| [88] カイアル話 |
- 神酒 - 2018年03月02日 (金) 22時01分
※スーサイデッドメアリンクネタバレ注意※ 林檎ちゃん視点です。リプレイ風小説なので林檎ちゃんの台詞が若干改変されていますのでご了承下さい。(ギャグみたいになっちゃった所とか)
*11月6日*
いつもと同じように、目を覚ます。
否、いつも通りとは言い難いかもしれない。
酷い夢を見た気がした。体がびっしょりと、汗でぬれている。
酷い酷い、悪夢を見た気がした。
そんな悪夢から目覚めて、あなたはほっとしていた。
断片的にだが、夢の内容を思い出すことが出来る。
夢の中で、どこか高いところにいた。夕焼けが、空を焼いている。
そこで、酷く戸惑ってあなたの方に手を伸ばす、誰かの姿を見た気がした。ひどく、不気味な夢だったような気がする。
「………」
変な夢を見るのは希ではない。 遥か昔、簡単に言ってしまえば前世での記憶だろうか? 時々自分がドラゴンの姿をしている夢を見ていた。 自分のよく知る人物と協力してとある屋敷を探索したり、化物を倒したり、宝石を貰ったりする何となく心地良い夢。
しかし、今日見た夢はそんな心地の良い夢ではなく、胸が締め付けられるような悪夢だった。
「もうこんな時間、起きなきゃ」
悪夢に魘され、目覚めの悪い朝だったが時間は待ってくれない。 大学へ向かおうと支度を始めた。
今日は11月6日の、月曜日。週の始まりの日。
支度をしている間、テレビをつけっぱなしにしていた。
『先日発表された………。
あと一週間………されましたが……』
『あまり信憑性はないでしょう。次の……』
時間があまりなかったということもあり、ニュースが流れるテレビを消して急ぎ足で家を出た。
大学へついたものの、同級生は誰も今朝のニュースについては話していなかった。
いつも通り大学で過ごし、買い物を済ませて家へと向かった。
家に入った瞬間、何か嫌な予感を感じて、背筋にぞわりと寒気が走った。
「……!?」
急いで後ろを振り返ったがそこには誰もいなかった。 気のせいか、とも思ったが念の為チェーンをかけておいた。 都会に来たばかりの頃を思い出した。何年経っても一人は慣れないな、と自分に呆れながら。
部屋が静かだと何だか落ち着かないのでテレビをつけた。 その間に夕飯や風呂を済ませ、もう寝てしまおうと思ってテレビを消した時だった。
メールの着信音が聞こえた。
「こんな時間に誰でしょう……」
メールには一文のみ。
『今から電話していい?』
と日外 改一狼からのものだった。
日外 改一狼――カイとは幼馴染であり、時々食事に行ったり遊びに行ったりする仲でもあった。 そして、時々見る前世の夢に出てくる人物はカイに瓜二つだった。 運命的なものを感じたが本人にそれを言って引かれてしまうのが怖くて未だにその事を言えないでいた。
『いいですよ〜遅くまでできないかもですけど…』
カイに返信した数分後、電話がかかってきた。
「もしもし?」
「もしもし、…夜遅くにごめんな」
「こんな時間に珍しいですね、カイさん。どうかしたんですか?」
「今朝のニュースが気になって、…ニュース見たか?」
今朝のニュースを寝坊せずに見ておけばよかったと少し後悔したが後悔したところで肝心の内容は分からないので正直に理由を話した。
「あー……そういえばやってましたね、今朝はちょっとドタバタしてて内容はよく聞き取れなかったんですけど……」
「俺も支度しながら見た、最近テレビで世界滅亡の予言が噂されてるみたいなんだ」
「今朝のニュースも確かそんな変な話をしていたよ、カルト教団の教祖が今週の日曜日に世界が滅亡するとか、どうとか…」
珍しいな、と思った。 てっきりそんな信憑性がなさそうな話題にカイが触れるなんて、と。
「今週の日曜日に世界が滅亡…もし本当だったら怖いですね……あと6日後……」
カイの声色はいつもの淡々とした感じもあるがそこには少しだけ不安も感じ取れた。
そもそもこんな時間にわざわざ冗談言ってくるタイプではない。 茶化さないで真剣に話を聞こうと思った。
「そうだな…、何だか引っかかるんだよ普段ならこんな事気にもしないのにな」
「悪い、夜も遅いしそろそろ切るよ。電話に出てくれてありがとう」
「おやす……」
そこまで言って一方的に電話を切られた。 いつものことなのでそのまま『おやすみなさい』とメールを送った。 すぐに『おやすみ』と返信が来た。
今日は一日嫌な事ばっかりだったけど眠る前にカイの声が聞けてよかったなぁなんて思いながらそのままその日は眠りに落ちた。

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