・・でも、あっても食べたくないな」
途中でそのミルクチョコを食べるのを放棄して、胃に入りきらなさそうなこのチョコ達をどうしようか考える。 やっぱり一番良いのは他人にあげてしまう事だろう。 誰がいいか・・・。
*
「・・・。えっ、マジ?」 「マジマジ」 誰がいいかと考えた結果、確か甘いのが好きだった真っ白いハリネズミにすることにした。 軽くその辺を走り回りながら探し出して、額にある掴み易そうなトゲを引っ掴んで直ぐに家へ連れて行った。 途中でトゲは止めろと言われて鉄コンテナをぶつけられた時以外はノンストップで。
「すっごいな、何なんだ?これ」 「チョコ」 「チョコ?・・・全部?」 そう尋ねられたので肯定の意味で頷いてやると目を丸くし、感嘆しながらそのチョコの山々を眺めていた。 その眺める目がなんとなくきらきら輝いてるように見えた。
「いいのか?本当に貰っても」 腕一杯にチョコを抱えて、わざわざ能力すらも使ってまでそれを運ぼうとするその姿はなんというか、 失礼な話、シュールだった。 「どうせ食い切れないからな」
「バレンタインデーってさ」 「ん?」
「お菓子一杯貰えるんだな!やっべー、いいな!」 あぁー・・んー・・・、駄目だ。ちょっと勘違いしてるぞ。 バレンタインデーはお菓子が一杯貰える日じゃないんだけどな。人によってはそういう日になるけど。 貰えない奴は貰えないからなー。 ちゃんとそういうのは分からせておくべきだろうか。そうだよな、それは間違った知識なんだから。
「ちょっと待てな。お前は勘違いしてる」 「へ、何を?」 「バレンタインデーは、お菓子が一杯貰える日じゃないぞ」
「えっ、マジ?」 「マジマジ」 なんかデジャヴだなこれ。 俺がそう教えると、きょとんと驚いた顔をしながら器用にチョコの包装を剥がしていた。 テープからちゃんと丁寧に。 それから「へぇー」と感心しながらその場に余ったチョコを眺める。 山になっていたそれはあとバケツ一杯分ぐらいしか残っていなかった。
どんだけ?
「って事は・・・、え、何の日なんだ?」 「感謝の気持ちとか、敬愛、愛情、友情、ついで、そういう気持ちを相手に伝える日」 「なんでチョコ?」 「別にチョコだけって訳じゃないぞ」 「なんでバレンタインデーって言うんだ?」 「それは昔・・・。自分で調べろ!」 なんで君かお前は! 知識を探求するのはいいけどさ、何でも人に聞くのは良くないと思うぜ。 俺だってちゃんと知っている訳でもないんだし。 そう叱られてごめん、と申し訳なさそうに謝ってから包装紙から取り出した箱の蓋を開ける。
「しかしそんな食えるのか?」 「余裕余裕、全然いける」 一つチョコを頬張りながらまったく苦にもならなさそうな顔でそう答える。 やっぱ好きって事は大事らしい。どうやら大量であっても難なく食べていってしまいそうな勢いだ。
「あ、それ扉から出るか?」 扉から出れずにうろうろしているチョコを見つめながら尋ねる。 あんな壁にぶつかっているのに中身が潰れたりしないのだろうか。
「あー・・・サイコスマッシュとか使っちゃ・・」 「止めろよ」 家を壊す気か。
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