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[60] 題名:2009年度三戸ゼミナール夏合宿報告 勉強編 「若者論の検討」ver.2 名前:中村貴治(20期生) 投稿日:2009年10月06日 (火) 04時31分
【日時】平成21年9月22日(夏合宿一日目20:00〜23:30)
【勉強テーマ】「若者論」検討
【報告班】タケダプロダクション、さわやか興業1.はじめに
(1)前期の勉強〜草食系男子〜
前期の勉強では、草食系チェックシートの作成を通して、ゼミ内での草食系男子の定義
として、「今ある自分の世界に満足しており、あえて外の世界にかかわろうとはせず、
コンフリクトを回避し、自分の世界を大切にする」を導いた。しかし、充分に詰めきり、
我々が扱おうとする若者についてしっかりした理解が行われたとは言いがたい。
夏合宿から更なる理解を行う。
(2)夏合宿からの勉強
今年度の討論会に向けては、現代の若者に対し、日本企業はどのようにマネジメント
していくべきなのか、そして若者と日本企業のウチ・ソトがどのように絡んでいくかを
扱う事が予想される。これからの若者論の勉強では、若者がどのような性質をもつのか、
明確にすることを目標としている。
今回の勉強では、両担当チームに自分たちで「若者論」に関する参考文献を探し、
フリーター、ニート、オタク、草食系男子など各種の若者についてまとめてきてもらった。2.各チームレジュメ概要
○タケダプロダクション
1)フリーター、オタクを「仕事・人間関係・遊び(プライベート)」の三つの視点から捉え、定義。
⇒フリーター
仕事:「本当に納得のいく仕事をしたい」と言うような理想を持ち、現状に適応しようとしない。
人間関係:仕事に付随するような「お付き合い」は嫌悪する。
私生活:仕事と明確に切り離されたものである。
定義:「過去のいいイメージを持ったまま、現状に適応しようとせず、仕事に対して理想を持ち、
仕事と私的(プライベート)なものを分けて考える、決断力の無い若者」
⇒オタク
仕事:趣味や余暇を犠牲にしない程度に働く
人間関係:自分と近しい価値観をもつ人とのつながりを大切にする。
遊び:自分の理想像を追及するためには、金や時間に糸目をつけない。
定義:「こだわりがある対象を持ち、その対象に対して時間やお金を極端なほど集中的に
消費しつつ、深い造詣と創造力を持ち、かつ情報発信活動や捜索活動なども行っている人々」
⇒草食系男子(前期の勉強より)
定義:「今ある自分の世界に満足しており、あえて外の世界にかかわろうとはせず、
コンフリクトを回避し、自分の世界を大切にする」
2)以上の3つの若者像を統合し、最近の若者を「コンサマトリー」化しているとする。
コンサマトリー:何かの目標のための手段となる事を拒否し、その時を楽しもうとするという概念。
○さわやか興業
1)オタク、ニート・フリーター、草食系男子を定義し、現代の若者像をとらえる。
⇒オタク
定義:「強くこだわりを持っている分野に趣味や余暇として使える金銭または時間のほとんど
全てを費やし(消費特性)、かつ、特有の心理特性を有する生活者」
⇒ニート・フリーター
定義:「15歳〜34歳で学生でなく、未婚者でかつ働いておらず、求職活動も行っていない者」(厚労省、内閣府見解より)
⇒草食系男子(前期の勉強より)
定義:「今ある自分の世界に満足しており、あえて外の世界にかかわろうとはせず、
コンフリクトを回避し、自分の世界を大切にする」
2)四者は共通する面を持ちながらも、重ならない部分が多い。
⇒生み出した要因となる変化を、個人の内面にみるか、外面の環境にみるかで、
二つに分類できる。(前者がオタクと草食系、後者がニート・フリーター)
3.議論の要点
(1)草食系男子とフリーター・ニートの性質的差異
タケプロの報告は、ニート・フリーター、オタクと草食系男子はまとめて若者として
