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[147] twst二次創作
榊 菜都 - 2020年06月21日 (日) 21時35分

テアアカの再会話

入学式の本当に最初の部分。続きは後でまた追加します。




部屋に青い炎が広がった。

黒い魔獣が吐き出したそれが大きく広がり、内部にいるものたちに襲い掛かる。
咄嗟に身構える寮長たちが、何かをするその前に、


―――周りに広がる炎は、一瞬にして異なる炎に包まれるようにして消滅した。


驚く生徒たちを横目に、それを為した一人は魔法を扱うためのマジカルペンを一振りする。
黄緑色ながら橙に光を反射させる珍しい魔法石が輝き、魔獣を逃さぬ籠を作り出す。

「ふなっ!!?こ、こんな籠!」

驚く魔獣が再び炎を吐こうとすると、それはすぐさまハーツラビュルの寮長のユニーク魔法によって封じ込められ、あっけなくその場を退場することとなった。
式場を荒らすだけ荒らして消えた魔獣の騒ぎに、入学したばかりの生徒たちがざわめく中、不意に在校生の中から歩き出した存在を見つけ、誰もが口をつぐむ。

カツリ、

磨き上げられた靴が床を叩く。
フードを被りながらも、わざと作られた穴から覗く象牙色の角を見て誰かが囁いた。
―――ディアソムニアの竜人だ、と。

カツリ、カツリ、カツリ、

その声が聞こえているのかいないのか、まっすぐにその存在は歩き続ける。
躊躇うことなく進む姿に周りの生徒たちは進む先に目を向ける。闇の鏡の前に立つ、学園長が遅れて連れてきた入学生の方を。
その入学生は、魔獣に襲われた時でさえ驚きながらも落ち着いていた入学生は、歩いてくるその存在を呆然と見つめていた。


まるで、会うはずのない、会えることのない存在を見つけたように。




「――――後悔などなかった。」

歩き続けるその存在が静かに口を開く。

「あの日、あの時…お前を守ることのできる選択肢はあれしかなかった。」

誰もその言葉を聞き逃すことがないようにと自然と口をつぐむ。

「お前を守ることができるなら、俺は何度でも同じ選択をしよう。」

学園長でさえ、二人の傍に近寄ることをためらっている。

「――――だが、一つ。後悔があるとするならば。」

入学生は動くこともできず、ただ、見つめている。
口元が、ほんとうに、と動くのを数人の生徒だけが見ていた。



カツリと、最後の靴音と共に二人が向かい合う。



「――――『 』、お前を置いて逝ってしまったことだけが、心残りだった。」



誰かの名前を呼んだのは確かだった。だが風によって吹き消されたかのように他の生徒たちの耳にそれは届かない。
だが、相対した入学生には聞こえたのだろう。彼女の名前を呼ぶ、彼の声が。


「テ、ア……さん……?」


ポロリ、彼女の目から雫が零れる。

――――――彼を亡くしてから枯れていたはずの、涙だった。





           『歪められた世界で、捻じ曲げられた運命は成就する』




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