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ガス人間 |
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江◯島平八
(3691)投稿日:2024年01月28日 (日) 21時55分
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東宝SFスリラーの最高傑作だと思うが、最初に観てから半世紀以上経って、悲劇のラストシーンを誤解してたコトが判明。
エンディングに鎮魂の花輪が倒れ込む直前、燃え盛る劇場玄関から這いずって出てくるのは、無理心中された相手の藤千代(八千草薫)の舞台衣装を引き摺って来たガス人間水野(土屋嘉男)だと思ってた。 周りにガスが漂ってたから。で、発光しながらガスが一度肉体に実体化した後、またガスに戻って最後は虚空に雲散霧消していく…なんて哀れなんだ、と思ってた。 倒れたアタマんトコが真っ黒に見えてたから、水野は消えたんだと。
ところが、ビデオをゆっくり観たら、違ってた。 這いずって来た身体は、焼け焦げた舞台衣装の藤千代。 で、周りにガスが漂ってたのは、咄嗟に爆発から藤千代を庇おうとしたのか、彼女への未練なのか、纏わり付いていた水野なのだが、やがて発光しながら水野は虚空に蒸散していき、あとに残るのは藤千代の亡骸…というコトのようだ。 アタマんトコが黒かったのは、藤千代の黒髪だった…。
今までのワイの理解だと、「僕たち、負けるもんか」と言って抱擁する水野の背中越しにライターで点火した藤千代に、水野は多分、「なんで…?裏切られた…?何故なんだ…」と思いながら出て来て霧消する、という哀れさだと思ってた。 そうじゃない。無理心中されても、藤千代に最後まで寄り添いながら、水野は逝ったのだ。
監督の本多猪四郎は何かのコメンタリーで、土屋嘉男が藤千代と水野の相愛説を述べていたのに対し、 「それは彼が水野役だったから、当然の見方」 とコメントしていたし、劇中で犯罪で稼いだカネを援助されてるんですよと記者に追及された時に藤千代が、 「どうしようもないんです…」 と答えていたから、相愛とはちょっと違ったと考える方が正解なのかも。 没落していたとはいえ誇り高い家元だから、情はあれど、終わらせるにはこれしか無かったんです…もしかしたら、藤千代は最期に世間にお詫びをしたかったのかも… だから演目の題名が「情鬼」か… ( ´ー`)y-~~
しかし、本作は藤千代に仕える鼓師の爺やの左卜全さんがムチャクチャに良い味を出している。 最後に、演じ終わった藤千代と水野が駆け寄って抱擁するトコで、鼓を打ってた卜全さん、くうっと声を殺して下を向く。 口元が震えてる。 背中越しに藤千代が涙を一筋流してライター点火するトコでも、藤千代に殉じて、黙って下を向いたままその瞬間を受け入れる。
切ねぇ。何度見ても泣ける。 名作なのは、変わらない。 (;´Д`) 怪奇味と言うかエログロ度では、液体人間の勝ちだけど。
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