扱うといった趣旨で行われた。しかし、ニート・フリーターなどは、元々勤労意欲の無い
人間だと考えられ、あくまで対比として参考とするに過ぎず、我々が討論会にむけて、
日本企業との絡みで扱おうとしている若者からは除外すべきであるという意見がでた。
(2)草食系男子とフリーター・ニートとの年代的差異
草食系男子とは、あくまでここ最近に世間でとり上げられるようになった若者のことであり、
フリーターやニートなどがとり上げられるようになった年代的な差異がある。この点からも、
草食系男子とは、フリーター・ニートと分けて考えるべきではないかという指摘が出た。
これに対しタケプロから、草食系とはあくまで言葉の問題であり、同じ特徴、類似した
特徴をもった若者は以前から存在していたのである、と言う回答が得られた。このことから、
タケプロが、ある時点を境に(第一次オイルショック前後?)若者はコンサマトリー的な性質を
持つようになり、それが仕事、人間関係、遊びといった面で若干の差異をもちながら、
フリーター、ニート、草食系男子と言った形で出てきたのであると言う見解をもっている事が明らかになった。
(3)「コンサマトリー」概念の「他の若者の定義」との整合性
タケプロのレジュメでは、「コンサマトリー」概念と他の若者の定義との比較がなされておらず、
本当に三種類の若者が「コンサマトリー」と言う概念でまとめる事ができるのか、
詳細な検討が必要であるという指摘があった。4.結論、課題
今回の議論では各質問に対してゼミ全体で納得できる回答があまり得られなかったといえる。
本当にフリーター・ニートと草食系男子はまとめて若者とし、討論会に向けて扱っていいのか。
「コンサマトリー」概念は各種の若者を確かにまとめる概念と言えるのか、など、更なる検討が求められる。
今回の勉強を経て、もう一度若者論についてより詳細な検討を行ったレジュメを作成することが、
タケダプロダクション、さわやか興業の両チームに求められた。
□■感想■□
〜“なんとなく(イメージ)”を意識化する視点〜
【フリーター(・ニート)定義】
タケプロ:「過去のいいイメージを持ったまま、現状に適応しようとせず、仕事に対して理想を持ち、
仕事と私的(プライベート)なものを分けて考える、決断力の無い若者」
さわやか興業:「15歳〜34歳で学生でなく、未婚者でかつ働いておらず、求職活動も行っていない者」
(厚労省、内閣府見解より)
今回の議論では踏み込む事はできなかったが、両チームの「フリーター」に対する定義を
見比べると、この若者論を扱う事の意義を感じる事ができる。
さわやか興業の定義は、厚労省、内閣府による見解であり、一般的に扱われる際の定義である。
しかし、一方のタケプロが提示した定義を見ると、内閣府の見解とは全く異なるのにも関わらず、
こちらの方が(もちろんより内容を詰める余地はあろうが)ずっとしっくり来るものになっていると感じる。
これはタケプロの定義の方が我々がなんとなく「フリーター」と言う言葉に対して持っている
“イメージ”により近いものだからであろう。
草食系男子のチェックシートを作成した際にも問題となったが、我々が扱うべきなのは、
一般的に定義として使われている、もっと言うと表面的な定義ではなく、
我々が漠然と抱いている“イメージ”の方である。重要なのは、実際に自分たちが
どのような若者が近年増えてきていると感じているかという実感の方なのだ。
この若者論を扱う醍醐味、意義とはこの主観的で漠然とした“イメージ”を言語化し、
議論を重ねて推敲することで、より客観的な納得できる“定義”に昇華することにあるのではないか。
そして、そのような視点とは、日常生活、ひいては自己の精神世界を豊かにする上で重要な要素であり、
そのような視点をゼミ内で多人数によって意識的に、「本気」で学べる事を、嬉しく思う。
これからも意識して、この「若者論」を学んでいきたい。