[70] 求めるもの、与えるもの |
- 日時:2019年10月03日 (木) 21時09分
名前:加賀谷 竜徒
サイファーは普段の言動から、粗野で乱暴者だと言う印象を持たれ勝ちだ。 それも全く外れてはいないし、相手を尊重する事に重きを置くタイプではない事は断言できる。 では、何に置いても自分だけを優先するような、有体な暴君であるかと言えば、彼を知る者は口を揃えて「それは違う」と言うだろう。 事実なのだから当然だ。
サイファーが本当に暴君なら、風神や雷神が彼を慕う事はなかっただろう。 二人にとってサイファーとは、自分が付き従う主ではなく、彼が望む事ならば応じ、間違っているなら間違っていると告げる、友人なのだ。 サイファーにとっても二人は子分や部下ではなく、己の信ずる道を推してくれる者であり、道を違えば其処には必ず彼等から見た理由があると読み取る事が出来る、信頼を置く友であった。 故に魔女戦争の時、風神と雷神はサイファーの行いを止めて欲しいとスコール達に求めたし、サイファーもまたそんな二人を糾弾する事はしなかった。 それぞれが自分の求めるものを、正しいと思う道を、自分で考え選ぶ事が出来る関係でなかったら、あの遣り取りは起こらなかっただろう。
相手の気持ちを汲み、慮る柔軟性と言うものを、サイファーは備えている。 普段はいがみ合っている相手でも、称賛に値すると思えば素直にそれを見せる事にも抵抗はないから、こう言った柔軟性に置いては、幼馴染メンバーの中でも最も秀でていると言っても良い。 ただし、サイファーが慮る相手と言うのが極端に少ないので、こうした彼の一面を知る者もまた、極端に少ないのだ。 だからサイファーは暴君だと思われ勝ちなのである。
友情や信頼などと言った感情を抱いている相手に対し、サイファーは奉仕する事を吝かに思っていない。 “魔女”であったイデアを護衛する騎士となり、彼女が求める『SeeDの秘密』をスコール達から聞き出そうとしていた事から見ても、当時のサイファーは“魔女”の望みを叶える事に躍起になっていた。 そうする事で“魔女”からの信頼を得、“魔女の騎士”としての自分自身のアイデンティティを確立しようとしていたのもあるだろう。 が、それだけでサイファーが他人の望みを叶えてやろうと思う程、お人好しな訳でもない。 彼は存外と世話好きな所があって、気に入った者になら自分の労を獲っても構わない、と言う気持ちがあってこその行動であった。 だから魔女戦争が終結し、過去の記憶も取り戻した今、育ての母であったイデアに、何でもない日に花を贈ったりするのだろう。
こうしたサイファーの世話好きの一面は、恋人関係となったスコールに対しても向けられている。 几帳面に見えてずぼら、人目は気にするが身内に対しては脇が甘いスコールは、サイファーの世話欲を大いに刺激する。 と言うより、そもそもの自己管理の意識が低過ぎるスコールに、芯から几帳面な所のあるサイファーの方が我慢が出来なかった。 キスティスやシュウの注意だけでは中々行動を改めないスコールの首根っこを捕まえ、食堂に引き摺って行ったり、当たり前のように連続で徹夜を敢行しようとするスコールをベッドに放り込む。 傭兵は体が資本なのだから、栄養も睡眠も怠るな、と何度叱ったか判らない。 スコールが無理なスケジュールで行動するのは、SeeDが慢性的に人手不足であると言う環境の問題もあるのだが、それを差し引いてもスコールの自己管理能力は低過ぎたのだ。 そんなスコールを放って置けなかったのは、恋人関係だからと言う欲目もありつつも、やはりサイファーの面倒見の良さがあっての事だった。
本当に、サイファーと言う男は面倒見が良い。 社会奉仕の精神については、評価するには余りにも、と言った所だが、身内に対しては本当に気の利く男である。 子供の頃から彼はそう言った所があって、石の家でもいつも一人で過ごしているばかりだったスコールに、何かと声をかけていたのは彼だった。 子供特有の傲慢さでスコールを泣かせてしまう事も多かったが、それでも彼はスコールと向き合う事を辞めなかった。 スコールがどんなにサイファーを相手に泣いても、嫌がっても、安心できるものを求めて手を伸ばせば、サイファーはその手を掴んだ。 こいつを放って置いては行けない、と言う想いが、サイファーをそうさせていたのだろう。 そう思う根底にあるのが、生来の世話好きなのか、自覚のなかった幼馴染への特別な感情なのかは判らないままである。 それでもサイファーが、スコールの望みを叶える事に置いて、悩む間もなく応える事を選んでいたのは事実であった。
誕生日に何が欲しい、サイファーに言われても、スコールは中々答えられない。 単純に欲しい物を言えば良いのなら、もう少し簡単ではあった。 先日、キスティスとトリプル・トライアドをした時に負けて奪われてしまったレアカードだとか、バトルマガジンの応募者抽選の品とか、底を尽きそうになっているシャンプーの詰め替えとか。 だが、カードは自力で取り戻してこそだし、抽選品はちょっと良いなと思ったので応募してみた位の事で、どうしても欲しいと熱烈になっている訳ではない。 シャンプーに至ってはただの日曜消耗品であるから、こんな時にそれをくれと言ったら、サイファーを怒らせてしまうに違いない。
特別に欲しい物と言うのを、スコールは余り求めない。 求めるとしても、大抵は自力で手に入れたいと思うから、誰かに強請る程の事もない。 レアカードがタダで手に入るなら嬉しいものだが、それはそれだ。 カード以外で言えばお気に入りのシルバーアクセサリーだが、常に欲しい物があるのかと言うと、そうでもない。 スコールの好みの幅は狭いので、ピンポイントで刺さる事がなければ、雑誌で眺めている程度で満足してしまう。 そしていざ欲しい物が出てきたら、手に入れるチャンスが他にもあるかも知れない、と言った後延ばしをせずに、出来得る限りの事をしてその時に正当に手に入れようとするので、誰かに強請る暇もないのだ。
