バレンタイン話その2 (11) |
- 日時:2009年02月16日 (月) 18時04分
名前:965
日が空きまして申し訳ないです。 >>951、955、959、960、962様のネタです。途中から微妙に違う感じになってますが・・。多分ソニシャ?だと思います。
ただ照れくさいだけ
「・・・」 今日は2月14日。いわゆるバレンタインデー。 人が意中の相手にその気持ちを伝える日、というのが世間一般の了解で通っている。
だが、意中でなくてもただ友情で渡す場合もある。
・・・そう、ただの友情で渡す場合も、ある。
「・・・・・・っ」 街中でようやく見つけた相手は直ぐ側にいるのに、何故か僕はその場で立ちすくんだまま金縛りにあったかのように身動きが出来なかった。
一言声を掛ければいいだけだろう?何を戸惑う? 渡すだけが、どう難しいといえる? 簡単じゃないか。
「はぁ・・・僕は馬鹿か・・・」 こそこそと物陰に隠れて、まるでストーカーじゃないか。 今日は唯一と言っていいくらい暇だったから丁度よかったのに。 一向に進展しなさそうなこの状況に諦めて帰ろうか、と思って気持ちを切り替えそうとした瞬間――
「Hey,シャドウ。此処で何してんだ?」 「なっ・・・!」 何故、居る! いきなり彼が横に現れて、予想だにしなかった出来事に思わず二三歩ほど後退りしてしまう。 しかし彼はそれも気にする様子もなく僕が隠れていた理由を気に掛けてくる。
その理由がプレゼントを渡したいけど恥ずかしくて渡せない、なんて口が裂けても言えるわけがない。
「なあ、おい?」 「いや・・・」
逃げ出したい。全速でこの場所から逃げ出してしまいたい。 そんな事を思う意気地無しな自分が恥ずかしい。
「ま、いいさ。人のやってる事を追究すんのは無粋だしな」 「・・・」 助かった、のだろうか。いや、多分気遣ってくれたのだろう。 その辺りが気が利いてくれて有り難い。そうだ、僕は彼のこんな部分に憧れを抱いているんだ。 彼は優しい。
僕が小さく謝ると彼は何で謝られているか分かっていないのか解せぬ顔をして気にするな、と返した。
今度こそ帰ろうと決意した時、また見知った姿が現れた。
「あぁっ、いたいた。ソニックー!あ、シャドウも!」 「よう、テイルス!」 ぱたぱたと尻尾を回して空を飛びながら小さな子ぎつねの少年・・・テイルスはソニックと僕を呼ぶ。 名を呼ばれて彼は当然テイルスに挨拶をした。
それからテイルスが地面に着地したのを確認して、ソニックは何の用件かを訊ねた。 「で?どうしたんだ?」 「ほら、今日ってバレンタインだからさ・・・、はい!」 そういってテイルスは彼にクッキーの入った袋を手渡した。 「あとねー・・・、シャドウの分も。どうぞ!」 そして僕にも。
「ありがとな、テイルス」 「・・・ありがとう」 「ヘヘっ、どういたしまして!」
・・・
「、失礼する」 「あ、おいシャドウ!」 「え・あ、・・・ば、ばいばいー・・・?」
馬鹿らしい。 なんで僕はただ普通に渡すだけの事に羨望を抱いているんだ。 もはや面倒くさくなって用意しておいたプレゼントを食べてしまおうか、と考え始める。 どうせ渡せないんだ、だったら持っていたって仕方がない。 適当にその辺のベンチに座って一言自分に文句を言う。
「何をやってたんだ僕は・・・」 「何やってんだお前?」
・・・ 幻聴、だろうか。今自分を自嘲したとき一緒にソニックの声が聞こえたような気がした。 まさかそんな訳が無い。そんな幻聴を聴くくらい落ち込んでいるのか僕は。 一つ、大きな溜め息をついてから、するりと菓子をラッピングしていた袋のリボンを解く。 その中から四角いチョコレートを取り出して口に入れると、甘みの薄い、苦い味がした。
「おーい」
そういえば、急に帰ってしまったが怒っているだろうか。 と、さっきの自分の行動を思い出す。 考えてみればなんて子供みたいな行動だっただろう。あれではもはやなんの言い分も立ちはしない。 僕が出来ない事を、あの子は普通に出来る、たかがそれだけの事に焦りを感じてしまっていた僕の問題だ。
「無視?」
それを彼らに態度で示してしまった。 ・・・あの二人はどう思っただろうか。
数分掛けてようやく最初のチョコを食べ終え、また一つ口にやる。 「はあ・・・」 「・・・溜め息つきたいのはこっちだっての」
・・・ 「え?」 「え?じゃなくて」 幻聴じゃ、なかった? 驚いて後ろを振り向くと、そこには腕組みをして僕を見ているソニックが立っていた。
「いつからそこに?」 「お前が"何をやってたんだ僕は"とか言ってた辺りから」 最初のあれは幻聴じゃなかったのか。 という事は僕はずっと彼の存在に気づかずに考え事をしていた、と。
「・・すまない」 その間、彼はずっと僕の後ろに突っ立っていたのだろうか。 そう考えると申し訳なかったので一言頭を下げて謝った。 「はっずかしーんだぜ。そこを通った母さん連れの女の子に"ママーあの人なにしてるの?"って言われてさ」 「・・・」
「・・・いや、突っ込めよ。確かにそんな視線は浴びたけど」 「・・ふっ」 笑えるのか笑えないのか、まあ恐らく滑ったであろう彼の冗談を聞いて思わず笑ってしまった。 するとどうやらそれに満更不快感は示さなかったのだろうか、彼も軽く笑って見せた。 そして僕の持っていたチョコの袋を見て
「それ、俺に渡すつもりだったんだろ?」 「え、いや・・・」 「違うのか?」 違くはないが、そうだと言えない。 相手に渡すつもりだったものを目の前で食べてしまっているのに、肯定するのはどうだろうか。 僕がどう返答しようか迷っていると、彼はひょいと袋の中からチョコを取って口に投げ入れた。
「あ」 「・・・、ビターか。やっぱ俺にだろ?」 基準はそこなのか。 確かに彼がビターが好きだと聞いていたからあえてそうしたのは事実。 だけどたかがそれくらいで決めるのは・・・ 「根拠はあるのか?」 「あー・・・、さっきお前逃げ出しただろ?」 とあの時の僕の子供じみた行動の時のことを話した。 僕が逃げ出した時、ちらりとそのチョコの袋が見えたという。 それにその前に僕が泥棒のように隠れていた事を考えれば、そうなるだろう?と。
・・・反論の余地はない。実際そうだ。
「しっかしなーんで食っちまうかなぁ・・」 「・・・」 「でも、貰えるもんなら貰いたいね」 「・・・いいのか?」 たったの二個といえども封を解いて食べてしまったものを渡してもいいのか?と僕が訊ねると お前さえよければ、と彼はこれ見よがしに手の平を差し出して答えた。 中々その辺りが腑に落ちないが渡せずに後々それを悔いるよりは、と考えを持ち、も一度その袋にリボンを結い付けてその手の平に乗せる。
「Thank you」 「・・・どういたしまして」
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