| [117] 世界樹の迷宮X 二次創作 |
- 榊 菜都 - 2018年10月22日 (月) 20時05分
プロローグ 『それぞれの始まり』
気づいたときには、自分は再び生まれていた。
ある理想郷の夢 side Alastair
竜人という人と違う異形であった自分は、生まれ変わってもまたヒトとは違う存在として生まれ落ちたらしい。 セリアン(獣人)という獣を祖とする種族であったが、前世と違うのはその存在が排斥されるものではなかったというところだろうか。
自我を持って生まれ落ちて幾年、幼い頃より持たされた刀を振り続け一心不乱に力をつけた。 この前世とは違う世界の中で、彼女を探すために必要なものだと覚ったからだ。 前世の終わりを、自分は覚えていない。 あの冒涜的な神話的現象の中で命を落としたのか、それとも寿命を全うできたのか…。
―――彼女と共に生きることができたのかすら、朧げな記憶では定かではないのだ。
生きていくための力はつけた。この世界の事についての知識も得た。 必要最低限のものを身に着け、旅の準備を整えた自分は部族の長に許しを得、そうして彼女を見つけるための旅に出た。 彼女がこの世界に転生しているかは分からない。 そもそも存在していないかもしれない。
それでも、彼女を探さない理由にはならなかった。
「あ!テアさん!?テアさんですよね!!?」
しかしここまで早く再会が叶うとは思ってなかったのだが。
「茜……か?」 「はい!そうですよ!!やっぱりテアさんなんですね!!?」
ぱたぱたと【小さい手足】を懸命に動かしながら、彼女が喜びを表現する。 彼女もまた前世とは異なり、ブラニー(小人)という種として生まれ落ちていたらしい。 その名の通り小人のような彼らは、成人しても他の種族よりも体半分にも満たない。 前世では考えられないが、自分が膝をついて初めて彼女と同じ目線になるのだ。
「本当にテアさんだ…!…会いたかった…!!」
小さく小さくなった彼女がぽろりと涙を零して自分に抱き着いてくる。 小人族は家族や一族で旅をするという。身を守る術が少ないことが起因しているのだろう。 そんな中、彼女はたった一人で旅に出たのだという。 どうしても会いたい人がいる、というその理由で。
あぁ、どうあがいても自分たちはお互いの事を探さずにはいられないのだ。 首筋に縋りつく彼女を抱きしめる。前とは変わってしまった小さな体。
でも、そこから伝わる温度だけは何も変わらなかった。
Side Alastair Fin

|
|