スコールは、サイファーの質問に答えられなかった。 困ったように首を捻るスコールを、サイファーは予想していたのだろう、咎める事はしなかった。 当日までに気になる物でもあったら何でも言え、とだけ告げて、その話はお開きだ。 暇な時に「決まったか?」と尋ねて来る事はあったが、それもスコールが首を横に振ると「そうか」とだけ返して終わる。 答えられなかったら何もくれないのか、と思ったりもしたが、サイファーはそんなスコールの胸中も読んでいたのか、最後まで決まらなければこっちで勝手にやる、と言った。 じゃあ最初からそうすれば良いのに、とスコールは思うのだが、サイファーはサイファーで思う事があるのだろう。 それはスコールにはどうやっても及びもしない思考であったから、流す事にした。
それからスコールは、自分の欲しい物を探すようにしてみたが、結局最後まで見付けられないままだった。 適当なものを強請ると言うのは、どうにも出来ないし、相手はサイファーだ。 スコールが本気で欲しいと思っているのか、適当に見繕って来たのか、彼は直ぐに見定めるだろう。 サイファーはスコールに特別なものを贈りたいのだから。 これはこれで面倒臭い、とこっそり思っていたりするのだが、反面、このまま黙っていたら彼は何を持ってくるのだろう、と言うちょっとした期待もあったりはした。
そして迎えた誕生日当日、スコールは幼馴染の面々とリノアから、盛大な祝いを受けた。 いつでも誰かが来る可能性がある指揮官室や、必ず他者の目があるであろう食堂は避け、キスティスの許可の下、空き教室を使って誕生日パーティは行われた。 誕生日ケーキは全員が作業分担をして作り、手先が不器用であると知られているリノアはプレゼントを探してティンバー中を駆け回ったと言う。 口をそろえてバースディソングを歌う時、男子メンバーは照れ臭さと恥ずかしさでぼそぼそと歌っていたのだが、それ以上にスコールの腹に来たのは、仏頂面で一緒に歌うサイファーの姿だ。 歌いたい奴だけ歌えば良い、と言いそうなのに、律儀に一緒に合唱していたのは、セルフィとリノアにせがまれたからに違いない。 口パクではなく、ちゃんと歌っていた辺り、本当に存外と付き合いの良い男だと思う。
皆の仕事が終わってから始めた誕生日パーティだったから、それ程長い時間は取らなかった。 セルフィは明日も任務があったし、アーヴァインも報告書の提出期限が明日になっている。 キスティスは明日の指揮官業を代行せねばならないので、早起きしなければならず、宴もたけなわになった所で先に引き上げた。 手が空いているのはリノア、ゼル、サイファーで、この内、リノアとゼルがパーティの片付けを買って出た。 リノアの不器用さにスコールが訝しむ顔をすると、「片付けは大丈夫よ!」と怒ったように言われてしまった。 割り振りとしてはサイファーの方が良いのでは、と思ったスコールだが、ゼルとサイファーをセットにすると、片付ける物が増えるような気がする。 いや、それよりも、キスティスが明日の指揮官業を引き受けると言っていた事が、この割り振りの理由を物語っていた。
寮へと戻ったスコールに、サイファーは当然のようについて来た。 自室に行く素振りもなく、これもまた当然のように、スコールの部屋へと入って来る。 スコールもそう予想していたから、許可なく入室したサイファーを睨む事はしなかった。 正直、この後の事がなんとなく想像できていて、顔を見る事も出来ない程だ。 取り敢えずシャワーでも浴びた方が良いのか、でもそれって露骨なような───と部屋の真ん中で立ち尽くしていると、
「おい。いつまで突っ立ってんだ、お前」 「……別に……」 「ほら、来い」 「!」
どんな挙動が一番不自然に見えないかと考えている内に、スコールの手をサイファーが捕まえる。 ぐいっと引っ張る力に逆らう暇もなく、スコールは後ろから抱き締められるように、サイファーの腕の中に閉じ込められていた。
背中越しに感じる温もりと鼓動に、スコールは小さく息を飲む。 首筋に吐息がかかって、くすぐったさで肩が震えた。 柔らかい感触が首筋に押し付けられ、視界の隅で金色がちらちらと揺れている。 ちゅ、と吸い付かれて、ちりりとした痛みにもならない刺激があって、スコールは顔が熱くなって行くのを感じていた。
「う…ん……っ」
口付けられた場所に、そっと弾力のあるものが宛がわれる。 恐らく、サイファーの舌だろう。 そう思うと、ぞくっとした感覚が背中の筋を奔って行くのが判って、スコールの喉が僅かに反った。
「サ…イ、ファー……んっ……!」
小さく名を呼ぶスコールの唇に、サイファーの指が添えられる。 薄く開いた唇の形を、指先がゆっくりとなぞった。
「ん、ん……」
ふるふると身を震わせるスコールを宥めるように、また首筋にキスされる。 はあ、とスコールの唇から熱の籠った吐息が漏れた。 その吐息の感触を得た指先が、隙間から先端を入れて、無防備に浮いているスコールの舌先に触れる。 微かに唾液を含んで濡れた舌先を、擦るように擽られて、スコールは舌先にじわじわとした甘い痺れが拡がって行くのを感じていた。
「ん…あ……サイ、ファー……っ」 「…で、どうしたい?」 「…ふぁ……?」
名を呼ぶスコールに、サイファーは耳元で囁き問う。 それが唐突な形であったものだから、スコールはぱちりと瞬きをして、肩口に覗いている金糸を見遣った。
サイファーが顔を上げ、指を咥えているスコールの顔を覗き込む。 指先を動かして舌を擽る度、ピクッ、ピクッ、と小さく震えるスコールを観察しながら言う。
「お前、欲しい物、結局言わなかっただろ」 「だ、って…あんた、適当な物言っても、却下するだろ……」 「マジで適当だったらな。だからって其処まで真剣に考えなくても良かったんだぜ」 「…もう…あんた、面倒…くさい……」 「酷い言い様じゃねえか」
真面目に考えてたのによ、と言いながら、サイファーはスコールの口から指を抜く。 ふあ、と鼻にかかった声が漏れた。
腹を抱く太い腕がもぞもぞと動き、手のひらが持ち上がってスコールの胸を撫でる。 シャツと手袋越しに感じるサイファーの手は大きく、薄いスコールの胸を簡単に覆う事が出来た。 その手がゆっくりと、布越しに肌を滑って行く感覚に、知らず期待するようにスコールの呼気が上がって行く。
「っは……ん……、」 「で、どうしたい?」 「……?」
じわじわと広がって行く熱に酔い始めたスコールに、サイファーは先と同じ言葉を問いかける。 宙に浮きつつある意識でそれを聞き留めたスコールが、どういう意味だ、と視線で問えば、サイファーはスコールの首元に顔を寄せながら言った。
