【広告】楽天市場の超ポイントバック祭合計購入額に応じて、ポイント還元12月15日まで開催中

EXU小説投稿掲示板

*原則としてエヴァの二次創作でお願いします。 *LASでもLRSでもLARSでもカップリング無しでも異世界系でも学園モノでも大歓迎です。 *見るに堪えない内容、描写はご遠慮ください。

ホームページへ戻る

書き込む
タイトル:MOMOTARO 逆行

プロローグ

 今となっては、もう随分と昔の事になる。
 質素な暮らしながら、妻と二人で手塩にかけて育てた一人息子はその日、家を出て働くと、私たち夫婦に暫くの別れを告げていた。
 幾筋もの光が空から燦々と降り注ぐ夏の日の事だった。障子には青葉の影が映り、天の光が息子に注目を集めるかのように部屋へ射してきて、彼の顔が普段よりも眩しく見えたのを覚えている。
 正座をして私の向かいに座る息子は、頬を緊張させながらも、言った。
「都で刀鍛冶のところに弟子入りさせて貰う事になったんだ。俺には才能があるって」
 刀鍛冶士になるのが、息子の夢だった。いつからその夢を、どうして持ったのか、親のくせに私は知らない。ただ、その熱意が尋常でない事くらいは知っていた。
「先月行ったところで、頼んでみたんだ。そしたら、弟子入りさせてくれるって」
 そう言い終えて、息子はこちらをすっと見据えた。小さい頃頃弱虫と言われた面影も、今はもうどこにもない。もう十六才だ。
 最近肩が上がらないと思っていたが、そりゃあ、私も歳をとるわけだ。歳を取るのは早い、とよく老爺が言うのを耳にしていたが、この日は、初めてそれを実感した日でもあった。
 静寂が辺りを支配している。突然考え込んだ私を見て、息子が唾を飲み込んだのが分かった。だが、こちらの答えはもう決まっている。
「行ってこい」その言葉を理解したのか、彼の顔から緊張が解けたのが分かった。「お前なら、何でもできる」
「ありがとう、父さん!」

 次の日、息子は家を出て行った。この十六年間を思い出して感傷に浸らずにはいられないが、それでも、息子が立派になってゆくのを見ると、誇らしくもなってくる。
「それじゃ、行ってくるよ」
「気ぃつけろよ」どん、と気恥ずかしさから、息子の背中を力一杯叩いた。
 今度は奥から妻が出てきて、息子にあれこれと教えているが、息子は「わかってるよ、母さん」の繰り返しだ。もう随分と立派になったから、無駄なお節介にしかならないか。
「手紙、出しなさいよー」最後に、妻も言った。
 家の前のまっすぐな道に、息子が立つ。
 不思議と、その道は彼のこれからの進路を表すかのようで、その道まで、私は出ることができなかった。
「元気でな」
「うん、行ってきます!」
 それだけ言うと、息子は振り返らず、晴天の元、駆け足で都へと向かう。
 忘れもしない。それが私の見た、息子の最後の姿なのだから。

山礬 2009年08月01日 (土) 08時28分(39)
 
題名:

第一話:桃から始まるラブストーリー(嘘)

 平凡だったが、平穏な人生だった。
 洗濯をしながら老婆は、もう五十年に近しい長かった人生を振り返る。
 先代より受け継がれた豊満な土地のお陰で人並みよりは豊かな生活を送っていたし、今頃芝刈りをしている爺様も私も、この歳でずっと健康だ。どれもこれも、輝くお天道様のご加護があるからに違いない、と思う。
 洗濯をしている川の水は、夏であるのに随分と冷えていたから、汗はかかなかった。寧ろ、冷たさが体内に巡り巡って寒いくらいだ。天の光に輝く水面(みなも)は、それ自体が巨大な龍であるかのように並々と全体をうねらすかのように流れている。そこに手を突っ込む自分は、さしずめ龍を撫でる老婆であり、なんだか随分と滑稽に感じられた。
 思わず頬笑みを零す。彼女のその姿はとても老婆のようではなくて、中からは若さが滲み出て、まだ活発な少女のような無邪気な可愛らしさが今だに残っていた。
 そういえば、と彼女は思い出す。
 あの日、息子が出て行ったあの日も、龍が今にも飛び立ちそうな雲一つ無い青空の夏の日だった。
 家を出た後、まだ一度も会っていない。鍛冶士の職には成功して随分と忙しいらしいけれど、手紙は三月(みつき)に一度くれたのだが、それももう五年も昔の話だ。
 手紙の来る日は一年に一度、一年半に一度となり、もうここ三年ほど、手紙は来ていない。
 向こうで上手くやっているかどうか、些か心配だ。
 なんでも、噂では、今の都には人を喰らう鬼が出て、手当たり次第に店を襲い、酒を奪い、女を奪い、人の命を奪うらしい。国から討伐隊が出ているというが、ことごとく返り討ちに遭っていると聞く。
 鬼なんてものは所詮空想の産物としか考えていなかったが、こうも便りがないと不安になる。
 もう二十六になる息子はどれほど成長したか、と老婆は思いを馳せ、洗い終えた洗濯物を笊(ざる)の中に片付ける。

 しかしながら、思慮に耽り空を眺めていた彼女の視線は、ここで再び川へと引きつけられる。
 視界の隅に何か丸い物が映ったかな、と思い、そちらの方へと顔を向けた刹那、目を見開いて驚愕へと表情を変えた。

 どんぶらこっこだった。

 この光景を、恐らく私は一生忘れないだろう。普段流れてくるものといえば、水と枯れ葉だけのそう深くない川の上流からは、何か巨大な丸いものが、蓮の葉よりも更に大きな葉に乗って流れて来る。まるで担がれた御輿のように堂々として流れるそれは、巨大な桃だった。一瞬目を背けたくなるような神々しさを纏いながらも、一瞬たりとも決して目を背けられないその巨大な桃が、こちらへと流れてくるではないか!
 なに、あれ?
 思わず呟いてしまった彼女を、一体誰が咎めよう。

山礬 2009年08月01日 (土) 08時29分(40)


Number
Pass

ThinkPadを買おう!
レンタカーの回送ドライバー
【広告】楽天市場の超ポイントバック祭合計購入額に応じて、ポイント還元12月15日まで開催中
無料で掲示板を作ろう   情報の外部送信について
このページを通報する 管理人へ連絡
SYSTEM BY せっかく掲示板