| [175] 8月23日 |
- 日時:2019年08月24日 (土) 01時19分
名前:麻木りょう
朝早く目が覚めた。…というよりも、寝過ごさないように、と心に念じているうちに朝が来てしまったというべきか。 スコールは鳴ることのなかった目覚まし時計のアラームを解除して寝室を出た。
サイファーと暮らす寮の一室は本来ならガーデン職員用の特別仕様だ。家族を持つ者用に作られた部屋は広く、独りでは持て余してしまう。…それがたった一週間のことだったとしても。 リビングのカレンダーには今日という日が赤い丸で何重にも囲まれている。雑だけれど、特別であることは良く分かる彼らしいやり方だった。
今日は、スコールの誕生日だ。 だからといって何が変わるわけでもない。スコールは淡々と身支度をし、少し早く…始業時間に向けたそれとしてはだいぶ早い時間に部屋を出たのだった。
昨夕、任務を無事終えたサイファーから電話が入った。 かなり雑で、荒っぽい作戦ではあったが、思惑通りにコトが運び任務を遂行出来たという報告だった。本来なら無事の帰還と報告書を以って受け取るところだが、戻って来たときには彼なりに優先したいことがあるのだろうし、スコールもそれを受け入れたかった。 そういう意味で、今朝はやはり特別だった。
『夜行に乗る』 随分と強引に電話を掛けてきた割に、繋がれた電話で彼はそれしか言わなかった。 きちんと時間を伝えるよりも、どの列車に乗ったのか、バラムには朝何時に着くのか、そういうことを調べる時間にもスコールが自分のことを考え、かみ締めるだろうことを分かっているのだ。悪趣味だと思うが、本当のことなので文句は言わない。
あの時間なら、砂漠経由の列車に乗ったほうが早くバラムに着くけれど、任務明けに貨物列車並みの揺れを味わうのは一緒に派遣したメンバーも嫌がることだろう。恐らくはSeeD専用車両のある列車を選ぶはずだ。…けれど彼だけは、早く着く列車に乗ったに違いない。 だから、敢えてスコールはその時間を“過ぎて”から迎えに行く。
「…どうせ『遅いっ!』だなんて怒鳴られるんだろうな」
独り言ちてガーデン車両に乗り込むスコールの口の端は上がり、もはや嬉しさを隠せそうになかった。
////////////// 読んでくださってありがとうございます! サイトに前日22日までのことを書いた「8月22日」というお話がありまして、その続きで23日を書きました。 特別だと思わないように努める特別な日の朝のスコールです。 ポーカーフェイス気取ってみても、サイファー関係のことだとすぐバレます。 惚気やがって!みたいな感じで読んでいただけると嬉しいです。 トモさん、今年の夏も素敵な企画ありがとうございました!
2019/08/23 麻木りょう
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