「お前のしたいようにしてやろうと思ってよ」 「…俺の…したい、ように……?」 「ああ。セックスするならするし、お前の触って欲しい所を触ってやる。今すぐ入れて欲しけりゃ入れて良いぜ。お前、狭いからちょっと解すけどな。舐めてやっても擦ってやっても良い。……したくないなら、添い寝でも良いぜ?お前の誕生日だからな」
大サービスだろう、と嘯くサイファーに、バカじゃないのか、とスコールは思った。 思ったが、それを声に出す余裕はなく、体を循環する熱と欲望に意識は浚われてしまう。
かぷ、とサイファーがスコールの耳朶を食んだ。 ひくんっとスコールの体が竦み、ふるふると震える。 耳朶の後ろに唇を寄せられ、舌先が触れるか触れないかの距離でゆっくりと皮膚をくすぐって、スコールは「あぁ……っ!」と悩ましい声を上げた。
「あ…あぁ……、ん……っ」 「スコール」 「ふ…うぅ……っ」
名前を呼ぶ声は、スコールからの返答を待っている。 どうしたいのか、と言う問いに対する答えを。
スコールははく、はく、と唇を戦慄かせた。 いつもサイファーから求められる事に慣れていたスコールにとって、答えるだけの事でも酷く羞恥心が煽られる。 しかしサイファーは、スコールが言わない限り、この甘く緩やかな触れ合い以上の事はしないつもりらしい。
はあっ、とスコールは息を吐いて、胸を弄るサイファーの手を捕まえる。
「サイ、ファー……」 「ん?」 「……し、た…い……」
それだけを絞り出すのに、スコールは精一杯の勇気が要った。 だと言うのに、サイファーは直ぐには事を始めてはくれず、
「このままするか?」 「ふ……?」 「立ったまんまで」 「……や……」 「じゃあ何処が良い?」 「……ベッ、ド…が…、いい……」
真っ赤になりながら、蚊の鳴くような声をようやく絞り出すスコール。 そんなスコールに、良く出来ました、と頬にキスが贈られる。 判り易く楽しそうな気配に、後で殴ってやる、と密かに思う。
背中越しの抱擁が解かれ、向き合わされたと思ったら、今度は正面向きで腰を抱かれ、ひょいと持ち上げられる。 G.Fの記憶障害の影響を嫌ってか、平時のサイファーはジャンクションの接続を切っている。 その筈なのに、軽々と持ち上げられる事に、スコールの唇は条件反射のように尖った。 ベッドに降ろした恋人の拗ねた顔を見付けたサイファーは、言わせた事にスコールが恥ずかしがっていると思ったようで、あやすように傷の走る額にキスをする。
「怒んなよ。ちゃんとお前のしたいようにしてやるから」 「…本当に?」 「ああ。……で、次は何して欲しい?」
赤らんだスコールの頬を、サイファーの手が撫でる。 それが手袋越しである事が、スコールは少し気に入らなかった。
「……服」 「脱ぐか?」 「あんたも」 「良いぜ。でも、先にお前だ」
そう言ってサイファーは、スコールのジャケットに手をかける。 前を広げたジャケットが腕を擦り落ちて行くと、手首に引っ掛かった袖口をサイファーの手が捕まえて持ち上げ、袖がひっくり返らないように丁寧に引き抜く。 シャツの裾が持ち上げられると、「腕上げろ」と言われたので万歳をした。 シャツが上に引っ張られて行き、すぽっと襟口を頭が抜ける。 髪の乱れを嫌ってスコールがふるふると頭を振ると、落ち着かせるようにサイファーの手が濃茶色の髪を撫でた。
上半身が裸になると、次は下だ。 サイファーは手袋を外してベッド下に放り、巻き付けている二重のベルトに手をかけた。 カチャカチャと留め具の音が聞こえる傍ら、「相変わらず面倒くせえな」とぼやくのが聞こえたが、その割にサイファーの手付きは丁寧だ。 スコールはなんとなく、ベルトを外すサイファーの手を見ていた。 節のある長い指が、自分の下腹部で細かい動きをしているのを見ていると、何故か喉の奥が鳴ってしまう。
(…何考えてるんだ、俺……)
まだ何も始まってはいない。 だと言うのに、体の奥がぽかぽかと熱くて、交わっている時と同じ感覚がする。 それをサイファーに知られたくなくて、スコールは息が漏れそうになる口元に手を遣って隠した。
ベルトが抜かれて、スコールの腰回りが少し緩やかになる。 直ぐにサイファーの手はフロントに触れて、留め具を外してジッパーを下ろした。 ジィィ、と言う音がやけにゆっくりと進んでいるような気がして、スコールは無性にむず痒さを感じていた。 ようやく一番下まで降ろされると、隙間が出来た両サイドに指が引っ掛けられたので、スコールはベッドに手を突いて少しだけ腰を浮かせた。 少し引っ掛かる感覚を残しながら股上が下げられて行き、太腿から先はするすると簡単に脱げてしまった。 靴下が妙にゆっくりと脱がされて、どうにも恥ずかしい気持ちに唇を噛んでいると、それを見付けたサイファーがにやにやと笑っていた。 腹が立ったので顎を狙って蹴り上げてやると、あっさりと避けられた上に、足首を掴まれる。 意地の悪い目で此方を見ながら、赤い舌を内踝に這わせるサイファーに、スコールの顔が真っ赤になった。
「サイファー!」 「くくっ」 「このっ!」
掴まれていない逆の足でサイファーの顔を狙う。 が、これも避けられた。
ふーふーと鼻息を荒げるスコールは、まるで毛を逆立てた猫だ。 サイファーはそんなスコールに身を寄せると、眦にキスをして宥めた。 誤魔化されない、とスコールは睨むが、笑みを梳いた顔が近付いて来て、唇を塞がれると駄目だった。 唇をなぞられ、薄く開いた隙間から侵入した舌が、歯列をなぞる。
「ん…ん……っ」 「ふ……ん、」
睨んでいた事を忘れ、薄く瞼を閉じているスコールに、サイファーは何度も口付けた。 口付けながら、彼の手はスコールの最後に残った下着にかけられ、するすると滑り下ろして行く。 その感覚に気付いて、スコールはもう一度腰を浮かせた。 するん、と布地が下りて、露わになった臀部に直接ベッドシーツが触れる。
ちゅう、とスコールの舌を吸ってから、サイファーは唇を放した。 ふあ、と甘えるような声がスコールから零れる。 不足した酸素を取り込もうと、赤い顔で呼吸をしているスコールを見下ろしながら、サイファーは自分の服を脱いでいく。 スコールを脱がせる時には焦らす程に丁寧だったのに、自分はいつものようにさっさと脱いで、抜け殻はベッドの下に放り投げてしまう。
裸になったサイファーが、スコールの上に覆い被さった。 軋むベッドの音に、スコールの鼓動が跳ねて、やっと始まる、と思う。 ────が、
「次は?」 「……次…?」 「お前が次にして欲しい事」 (…全部言わなきゃいけないのか?)
