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「ここは・・・そうか、LCLになったのだな、私は。」
そう、彼はとうとう到達したのだ。自分の夢の終着点 LCLになり碇ユイと再会するという夢、自分のすべ
てを捨て叶えた夢、そう、自分の息子さえも捨てて・・・
「さて、ユイはどこにいるのだろう?」
早速、意中の人物を捜す。そして、その人物はすぐ近くにいた。
ゲンドウは駆けだした。その顔には今まで押し殺していた感情のすべてが込められていた。ユイの所へたど
り着き、ユイを強く抱きしめた。
「ユイ、私は二度と君を手放したりはしない。これからはずっと一緒にいる。」
良くこんなくさい台詞がこの男の口から出たものだ、いや、もしかしたらこの姿がこの男の本質なのかもし
れない。
ユイは抱きしめられた瞬間、本当に美しい女神のような微笑みをしていた・が、その微笑みが一瞬にして、
険しい般若になった。そして、ゲンドウが思いもよらなかった言葉を口にする。
「離してくれませんか?それと下の名前で呼ぶのはやめてください。六文儀ゲンドウさん。」
ゲンドウのその後・・・
「今、なんて・・・?」ゲンドウの顔には青筋がたっている。
冷酷にユイが一字一句違わず答える。
「離してくれませんか?それと下の名前で呼ぶのはやめてください。六文儀ゲンドウさん。と言いました。」
ゲンドウはハトがN2爆弾を喰らったような顔をしている。
「ちょっと待ってくれ、ユイ。冗談ならやめてくれ。」
「冗談ではありません。それと、下の名前で呼ばないでください。」
ゲンドウは必死に原因を考える(な、なぜだ・・・いきなり抱きついたからか?いや、それだけであの優
しいユイがこんなことには・・・どうしてだ。)
「まだ、わかりませんか?私がここまで怒っている理由が?」
ユイがゲンドウに問いかける。
「ぐう・・・む。」
ゲンドウは本当にわからなかった。自分はユイのためにすべてを捨ててまで、ここまで来たのだ。そう自
分の息子まで・・・ん!
ゲンドウは気づいたようだ。
「・・・シンジのこと・・・か。」
「やっと、わかりましたか・・・。」
はあ、とため息をつき半ば呆れ気味に言う。
「確かに、あなたが私のためにしてくれた事はとても嬉しいですし、感謝もしています。しかしそれ以前
に私達はあの子の親です。しかし、あなたはそれを忘れ、シンジを息子として見ていなかった。だから私
は、さっき六文儀という名字でよんだんです。」
「しっ、しかし、あれは計画の為に必要だったことで・・・」
ユイは悲しい顔になりながらゲンドウを諭す。
「では、逆に質問します。私をシンジ同様に生け贄に捧げる形であなたを蘇らせようとする人がいたらど
う思いますか?とても手放しては喜べないでしょう?それに私は初号機の中にいましたからシンジがどれ
だけ苦しんでいたか知っています。子供をそんなに苦しませてまで、生き返ろうとは、思えません。」
ユイに諭されゲンドウは絶句する。どんな時でも一言「ふっ、問題ない」で済ませていた男だがそんな余
裕は欠片も残っていない。
「なら、私はどうしたらいい?ここにいる以上シンジに会うことすら出来ん。」
「それなら、大丈夫ですよ。今から、元の世界に戻りたいと思えばすぐに戻れますよ。」
「しかし、いまさら私がシンジに会って何を言えばいいんだ?シンジは私に心を開いてはくれないだろう
それに、私がいてもシンジを不幸にするだけだ。シンジからみれば私など父親は愚か人としてみてはくれ
ないだろう。」
その言葉にユイが切れる
「ふざけないでください!!いいですか、シンジがあなたに心を開かないのではなく、あなたがシンジか
ら逃げているんですよ!!。少なくともシンジはあなたに褒められた時はとても喜んでいましたよ!!。」
「そうだったのか・・・。」
そんことにさえ気づかなかった自分が情けなくなる。
「あなたなら、大丈夫ですよ。私のことをこんなに愛してくれたじゃないですか、シンジならきっとあな
たのことを許してくれるはずですよ。」
「わかった。では行ってくるぞユ・・・」ユイが口をふさぐ
「下の名前はシンジに父親と認めてもらってからですよ、頑張ってきてくださいね。」
ユイの顔は元の微笑みに戻っていた
ゲンドウは現実世界に戻っていった。
to be continued
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