そんな恥ずかしい事をしなければいけないのか。 スコールは抗議の目でサイファーを睨むが、サイファーはそんな恋人をあやすように、触れるだけのキスを落とすだけだった。
仕方がないので、スコールは次を考えてみる。 いつもなら、多分、キスをしている。 でもキスはもうしているし、言わなくてもこれだけはサイファーからしてくれるようだった。 恋人同士の触れ合いと言うよりは、子供をあやしているようなタイミングではあるが、キスはキスだ。 だから次は────
「……胸、が…良い……」 「胸を?」 「……さ、わって…欲しい……」
スコールの言葉に、良いぜ、と言って、サイファーは手を伸ばした。 厚みがあって、少しゴツゴツとした感触のある掌が、スコールの胸をゆっくりと撫でる。 ついさっき、布越しに触れていた時と同じように、皮膚を優しく滑る愛撫に、スコールの息がまた上がって行く。 胸の奥で逸る鼓動の音が、触れる手に気付かれていない事を祈っていた。
「…ん……っ」 「どうだ?」 「なんか…擽ったい……」 「悪くはねえんだろ?」 「……ん……」
悪い、所か、気持ちが良い。 スコールは言わなかったが、頬を朱色に染めて、双眸を細めている貌を見れば、サイファーには判る事だった。
そのまましばらく、サイファーはスコールの胸へ愛撫を続けていた。 じわじわとスコールの体は熱は高まり、いつの間にか膨らんでいた胸の蕾に、時折サイファーの指が掠っては微細な反応を示してしまう。 だが、それだけではもどかしさも募るばかりで、もっとはっきりしたものが欲しい、とスコールは望むようになっていた。
「……サイファー…次……」 「おう」
促したスコールに、サイファーは返事をした。 だが、返事だけだ。 やはりスコールが言わなければ、次の事もしてくれないらしい。
スコールはベッドシーツを握り締め、羞恥心を押し殺して言った。
「摘ま、んで…ほしい……」 「此処か?」 「んっ……!」
主語を抜いた言葉でも、サイファーはちゃんと解っていた。 ツンと勃った**を、親指と人差し指で摘ままれ、スコールの体がひくんと跳ねて竦む。
「は…っ、ん……っ」 「次は……こうか?」 「あっ、あっ…!」
膨らんだ**がサイファーの指先にコリコリと引っ掻かれる。 ぴりぴりとした痒みと痛みの間のような刺激に、スコールは喉を逸らして喘いだ。
「ん、そう……も、っと…んんっ」 「すぐ固くなるよな、お前の**」 「あ、あ、ん……っ、あぁ…っ…!」
スコールの頂きは、刺激を与えられる程に敏感になって行く。 爪先で苛められた其処に、サイファーが指の腹を押し当てて潰す。 ぐりぐりと乳輪に埋める程に圧していたが、指が離れると直ぐにぷくっと膨らんで自己主張した。
「はっ、あっ…あぁ……っ!」 「それで……」 「あう、ん…っ!胸…あっ、熱……あぁ……っ!」 「次は、どうする?」 「ああぁ……っ!」
すっかり成長した**を、きゅう、と摘まみ引っ張られて、スコールは堪らず高い声を上げた。 同時に訊かれた言葉は全く耳に入っていなかったが、もう一度サイファーが「次は?」と訊いた事で、僅かに意識が現実に帰る。
「は…っ、ん……次……」 「次」 「……次、は……んん……っ」
訊きながら、サイファーの指はまだ**で遊んでいる。 意識がそっちに捕まってしまうから止めて欲しい。 でも、与えられる快感は気持ちが良くて、望めば多分止めてくれると判っていても、スコールはそれを言えなかった。
飛び飛びになる頭の中で、次、次、とスコールは考えていた。 この後に触れられるのは確か、といつもの情事を思い出して、ようやく口にする。
「し、下……俺の…んっ、擦って……」 「了解」
楽しそうなサイファーの声の後、スコールの胸から手が離れる。 なくなった刺激に、胸の蕾が寂しさを感じて、ふるりと背中が震えるのを、スコール体を捩って誤魔化す。
サイファーの手がスコールの腹を撫で、腰を摩り、足の付け根の線を辿る。 ゆっくりと近付いて来る感触に、スコールの鼓動がまた早鐘を打った。 期待通りに中心部に手が重ねられると、其処はぴくぴくと震えながら頭を起こしている。
「勃ってるじゃねえか。素直だな」 「…っふ……あぁ……っ!」
サイファーの言葉に、顔を真っ赤にして頭を振ったスコールだったが、反論の意は下肢から奔った快感で飲み込まれた。
スコールが望んだ通り、サイファーは緩く握ったそれを上下に扱いて擦る。 竿全体を余す所なく掌で摩擦しながら、時折指先が悪戯気味に敏感なポイントを押す。 スコールが感じる場所は、全てサイファーが覚えている。 事務的な動きに見えて、しっかりとスコールが快感を得る場所を的確に刺激するサイファーに、スコールの雄はあっという間に上り詰めて行く。
「はっ、あっ、あっ…!サイ、サイファー……っ!」 「どうした?」 「ああ…っ、んっ、あっ…!そ、そこ、もっと……っ!」 「そこってのは───この辺か?」
サイファーの指が根本の海綿体を引っ掻く。 途端、ビクンッ!とスコールの体が大きく跳ね、
「んんうっ!」
一気に登って来た衝動に、スコールの意識はついて行けなかった。 我慢しなければ、と思うよりも早く、体がビクンビクンと跳ねて、びゅるっ!と蜜を噴いてしまう。 余りに早い**に、サイファーは数秒目を丸くしていたが、
「あっ…あ……っ」
ベッドから腰を浮かせ、強張った体をヒクッ、ヒクッ、と痙攣させているスコールを見て、サイファーの口角が上がる。 虚ろな瞳を彷徨わせ、うっとりとしているスコールの顔を見ながら、サイファーはスコールの根本を緩く握って揉みしだく。 それだけでスコールはビクンッ、ヒクンッ、と足を跳ねさせて悶えて見せた。
「あう、んんっ…!サイファ、あっ…触っちゃ……っ!」 「随分溜まってたみてえだな?」 「ふ…うぅ……っ」
スコールは顔を真っ赤にして、目尻に涙を貯めながら、ふるふると首を横に振った。 嘘つけ、とサイファーが涙を舐め取ってやると、手の中でぴくりとスコール自身が戦慄くのが伝わる。
果てたばかりの中心部を、サイファーの大きな手がゆったりと撫でる。 出すものは出たものの、スコールの其処はまだ萎える気配はなく、サイファーの与える刺激に反応して、ぴくぴくと鈴口を震わせながら頭を持ち上げる。 とろりとした愛液を滴らせる先端を包み込み、掌で穴を愛でてやれば、スコールは自身の指を噛みながら悩ましい声を上げた。
「んぁ…あっ……はふ……っ」 「止まんねえ」 「うぅん……っ、んんっ……!」
くすくすと笑う気配と囁く声に耳元を擽られ、スコールの躰をぞくぞくと官能が走る。
程なくスコールの雄がまた天を向いた。 サイファーは先と同じように、また根本に手を遣り、爪先で緩く引っ掻いた。 ビクンッとスコールの腰が判り易く跳ねるが、今度は**はない。 唇を噛んで必死に絶頂の感覚に耐えようとするスコールに、いじらしいものを感じながら、サイファーは二本の指で挟んだ竿を扱く。
「んっ、んっ…、うぅんん……っ!」 「スコール」 「ん、……ふぅ…ん……っ」
呼ぶ声にスコールが顔を上げると、唇が塞がれた。 近い距離にある翡翠を見詰めながら、咥内をじっとりと舌で舐められる感覚を得て、スコールはふわふわと充足感を覚える。 そんな中で中心部をずっと愛撫されていると、スコールは腹の奥が貪欲になるのを自覚せずにはいられなかった。
ちゅ、と吸い付く感覚の後に、キスは終わった。 妙に寂しさの残る唇に自身の手を当てながら、スコールはサイファーを見上げ、
「…サイファー……」 「ん?」 「……もう、…欲しい……」 「じゃあ、解さねえとな」
そう言って、サイファーは竿を愛撫していた手を更に下へと降ろした。 指先が卑しく膨らんだ秘孔に触れて、縁の形を確かめるようにゆっくりと摩る。 そんな事しなくて良いから、とスコールはサイファーの首に腕を絡めて催促する。
指の腹ですりすりと皺を摩った後、先端が穴に宛がわれる。 ツン、と合図するように一度触ってから、穴をそっと広げながら指が入って行く。
「ああ……っ!」
指先が入っただけで、スコールは得も言われぬ多幸感を感じていた。 サイファーの指が、サイファーが、自分の中にいる。 そう思うとまた腹の奥が熱くなって、もっと早く、もっと奥にとねだらずにはいられない。 けれどサイファーの進め方は酷くゆっくりとしていて、スコールが欲しい場所への半分も届かない。
「あ…あう……っ、んぅ……っ」 「こら、動くな。傷付いたらどうすんだ」
咎めるサイファーの言葉に、それでも良いから、とスコールは思っていた。 したいようにしてくれると言うのなら、今すぐ太くて熱いものを直に挿入して欲しい。 そう思ったスコールだったが、それを言うにはまだ頭に僅かな理性が残っていて、幸か不幸か言わずに済んだ。
第二関節まで埋められた指が、スコールの中でゆっくりと動く。 道を狭くしている頑なな壁を、指先がそっと撫でるように押して行くのが判った。 指が緩く曲げられると、関節の骨の固い感触が壁に当たり、小刻みに動いて粘膜を擦る。 その度に、スコールの喉から、甘い声が漏れていた。
「あっ…あっ……、ん…あ……っ」 「やっぱり狭いな、お前の中」 「ふ……んっ……!」 「だからいつまでも具合が良いんだけどな」 「んぁ……っ!」
くりゅっ、と中で指が大きく円を描いた。 柔らかく解れ始めた中を掻き回すような動きに、スコールの体がビクッと跳ねる。
二本目の指が挿入されて、これもゆっくりと中に入って行く。 解れた肉がまた窮屈そうに締め付け、指にぴったりと密着する。 スコールが息をする度に、中の肉がヒクヒクと動いて、サイファーの指を揉むように柔らかい刺激を与えている。 その肉が悪戯に強張る事のないように、サイファーは殊更にゆっくりと、優しい愛撫を与えながらスコールの中を進んで行くのだが、
(足り、ない……)
サイファーが優しくする分、スコールは物足りなさが募って行く。 愛されていると言う安心感の傍らで、焦らされているような気もして、スコールの疼きは加速的に増していく。
もっと欲しい、早く欲しい。 でもきっとサイファーはそれを許してはくれない。 スコールが求めている事とは言え、肉体的にも精神的にも、恋人を傷付けるのはサイファーの本位ではないからだ。 それに、サイファーが此処まで慎重になるのは、初めて体を重ねた時にスコールが痛みに我慢できずに泣いたからだった。 お互いに性急であった事が原因なのだが、あの出来事はサイファーにとっては『恋人に無理をさせた』『無理をしている事に気付けなかった』として根付いたようで、それ以来、サイファーはスコールを傷付けない事に念入りになったのだ。
(でも────)
それでも、早く欲しいと言う気持ちは抑えられない。 そんなスコールの胸中を吐露するかのように、スコールの中心部ははしたなく泣いていた。 手淫で昂ったスコールの雄が、ぴくぴくと戦慄いて、次の熱を欲しがっている。 解す事に終始している優しい刺激では、決定的な熱には足りなくて、重ねられる刺激を求めて切なく喘いでいた。
(…そう、言えば……───)
あえかな呼吸を繰り返しながら、ぼんやりと天井を見上げていたスコールの頭に、事の始まりの会話が思い浮かぶ。
ようやく指を咥える事に慣れて来た秘孔を、もう少しだな、と呟いてまた拡げようとしているサイファーを、スコールは息を切らしながら呼んだ。
「サ、イファー……」 「なんだ?」 「…あんた、さっき……んっ、さっきの、本当、に……」 「さっき?」
刺激に酔っている事もあって、言葉が覚束ない様子のスコールに、サイファーが主語の説明を促す。 スコールはもどかしさに体を捩りながら、はあ、と甘い息を吐いて、
「舐めて、も……、良い……って……」 「ああ」
スコールの言葉に、サイファーは直ぐに肯定した。 それから、スコールの中心でしくしくと泣いている雄を見て、にやりと笑う。
「舐めて欲しいのか?」 「……っ……」
かあ、とスコールの貌が赤くなる。 それを逸らして逃げるスコールに、サイファーは頬にキスをして、
「言えよ」 「やだ……」 「言わねえと、お前がして欲しい事が判んねえよ」 「……バカ……っ!」
言わなくたって判る癖に、と涙を浮かべた蒼の瞳がサイファーを睨む。 飛びきらない理性で、求める事を直接口にする事に躊躇いが消えないスコールに、サイファーはやれやれと眉尻を下げつつ、
「ま、誕生日だからな」
大サービスだ、等と嘯いて、サイファーは背中を丸める。 スコールの秘部に指を挿入したままなので、彼が体勢を変えると、秘孔の肉がくにくにと押されて刺激された。 はふ、はふ、と息を吐くスコールを上目に見ながら、サイファーは反り返ったピンク色の雄に唇を寄せる。
蕩けっぱなしで泣いている鈴口に、赤い舌が押し付けられた。 艶めかしく弾力のある、生き物の熱を宿した肉の塊の感触に、シーツを蹴っていたスコールの踵が浮く。
「あ…う……、ん……っ」
サイファーが自分のものを舐めている場面と言うのは、よくよく考えると初めて見るのではないだろうか。 今までそう言う事をされた訳ではない、と思うのだが、その時にはスコールの意識は大抵ドロドロに溶かされていて、まともな思考が残っていない。 自身を男に舐められていると言う光景を、スコールは半端な理性の中で、初めて認識したのであった。
「あう…う……っ」 「やっぱり止まんねえな」 「はっ……そ、そこで…んっ、喋るな……っ」
蜜と唾液で濡れた先端に、サイファーの吐息がかかる。 むわっと湿った空気が触れると、じんとしたものが腰回りに広がるのが判った。
サイファーの舌が鈴口を舐める度に、スコールの蜜で汚れて行く上質な赤身肉のような色をしている舌に、白濁液のコントラストがいやに映えるのを、スコールは真っ赤な顔で見詰めていた。 尖らせた舌先がぐりぐりと先端を穿ると、ビクンッビクンッと細身の躰が痙攣する。
「あふっ、ふっ!んっ…んぅっ……!」 「こっちも忘れるなよ」 「ひぃんっ!んっ、ああ……っ、やあ……っ!」
前への刺激に夢中になっていたスコールに、サイファーは後ろの穴をくりゅんっと苛めてやった。 甲高い悲鳴を上げたスコールの秘孔がきゅうぅっと締め付けを増す。
ふうふうと昂る呼気を必死で抑えようとしているスコールを尻目に、サイファーは口を開けた。 **したスコールの雄を、頭から一思いに咥えてやると、「ふああぁっ!」とスコールが悲鳴のような嬌声を上げる。 濡れそぼった竿全体が艶めかしくじっとりとした感触に包み込まれると、敏感なスコールの中心部は、そのままで過ごしているだけでも絶頂を迎えそうな程になっていた。 其処にサイファーが厚みのある舌を絡め、じゅるじゅると舐めしゃぶり出したから堪らない。
「ああっ、ああぁっ!サイファ、サイファー…っ!」 「んぶ、んっ…、じゅ、ふっ、」
悩ましく恋人の名前を呼びながら、スコールは腰を揺らして悶えた。 サイファーは強烈な快感に暴れたがるスコールの体を、下半身を抱くように捕まえて押さえ付けて愛撫を続ける。
「はっ、はっ、はふっ……、あひんっ!や、後ろ…そ、そっち…今したら、ああ……っ!」
じゅうっ、と吸われる快感に喘いでいたら、秘孔に埋められた二本の指が分かれて穴を拡げる。 くぱっ、くぱっ、と直腸が広げられると、突っ張った肉壁に爪先が緩く食い込んだ。 そのまま指先が上下に動いて壁を擦り苛めると、スコールの下半身は力が入らなくなって行き、ビクンビクンと痙攣する事しか出来なくなる。
「あふっ、あっ、ああ……っ!舐め、られて…はっ、ぞくぞくして……っ、やっ、クる……っんん…っ!」 「ん、んぐ、」 「あああ……っ!そんな、に…あっ、吸ったらぁ……っ!あっ、あっ、後ろも…あっ、もうっ!」
サイファーはスコールを根本まで咥え込み、喉から強く啜った。 じゅるぅううっ、と露骨な淫音を立てるサイファーに、スコールはいやいやと頭を振りながら、股間に顔を埋める男の金糸を捕まえる。 綺麗に撫でつけてセットされた髪をくしゃくしゃに掻き乱しながら、スコールは背中を仰け反らせ、
「来る、来るぅっ!サイファ、あっ、あぁぁあ……っ!!」
一際高い声を上げながら、スコールはサイファーの咥内へと吐精した。 抱え押さえ付けられた太腿を強張らせ、がくがくと痙攣させて、秘孔に咥え込んだ指をこれでもかと締め付ける。
サイファーの口の中は苦い味で一杯になっていて、度々スコールにフェラチオをさせている男は、よくこれを飲む気になるな、と感心しつつ、真似るように飲み下す。 粘ついた蜜はお世辞にも良い味とも喉ごしでもなかったが、それでも可愛い可愛い恋人が、自身の与えた刺激で吐き出したものだ。 自分の支配の末に溢れ出したと思えば、一概に汚いと吐き捨てるようなものでもない。 サイファーはぴくぴくと震えているスコールの雄からゆっくりと口を放した。 唇の端から垂れた蜜を舌で舐め取り、べたべたとした感触の残る唇で、スコールの薄い腹にキスをする。
「あ……っ、は……っ、あ……っ」
絶頂の余韻に浸る体は、強張りから中々解放されない。 当然、指を咥え込んでいる秘孔もそうだった。 それをサイファーは傷付けないように慎重に、そっと指を引き抜く。 強張って敏感になった神経にはそれだけでも強い刺激になって、スコールの喉から「ああぁ……っ」と悩ましい声が漏れた。
秘孔から出て来た指は、スコールの腸液で濡れていた。 探っていた感触としては、柔らかくなったとはまだ言い難いが、元が狭く固いスコールの事を思えば、準備としては妥当な所だろう。 それに、とサイファーがスコールの顔を覗き込んでやると、
「…あ…あ……、さいふぁ……サイファー……」
蕩けた表情でサイファーの名を呼びながら、スコールの腕が延ばされる。 スコールはサイファーの首に腕を絡めると、重い体を辛うじて持ち上げて、サイファーにぴったりと密着した。 甘い痺れに囚われた腰がゆらゆらと揺れて、自身の蜜とサイファーの唾液に濡れた中心部が、サイファーの腹に擦り付けられる。
「サイファー…もう…っ、もう……っ」 「欲しいか?」 「…ほしい…サイファー……っ、あんたが…欲しい……っ!」
我慢できない、と全身でサイファーを欲しがるスコールに、サイファーの血が集まって行く。 互いに裸身であるから、その感触は直ぐにスコールの知る所にもなった。
サイファーは甘えるスコールの涙に濡れた頬にキスをしながら、自身の一物を扱いた。 元よりスコールの痴態で膨らんでいた其処は、数回の刺激で直ぐに固くなり、ドクドクと脈を打って欲望を吐き出す場所を求め始める。 スコールが足を開き、差し出すように腰を浮かせると、サイファーの腕がそれを支えるように差し込まれて腰を抱いた。 ヒク、ヒク、と戦慄いて熱を求める秘孔に、太く逞しい雄が押し付けられると、スコールの呼吸は期待に益々上がって行き、
「ああ…っ、早く……サイファー……っ!」 「…行くぜ……っ!」 「あ、あ……ああぁぁ……っ!!」
ぐ、とサイファーが腰を前に進める。 先端がくちっと穴を拡げ、太い亀頭部を潜り抜ける所で抵抗があるのはいつもの事だ。 その時だけスコールは意識して息を吐き、力を抜くように努める。 ぬぽん、と太いものが入った瞬間、スコールの体がビクンッと跳ねた。 其処から先は比較的スムーズで、腸液が細やかな潤滑剤になって、サイファーの侵入を援けて行く。
「ふ……あ……っ、太い…の……んっ、入って、ぇ……っ」
夢見心地の表情で、スコールは侵入者を受け入れていた。 熱の塊が奥の奥まで収まると、スコールは腹の底の熱が再び燃え上がりながらも、充足感に満ちている事に気付いていた。 此処にサイファーがいる────そう思うだけで、スコールは至上の幸福の中に溺れていける。
だが、事はこれで終わりではないのだ。 サイファーと言う存在との繋がりを得た事で、幸福感はあるけれど、足りない気持ちもまた溢れ出す。 秘孔がヒクヒクと動いてサイファーに絡み付き、もっと強烈な快感を欲しがる。 それが早く訪れる事を願いながら、スコールが茫洋と天井を見上げていると、
「スコール」 「……サイ、ファー……?」
耳元で聞こえた呼ぶ声に、スコールが応じる。 と、大きな手がスコールの頬を撫でて、言った。
「次は、どうしたい?」 「……つ、ぎ……?」 「優しいのが良いか?それとも、激しいのが良いか?」
意地の悪い問いかけに聞こえたのは、スコールの気の所為だろうか。 多分そうだろう。 サイファーはただ、スコールの求めるものを確認しただけだ。 けれどスコールには、サイファーが何もかもを判っていて、敢えて問いかけてきたように思えた。 そう思っても、怒る暇も睨む余裕もスコールにはなく、胎内でドクンドクンと脈を打つ雄が齎してくれるものを期待するしか出来ない。
「…はげ、しいの…が、いい……っ」 「了解」
甘ったるいおねだりを、サイファーはにんまりと笑みを浮かべて受け取った。 大きな手がスコールの腰をしっかりと捕まえて、ずるぅり、と**が抜けて行く。 それだけで背中を逸らして喘ぐスコールを見下ろしながら、サイファーはずんっ!と強く腰を打ち付けた。
「はくぅっ!」
収めた物が奥を突き上げた瞬間、スコールの脳髄が真っ白にフラッシュした。 ずっと待ち焦がれていた所に、求めていた物が与えられた悦びと快感で、体は一瞬で高みへと上る。
激しくして、と言う願いの通り、サイファーは直ぐに律動を始めた。 何度も何度も奥を突き上げ、スコールの弱点を狙って攻める。 そうされると、スコールはもう何も言う事も考える事も出来なくなり、揺さぶられ喘ぎ声を上げるしか出来なかった。
「あっ、あ、ひっ、はんっ!はうっ、うぅんっ!」 「まだちょっと狭いが…っ、イイんだな、スコール…っ!」 「あっ、ふぅ、んっ!い、イイ…あっ、サイファー…っ、あっ、んぁっ、ああんっ!」
雄を咥え込んだ秘孔は、ぎゅうぎゅうとサイファーに噛みついている。 その締め付けが、スコールは勿論、サイファーにも心地良い窮屈さになった。 胎内で脈を打つ雄の感触が、媚肉を通してスコールにも伝わり、サイファーの興奮振りを伝えてくれる。 そうするとその熱がスコールにも伝染するように広がって、秘孔の奥からじゅわじゅわと蜜が溢れ出し、咥え込んだ雄に絡み付いて行く。
じゅぷっ、じゅぽっ、と淫水音を立てながら、サイファーの雄がスコールの中を掻き回す。 コツン、と奥の壁をサイファーが突き上げると、スコールの喉から甘い悲鳴が溢れて、広くはない部屋の中に反響した。
「サイファー、サイファーっ!奥、奥に…もっとぉっ!」 「く……ふんっ!」
強請るスコールの腰を掴むサイファーの手に力が籠ったかと思うと、腰を打ち上げるタイミングに合わせて、ぐっとスコールの体を引き寄せた。 ずぷぅっ、と一際深い場所に穿たれた雄が、スコールの胎内に埋められた楔を目覚めさせる。
「はあぁあんっ!あっ、いい、気持ち良いぃ……っ!あんたの、中で、膨らんで……あっ、あぁっ!」 「ったく、く……っ!搾り取ろうと、してんじゃ、ねえよっ!」 「はふっ、ふっ、くふぅんっ!んっ、あっ、サイファー、ああっ、サイファー……っ!!」 「はっ、はっ…はぁっ、スコール……んっ、」 「んんっ!」
名前を呼ぶサイファーの舌が、スコールの唇を擽る。 ぞくぞくとした感覚に、サイファーの首に縋るスコールの腕に力が籠る。 それがキスの催促に思われたようで、サイファーの唇がスコールのそれを塞いだ。
「んっ、ふっ、ふっぅ……!」
ぴちゃぴちゃと唾液を絡ませる音を漏らしながら、深く深く口づけるサイファーに、スコールも応えた。 耳の奥で聞こえるいやらしい音に、スコールの体の芯が熱を持ち、雄を咥えた秘孔が切なげに痙攣した。 其処を雄が掻き回すようにぐりゅんっと引っ掻き回し、スコールの脚が強張る。
「うっ、んっ、んっ……ふあ、はっ、ああっ!」
唇が離れると、銀糸を引いた口から直ぐに喘ぎ声が上がる。
雄を咥えたスコールの秘孔の隙間から、とろりとした粘液が垂れてシーツに染みを作る。 中ではスコールの腸液で濡れそぼった肉壁を、雄が絶えず擦り苛めていて、熟れた肉がうねうねと絶えずいやらしく蠢いていた。 その動きに翻弄されながら、サイファーはスコールの中を更に奥まで拓き、快感以外を得る事が出来なくなった躰を天国へと連れて行こうとする。 そんなサイファーの思惑の通り、とうの昔に堕ちた体にされたスコールは、着実に果てへの階段を駆け上がって行き、
「だめ、あっ、サイファー…っ!あっ、イくっ、おれ…っ、イくぅうっ!」 「良いぜ、イきたいんだろ?イかせてやるよ!」 「はうっ、はっ、ひっ、ひぃんっ!ああっ、ああぁーーーーーっ!」
ずんっ、ずんっ、ずんっ!と重みのある刺激が、衝動と一緒になってスコールを突き上げれば、快感に弱い体はあっという間に陥落した。 甲高い声を上げ、頭の天辺から足の爪先まで、針金を通したようにピンと強張らせて、スコールは三度目の絶頂を迎える。
前からは**を噴き出しながら、スコールは秘孔でも果てを見ていた。 快感神経を全て開いた状態の肉壺が、逞しい雄を全身で包みながらビクンビクンと痙攣している。 竿を揉み扱き上げるようなその動きに、サイファーが下唇を噛んで数秒後、「ぐぅううっ!」と唸る声と共に、スコールの中へと劣情を吐き出した。
「はっ…あ……っ、あぁあ………」
サイファーの耳元で、意味を為さないスコールの声が漏れる。 どくどくと脈を打ちながら吐き出される蜜を受け止めながら、スコールの体はビクッ、ビクッ、と何度も戦慄いた。
ようやくサイファーの**が終わると、首に絡められていた細腕がするりと解ける。 ぱたりとベッドに落ちたそれを視界の端に見て、サイファーは力なく唇を解かせているスコールの顔を覗き込む。
「おい、スコール」 「………」
呼んでみたが、返事はなかった。 汗だくになった額に張り付く前髪を指で払うと、瞼が下りて動かない。 小さな唇から細く微かな呼吸が聞こえるのを見るに、どうやら気を失ってしまったようだ。
「……ちょっと激しすぎたか」
スコールに求められるまま、その言葉の通りに進めていたのだが、最後は少し自分も夢中になってしまっていた。 その事を少しばかり反省しつつ、サイファーはスコールの中からゆっくりと自身を抜いた。 擦れる感触に、意識もないのに肉穴が正直に絡み付いて来る。 もう一度挿れたい、と言う欲望が頭を擡げるが、疲れ切ったスコールの寝顔に、今夜の所は我慢を飲み込む。
ふう、と息を吐くと、疲労感がサイファーを襲う。 このまま眠る恋人を抱いてベッドに沈むのも悪くはなかったが、そうすると起きた後が色々と面倒だ。 重い体をよっこらせと起こして、スコールを抱き上げる。 揺れる刺激があっても、むずがる様子もない当たり、今夜はもうスコールが目を覚ます事はないだろう。
すぅ、すぅ、と穏やかな顔で眠る恋人に、サイファーは「ハッピーバースディ」と囁いて、対の傷がある額に柔らかいキスを落とし、シャワールムームへと向かった。
Fin.
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『8月23日』で誕生日祝いに甘やかされるスコールでした。 スコールがして欲しい事をするのが大好きなサイファーです。 羞恥プレイっぽいのは意図している所もありつつ、スコールの望みを叶えてやりたいのも本当。 次の日はお休みなので、またサイファーは目一杯スコールの希望を叶えようとしてくれます。
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